2.
地表から太陽が全て出る頃、私は現状に気付いた。
ありていに言うならば、埋まっていた。
左頬を完全埋め、口の中すら砂にまみれていた。
頭を起こすと、さらさらと音を立てて砂は流れて行く。
不思議なくらい細かい砂であった。
少しずつ、少しずつというように、体を起こし、
埋もれかかった上半身を砂から離すことができた。
はぁ、と深く息を吐くと、口の中にある砂の異物感が増した。
ぺっと吐き出す。
ころりと、砂の上に落ち、それは、線を残しころころと転がって止まった。
おかしい、と思った。
砂を吐き出して、転がるのが、そして、あからさまに大きくなっているのが……。
指でそっとつまむ。
さらりと砂が零れるが、小さな玉状になったそれは、指先に残った。
きゅっと力をいれる、押しつぶされるはずのそれは、私に小さな跡を残して
形状を変えることすら無かった。
石のように固くなった砂。
もう一度、口の中にある砂をぺっと吐き出す。
また、ころりと転がり、止まる。
唾液の量が多いのか今度の固まりは最初の固まりより大きかった。
これもまた、同じように、塊となっていた。
もう一度、口に含むと、異物を感じた口に唾液が満ちる。
だが、石となった砂はそのままのようで舌先に乗っていた。
つまみ出すと、変わった様子はない。
ただ、唾液で濡れつややかではあった。
もう一度、砂に転がす。
同じように道を残し、止まった。
一回りといわず、大きくなった石がある場所の砂を片手で掬い
両手でぎゅうぎゅうぎゅうと押した。
手に収まりきらない砂が、さらさらと流れ落ちる。
手を擦り併せ、意図的に石に砂を塗せてみた。
結果は、大きくなった。
ふと、我に返って、自分は何をしているのかと呆れた。
だが、気になったものは気になったのだ。
石は、たしかな重みと形を私に伝えてきた。
それが嬉しかったのかもしれない。
日がのぼり、視界が広まった現実から目をそらしたかったせいだろうと思う。
なぜならば、一面見渡す限り砂漠であった。
死を覚悟した。
水もない、食糧もない。そんな状況で砂漠で生きられるとは思わない。
じわじわと昇る太陽に、灼かれひからびて死ぬという所まで想像し
その苦しみから目を背けたかったのかもしれない。
結果から言えば、死ぬことは無かった。
現実逃避的な、手遊びが確かな結果を残した。
それは、私という存在を作る、第一歩だったのは間違い無かった。
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