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宅配!異世界☆ランチ  作者: ほうとう。
7/15

□日替わり;マタンゴの冷製カペリーニ

ちょっとなんか進展的な?

メニューは日替わりが1種類。一律500円(税込)です。

メイン及びサブが2つが基本形態となっております。

ただし、主食はパン・ごはん・麦飯・十六穀米・より選択可能。

パンについては日替わり。金曜日は炊き込みご飯があり。但し品切れの場合はご容赦ください。

スープかプチデザートの選択ができますがこちらも日替わりとなっておりますのでご了承下さい。

当店の食材・調味料に関しましては一切の遺伝子組み替えをつかってはございません。

アレルギーに関しましては、毎日HPにて16品目の掲載をさせていただいておりますのでご参考ください。

購入方法は現在、ネットでのみの受付となっております。

ご注文後、5分以内にお届けしますので、500円を机の上に置いてお待ち下さい。


※+100円追加料金により、スープ・プチフールの両方の注文が可能になりました。また、大盛りにつきましては検討中です。ご了承ください。

※店の性質上、オードブル・デザートの箱詰め等は対応できませんことを連絡いたします。問い合わせありがとうございました。申し訳ございません。




□日替わり;マタンゴの冷製カペリーニ


「なんつーか、珍しい」

「食堂へといくより楽なのは確かだしな」

弁当組の友人からいわれた言葉に彼は肩をすくめて弁当を広げた。

4時限終了直後注文し、パックドリンクを購入している間に届いた弁当箱。ふれてみると本日のメインのためかひんやりとしている。

普段から弁当持ちの友人が珍しそうに声を上げるのも無理はない。

いつもならさっさと食堂にいくのが彼の通常パターンなのだ。

「おふくろさん弁当は全力でお断りしているっていってなかった?」

「うん?そんなことを話したことがあったか?どのみち、買った奴だよ」

出現方法については聴き及んでいたので、いきなり騒ぎにならないように、辞書の箱カバーの中に500円玉をつっこんでおいたところうまいこと隠れてくれたようだ。

光だの煙だの、起こらないのはありがたいことだ。

「どこで。っつーかずいぶんおもしろい包みだな」

「ふむ。確かにお前には興味深いだろうな。みるか?」

先日、父親とみたものとは違うことがかかれているおそらくは新聞を友人に投げる。空腹を満たす方が先なので彼は弁当にその視線を投げた。

――――マタンゴの冷製カペリーニ。

マタンゴといえばファンタジーにて王道のキノコ型モンスターだ。

多分間違ってない。バジルらしき香りとトマトらしき食材、そしてベーコンの中に混ざるキノコの様子はエリンギが一番イメージに近い。

細目のパスタにそれらはきれいに絡められ、サブにはフライドポテトとなすの多分焼きびたし。ガーリックトーストらしき香りのバケットのスライスが2つ、添えられている。メインが主食なので今日の主食分は一口分と書いてあった。このラインナップでごはん、という人はあまりいないだろうけれど。

「うん、旨そうだ」

添えられているフォークも木製だった。お洒落デリって感じだなと素人ながらの感想を抱く。ボリュームはそれなりにあるのだが。

添えられているのはガスパッチョ。トマト風味の野菜スープ。これも冷たい。

朝登校途中で買ってきたとなれば残念なことになっていそうな一式だがもちろんこの店の場合にそんなことはない。

彼は大いに満足して食べることにした。


ベーコンは厚切りだ。口に入れると濃厚な脂の甘みが口いっぱいに広がる。豚肉かどうかはあやしまないことにしてしっかりとかみしめる。ほかの食材は麺にからみつけ、一気に咀嚼。キノコからはじわりとうまみが広がり、バジルの香りとトマトの酸味を引き立てる。

フライドポテトはあつあつだ。どうやらサブ用のケースは断熱の効果もあるらしい。塩が軽く降られているだけだが、オリーブの他にも香草らしき香りがいくつも絡まってむしろよけいな物を不要としている。フレイバーオイルとは恐れ入る。

なすの方は一方、梅の香りを纏っていた。油分が一切ない分、さっぱりと口の中に出汁と梅の酸味が広がりほうじ茶辺りの宛にしたくなる。失敗した。買ってくるべきは紅茶じゃない、これは和だ。

