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第9話 魔剣士サンドラ

 コロシアムに一陣の風が吹く。


「逃げずによく来たな。それだけは褒めてあげるよ。」


「…………………………」


 耳障りな声が聞こえる。どうやらボンボン貴族のサンドラは威勢を取り戻したようだ。スタンド席は満員御礼で立ち見までいる。それだけ不安だし戦士達に期待しているのだろう。奴はゆったりと型通りに胸の前でレイピアを構える。俺はヒノキの棒を逆手に持って顔の前、高い位置で構える。


 ブァァァン


 開戦の銅鑼が鳴り響く。


「庶民には勿体ないが僕お得意のウィンドスピアで決めてあげるよ。

 風よ我に集いて我が敵を貫け!」


 サンドラのレイピアに周囲から風が集まる。その様は小さな嵐のようでもある。


「ウィンドすびぇ……」


 俺はヒノキの棒をやり投げのように投げてサンドラの喉にヒットさせて魔法の詠唱を強制的に止める。レイピアに集まっていた風は散り散りになった。


「こっからは俺の時間だ。俺の仲間を侮辱した事を後悔するんだな。」


 俺はヒノキの棒を投げると同時にサンドラとの距離を詰める。まずは邪魔なレイピアを右手で軽く払う。そしてそのまま横っ面に左フック、右のアッパー、リバーブロー、頭を取って顔面に膝蹴り、今の感触は鼻を折ったな。手を緩めずリバー、鳩尾、アゴにアッパー、右、左と交互にフック。そして後ろ回し蹴りでフィニッシュだ。

 吹き飛ぶサンドラ。ボロ雑巾のいっちょ上がり。サンドラの整っていたムカつく顔が今では失笑を禁じ得ない愉快なボコボコフェイスに大変身を遂げていた。口の中もズタズタだろうからスープを飲むのも辛いだろう。


「呆気ないな。」


 とんでもない噛ませだ。魔剣士って何だったんだろな? 呼ぶなら噛ま犬ってところだろ。会場が静まり返る。あまりにも一方的な展開だったからだろう。一拍遅れて女性達の悲鳴が聞こえた。あんなんでも女性人気があったようだ。彼女達は遠くからしか見てないからこいつの事をあまり知らないのだろう。


「溜飲は下がったしこんなもんでいいか。」


 気絶している噛ま犬サンドラを残して俺はコロシアムから出るのだった。



 ドリュッヘルの外れの見張り台


「ついに来たのか。なんてことだ。」


 遠くの山に黒い何かが真っ直ぐにドリュッヘルに向かってやって来ている。ペースからして二時間とかからずにドリュッヘルに到着するだろう。


「まだ勇者は決まってないのに。あのクソッタレ共は空気読めよ。まだ来んなよ。」


 見張りの兵士は泣き言を言いつつも自らの仕事を進める。早く済ませないと彼こそが真っ先に襲われてしまう位置にいるからだ。


「これで終わりだ。こんな所にいつまでもいれるか!」


 見張り台から赤い狼煙が上がる。それはエマージェンシーを告げるものだった。

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