4.
絶望に浸るより、活動する生を選んだ私だったが、
出来ることといえば、つばで砂を固めるということぐらいだった。
さらりとした砂をすくい取り、口に含んだ。
そして、吐き出し、砂をまぶす作業を続けた。
まずはじめたのは、どこまで大きくできるか、だ。
手で押さえ込んだら、一部が固まることは解っている。
それが、唾液の量で変わるのか、それとも、手から何かが分泌されているせいなのか。
ぎゅっぎゅと、唾液を含んだ砂を握る。
前と同じように、一部は零れ落ち、一部は塊、大きさを増した。
唾液を含んだ砂の量での変化があるのか、と量を変えて実験もした。
結果解ったのは、唾液を含んだ砂の量は関係ない。
だが、契機となる唾液の砂なしではどんなに握りしめても固まらないということが解った。
砂団子をいくつも作った。
雪だるま方式で、転がしながら、大きさを変えて行った。
二つを一つにもしてみたりもした。
削ってみた、削れ、細かな表現ができるということが解った。
だから私は、まず、居場所をつくることにした。
人らしく、人であるが故に……。
イメージはかまくらだった。
作成した砂玉は、最大のもので30センチを越えた程度だ。
これ元に、どこまで大きくなるか、を実験しつつ、かまくらの元になる素材を作りはじめた。
固まったものは、感覚は石のくせに、重さはない
一メートルを超えるほど大きくなっても、ころころと軽快に転がり続けた。
それが三メートルの大きさに近付いた頃、加工をはじめた。
最初は手でこりこりと削っていたが、時間もかかる。
ならばと、ポケットにいれておいた二つを繋いでできたブロック状の砂玉を取り出しスコップを作った。
作業効率は、格段に上がった。
少しだけ、もっと早くに作れば良かったと、後悔した。
小さめの入り口。
座る人もいないのに対になった椅子とテーブル。
その上には、飲み物もないのに、コップを作り、皿を配置した。
皿の上にはドーナッツを模したものも作った。
壁も少しくりぬき、花瓶に花を飾る。
ランプも埋め込んだ。
ぐるりと見渡し、少しだけ満足した。
だが、閉鎖的な場所は暗く、入り口からだけの光。
その入り口ですら、容赦なく砂が舞い込んで来いた。
扉を作り、蓋をする。
蝶番もないのに、綺麗に開閉する扉は不思議な感じがしたが、役割を果たしてくれているのだから、文句は無かった。
窓を作るにはガラスがない、だが、採光するだけならば、薄く削ればいい話だった
窓っぽく見せるため、二重丸に十字のものを外から削り
外からの見た目も随分と良くなった。
少しばかり、疲労を覚えた。
それが、嬉しかった。
だから、私は、小さな部屋の地下に小さな寝室を作った。
最初に失敗して良かったと、思った。
入り口の扉の穴は、砂の高さにあわせて作成してしまった。
私には重さを感じることのない砂玉は、砂にとっては重いのか、六十センチほど沈んでいた。
だから、地下空間を作る余裕があった。
失敗は成功の母であるんだなぁと、独り頬を緩ませ、にまついた。
そして、私は、そこで横になった。
満足のいく結果に、安心して眠った。
それは、私という存在を残す、最初の作品であったのは間違い無かった。
順調に書き進めると、うれしいものです。
ということで、予約投稿開始です。んー、18時にするか。
それとも、うれしげに、朝投稿とかしちゃうか(ありえない時間なので・笑)
そして、彼女はおうちを手に入れました。
まだまだ彼女の活動は、始まったばかり。