「おまえなに唸ってるの」

「旨いことを噛みしめている」

「へー」

とかいいながらポテトをとられた。

はっ、とした時には遅い。えぇい窃盗罪だぞ貴様。

「お」

その犯罪者の口から驚きを込めた声があがった。

感動すらそこにはある。無理もないか。旨いまずい二の次に、温かいーーというよりも「熱い」ポテトがそこにはあるのだから。

「どういうことだ?」

驚きながら自分の驚きに説明を求めるように再びその腕をのばそうとする盗人の手をぺちりとたたく。彼にそんな心の広さはない。

「自分の飯を食えばいいだろうに」

「いや食うけど。かわいい妹作の飯もうまいけど!これはさ!別の次元の話だろ!」

文字通りだなーーと彼は内心でうなづいた。行動は自粛する。

っていうかなんだかわいい妹の自作とか。さりげなく自慢か。何人かがむしろそっちでケッ、てなってるぞ。にらんでるぞわかってるのか。

「さっさと食えよ。時間なくなるぞ」

「あ、そうだった。この包み紙ってもらっていいのか?」

「気になるのか?」

「そりゃね」

さもありなん、と今度ははっきりうなづく。

興味深いのは当然だろう。彼も初めて見たときは好奇心にかなり揺られた。父親にさっくり回収されたが。

「じゃぁ妹さんのおかず1個で」

「うご」

「あとさっき食った分の合計2つだな」

「じゃぁ返す」

「遅い」

食べ終わったあとのパスタソースをゆるりとパンにこすりつけながら彼はきっぱりと言葉を返す。あぁパンにまたソースが合うこと!

「あー、美味い」

「どこの店?」

「宅配専門だよ」

「たくはいぃ?学校に頼んだのか」

「あぁ」

嘘ではないのでうなづくと、非常識といわれた。

人のモン勝手に食うよりはずっとまともな筈だが。

「っかし近くなのか?出来立てのあつあつだったぞあのポテト」

「そうだな」

美味かった。さめたポテトは途方に暮れるくらにアレだから。

とはいえアレが真にじゃがいもなのかも実は怪しいーーといったら友人がどんな反応をするやら興味深い。

別に隠す必要もないのだが、得体が知れない店なのは事実だし。

(思えばとーさんもよく息子にあんな得体の知れないものを食わせたよな)

うまかったが。

その父親は先日問い合わせの件で撃沈したそうでわざわざ報告してくれた。日替わり一種類が限界なのだろう。オードブルは無理なのだそうだ。凡に連絡はいつもの包み紙に「日本語」で書かれていたそうだ。女性的な字だったよ、という補足は正直どうでもいい。

「たしか冷製パスタって日本だけしかつくってないんじゃなかったか?」

「あぁ確かに。そもそもでパスタを冷水で締めるとか日本くらいしかやらないって聞いたな。大体長くゆでて水で締めてちょうどいい固さにするとかふつう考えないそうだな」

「ちょうどいい固さ?」

ガスパッチョをゆっくりと噛みしめ飲みながら、奇異な話に首を傾ぐ。

こいつそんなこと知ってるのかという不思議な驚きと一緒に。

「麺て冷たくなると固くなるんだよ。そうめんとかで事前知識があったからの発想だろうな」

「あぁなるほど」

普段料理をしない身には非常に意外で使いどころがいまいち見あたらない豆知識だ。

――――つまり、「知ってる人」がつくっているのは間違いないのか。一概に決めつけるわけにもいかないが。

「てかよく知ってるな、そんな話」

「雑学ってのは無意味であればあるほど輝く」

「プロに失礼だな」

ガキ一人の主張にそんな影響力はないだろうが。

「飯食うのに知識はいらねぇと思ってたけど、アレは気になった。調理方法じゃなくって容器の方かもだけど」

「ただの木製だと思うけど」

ひょいと持ち上げてみせた弁当箱は使い捨てを想定されてるらしく軽い。おいしかった食材はすでになく、もう捨てるばかりだ。

「あ」

「ん?」

「底」

友人の指摘になんのつもりのなく容器をひっくり返す。かこんかこん、サブ用のケースが音を立てて机に落ちたが、彼らはそれを気にすることができなかった。

「おいおい」

今までよくもまぁ気づかなかったものだ。といっても彼は2回目の食事ではあったのだが。

「斬新なデザインだ」

「だな」

魔法陣の刻まれた弁当箱とか、ちょっとばかり愉快すぎる。



初めて異世界っぽいものが出てきたよ!

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