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第10話 ドリュッヘルに警鐘がなる時に

 カンカンカンカン

 激しく打ち鳴らされる鐘の音が心を急かす。この鐘は時報ではない。

 敵襲。

 邪神の軍勢の襲来だ。


「俺達も行こう。無力な人々を守るんだ!」


「嫌よめんどくさい。虫けらのような奴らの事なんてどうでもいいわ。」


「ライルお兄ちゃんお腹すいた。おやつ食べたい。」


 めっちゃマイペースだなコイツら。

 今も兵士は外に出て街の防衛のための準備をしている。それと並行して役所やコロシアムのスタッフが街の人たちをコロシアムに避難するように呼びかけてるようだ。


「めんどくさいとか言ってる場合じゃないだろ。この街にいる俺達だって無関係じゃいられないんだぞ! それでもめんどくさいなんて言ってられるのかよ!」


「関係あろうがなかろうが面倒なことには変わらないわよ。馬鹿みたいに突っ込んでいくのはクソ勇者の役目よ。私は知らないわ。」


「あーそうですか。魔王様は奥で暇してんのが仕事だったよな。悪かったな。俺1人でも行ってきてやるよ!」


 俺はコロシアムから飛び出して走る。握っているのは相変わらずのヒノキの棒だ。出来たらしっかりした武器が欲しいものだ。

 街の中は逃げる人々で大混乱だ。家財を全部持っていこうとしてる人や諦めて道の端っこに座り込んでるところを説得されている人など酷いものだ。そんな中に見た事がある顔があった。武器屋のおっちゃんだ。リヤカーいっぱいに剣や盾や鎧などの商品を満載にして押している。顔を真っ赤にして押してはいるがあまりにも遅い。


「おっちゃんリヤカーは置いていけよ。間に合わないぞ。」


「あっ!この前のお客さんですか。それは出来ない話ですよ。今は武器防具が必要な時なんです。」


 確かにそうかもしれない。例え武術の心得がなくとも武器があるとなしでは違う。心強いものだ。等しく命の危機なのだから抵抗するすべを配るのは必要なことだ。


「なあ、俺にも武器をくれないか?」


 そう言いつつ俺は1本の刀を取る。鞘に収まったそれは俺にしっくりくる重さを返してくる。


「はい、その刀でしたら金貨3枚になります。」


「金貨3枚か。……って、この緊急時に金をとるのかよ!」


「当たり前でしょうが!私は商人ですよ。商品をタダで配るような慈善家に見えますか?」


 俺の目が曇っていたようだ。商魂たくましい商人しか見えない。


「ヒノキの棒で戦うのは不安があるが仕方ないか。おっちゃんも急がないと商品ごとやられちまうぞ。」


「…………それもそうかもしれませんね。」


 何やら考え出すおっちゃん。一刻も早く逃げないといけないだろうにどうしたのだろうか?


「お客さん、取り引きをしませんか?」


「取り引き? こっちも邪神の軍勢を迎え撃たないといけないんだ。時間はあまりないぞ。」


「私はコロシアムに早く辿り着きたい、お客さんは武器が欲しい。そうですよね?」


「つまり武器をやるから押すのを手伝えって事か?」


「話が早くて助かります。さっきの刀は無理ですけどこちらの片手剣なら渡してもいいですよ。」


 片手剣か。俺の中に使い方は知識としてはあるようだ。おっちゃんが取り引きに提示した片手剣は明かに安物だがそれでもヒノキの棒よりかはいくらかましだ。何よりも折れる心配はしなくても良さそうだ。


「おっちゃん、その話乗ったぜ。そうと決まれば超特急だ!」


 俺は身体の気を起こしていく。生命力の活性化。コロシアムでの戦いではヒノキの棒が折れるかもしれなくて出来なかったことだ。一回振ったら折れましたじゃ笑い話にしかならない。


「行くぞおっちゃん!」


 俺はおっちゃんを置いていきかねないスピードでコロシアムに逆戻りするのだった。

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