□黒山羊(落とし子の方)の生ハム&サラダピザ
メニューは日替わりが1種類。一律500円(税込)です。
メイン及びサブが2つが基本形態となっております。
ただし、主食はパン・ごはん・麦飯・十六穀米・より選択可能。
パンについては日替わり。金曜日は炊き込みご飯があり。但し品切れの場合はご容赦ください。
スープかプチデザートの選択ができますがこちらも日替わりとなっておりますのでご了承下さい。
当店の食材・調味料に関しましては一切の遺伝子組み替えをつかってはございません。
アレルギーに関しましては、毎日HPにて16品目の掲載をさせていただいておりますのでご参考ください。
購入方法は現在、ネットでのみの受付となっております。
ご注文後、5分以内にお届けしますので、500円を机の上に置いてお待ち下さい。
※+100円追加料金により、スープ・プチフールの両方の注文が可能になりました。また、大盛りにつきましては検討中です。ご了承ください。
※一括注文につきましては個数×500円玉にて対応が可能です。お手数ですがそのような手続きをお願いいたします
会社名物月に1度の部署報告会議。
なんにもない時はあっさり終わるし、議論しなきゃならない時は延々と意見をぶつけ合う会社の最高決議機関。
しかも今回はここ2年ほど経験がない盛り上がりっぷりを見せている。
メインになるのは社長だ。
娘さんを亡くして会社も在宅勤務気味として久しかった筈なのに、一体どんな転び方をしてスイッチ入れたのか各部署に次々と改善案や疑問点をぶっこんできている。
攻めるとか批判とかはない。
ただここをこうしたらどうだろう?とさりげなく提案しているだけだ。
立場が立場なだけに「意見」の重さは他部署の人間がするものと大きく異なるが、それでも一考してあまりあるだけの発想力をみせつける。
なので歓迎する人間こそ多いが、一線引いたくせにと批判する者は少ない。ゼロとはいいがたいが、だいたい批判的な目を投げてくる部署の人間はほかの部署に嫌われている。つまりそういうことだ。
一通りの会議が終わる頃合いに、意外にも社長が昼を奢ると言い出したので面々は驚いた。今まで迷惑をかけた謝罪だという社長に、実質フォローに奔走していた副社長がボウダの涙を流している。
あの人社長に心酔してるからなー
しかしこっちとしてはありがた迷惑。今日の「メニュー」は黒山羊(落とし子の方)の生ハムサラダピザにポテトサラダ。オニオン味グラタンスープ、フォダンショコラもどき。珍しく注意書きに「主食は今回ご用意がありません」と書かれていたのでボリュームは期待できるだろう。けど落とし子って言葉の意味に説明はなかった。お察しください、という奴ですね~といってた部下の一人もあんまりわかってないぽかった。とりあえず山羊でいいのだろう。スイスじゃ食ってたんじゃないだろうか。どっかのアニメのイメージ的に。っていうかその曖昧さ回避する気のないが、その分いつもみたいなファンタジーな単語が一個もないのは珍しいと朝いつものメニューチェックをした際に部署では盛り上がったのだ。つまりはよもどって食いたい。
思えばすっかり、あのデリバリ弁当屋?が部署の結びつきを強くしたような気がする。仕事的な意味はあんまりないが、後輩の研究に良くも悪くも協力する辺りで若干の自主残業が生まれるのだ。ーーいや、残業代請求とかしないよ?部活動みたいなもんだよ?電気代もったいなからはよ帰れって社長に言われたばっかだけど。
その社長が用意したのは木製弁当箱にカップ。よくよく見慣れたものを御身自ら秘書とともに配らせている。
こんなところに変なフラグが転がってたよやったね後輩ちゃん。仲間が増えるよ!
(俺の腹のうちにしまっておこうそうしよう)
あの店に関しては情報が少ない。
というより教えてもらえることが少ない。
部署の末っ子が一生懸命単語解読にいそしんでいるが、文法も憶測状態では碌々しれている。最近では息子の高校生とも連絡を取って研究チームが広がっていると報告を受けている。興味が尽きない素人研究者が増えてくるのも無理はないだろう。
大半は美味けりゃいいやって空気だけどそれでも新しくわかったことや可能性の話は楽しいから「部活動」になるのだ。
勿論、社長のつかんでいる情報がどんなものかも気になるがーー
(社長が発生源なのか感染者なのかもわかんないしな)
いろいろ用語を作っちゃっている時点でいろいろアウトな自覚は彼にはない。念のため。
そんなことより飯である。
大半の人間がある意味庶民的な様子の上にみたことのない包装に戸惑っている様子だったが、社長が率先して食べようとする様子におずおずと手を出し始めている。
山羊肉を食ったことはないがどっかの漫画家がおいしいっていってましたと部下が言っていた。信じておこう。
少し厚めの食パンを半分に切ったような形のピザ生地の上にごっさり生ハムとチーズがじゅくじゅく音を立てている。脇に普段の分よりも多いベビーリーフの山がある。商品からすると乗っけて食え、ということだろう。一枚摘んでみるとさわやかな酸味とわずかなオリーブオイルの香りを感じた。へたっていないのは相変わらずなにかしらの魔法的なスキルなのだろう。熱源がすぐそこにもあるに関わらず、歯ごたえすら強く感じさせる。
添えてあったフォークでサラダを乗せ、折り畳むようにしてみた。クリスピータイプだったらパリパリしすぎて巧くそれもできなかっただろう。
むちっとしたパン、塩気の利いた生ハム、とろりと熱いチーズのあとしゃきりとしたサラダの食感。鼻に抜けるレモンとオリーブオイルの安心感。何層も襲ってくる全く異なる歯ごたえが口の中でふんわりと香りと味を相乗させる。
うっま。正直山羊の生ハムとかよくわかんねぇけどうっま。
隣の席からもおぉ、と感動したような声が聞こえた。どうやら真似をされたらしいーーとまで気づき、アレ?と思う。
自分は「メニュー」を知っていたから、当たり前のように挟んで食べてみたが、ふつうにみたらどう感じるかーーと。
社長はそもそも、どう食べていた?
バッ、と思わず上座をみと地味な色合いながらコク深いスープを啜っている社長は周囲に気を配っている様子はあんまりない。純粋に食事を楽しんでいる。たぶん。
(いや、食べ方なんて人それぞれなもんだし)
熱いものと葉物をあわせることを嫌うひともいて当然だろう。
逆に気にせず、さっぱり食いたいと行動する人間がたまたまいた。その解釈になんらおかしいものは、ない、はずーー
ポテトはこの店定番の、少し荒くつぶしたポテトにオリーブオイルとレモン・塩胡椒の味付けではなかった。単純に味が被るのを嫌ったのだろう。クリーム状にまでつぶされたポテトにはマヨネーズの濃厚さが全体を包み、アクセントしてフライドオニオンと、同様に混ぜ込まれた刻みパセリ。さらりと舌の上でとろける際、かすかな2種類の苦みが味を引き締めて酒がほしくなるのは計算か。
周囲に意識を向けると、奇抜なメニューであったためか反応はマチマチだ。無理もない。かなり商品としてはあっさりを意識しているが、そもそもでピザという単語だけでキツい世代も少なくない。そういう意味ではやはり社長らしからぬ選択であるとは思ってしまうところはあった。日替わりメニュー故、タイミングの問題もあるだろうが。
社長に何の肉かと聞く人間もいた。
山羊って珍しいよねぇと返す様に思わずうなづく。
何人かがなにかを思い出すような顔になった。多分脳内でホルンが鳴り響いている。日本人の大半は山羊=アルプスだろう。
あらかた食べ終わった後と見越して、社長がいった。
――ここのご飯食べて、またがんばろうって思えたんだ。ちょっとおしつけがましくなっちゃってすまなかった。
何人かが少しうつむいた。部下として、ただのなんにも関係ない店が社長にやる気を出させたというのはどこか情けなく感じたのだろう。少なくとも自分はそうだったから、勝手にそうと解釈した。
後輩ちゃんが後輩ちゃんと呼ばれていたフラグの回収←
態々注意書きしたのはクトゥルフの方の黒ヤギさんだからです(こだわり




