15.砂塵の王国2
「なんだ、問題なかった」
そう、独り言を零してしまうぐらい、がっかりした。
昨日、一昨日とせっせと積み上げた七メートル以上の壁を抜けて、また砂は、風とともに舞い上がり、城内に降り注いで行く。
今までは、作ったものには降り注がなかったのに、今回は範囲が広すぎたのか、そうであれば嬉しいと思っていたからなのかは解らないが、結果として、砂が降り積もっていく。
ならば、ゆっくり街を成長させていこう。
わざわざ、自分で積み上げていく必要はない。水を撒いて、降り積もったものが固まるだけ固めて、それを繰り返せばいいだけの話、となれば、必要なのは、結果だ。
理想の形を、決めないと、また、見たくないようなものが出来上がってしまう。
悩んでいると、じりじりと太陽に焦がされていく。
一時撤退、かまくらに逃げ込む、日陰にはいると、ほっとする。
目を閉じれば、一瞬目眩を起こしたかと錯覚するような、暗さにふ、と意識が遠のきそうになる。程良い疲労感からの、心地よい眠りへの誘い。そんな感覚だろうか。
この街にはそういうのが似合う街なのだろうか。
財を護るための堅牢な城壁。内と外をわけ、密に連なる家。その中の人たちは、強烈な日差しを浴びながら生き、城壁と家の日陰の恩恵に心癒され、深き眠りにつく。
そんな日常を繰り返し行く人たちなのだろうか。
ああ、だめだ、どんどん意識が遠のく。
夢の中、人々がざわめき、砂をかき分け、積み上げているいた。
籠に盛った砂をつり下げ、城壁や家を伸ばして行く。
井戸を掘り下げ、水がでたことに、喜び。乾燥に強い植生が実をつけたのを収穫し、食べている。
そんな中、同じように砂を盛り上げ、家を街を作って行く。
ああ、なんて楽しんだ。人々が笑い、私も笑う。
どんどんと街は密になっていく。路地の上には、布が張られ日陰を作って行く。
これで完成だろう。この街に足りないものはない。
街の人たちと作り上げた城下町。なんとすばらしいんだろうか。
ふふふ、と自分の笑い声で目を覚ます。
すっかり寝入ってしまったようだと、気付いた時には、少しばかり後悔をしたが、夢でみた街を再現するには、この涼しい夜は最適だろうと、かまくらから出た。
高い城壁が私を出迎える。
所々、光が漏れている。憮然として城壁に近付く。
閉じられた門の隙間から見える景色は、夢でみた景色そのものだった。
閉じたままの城壁をするりと、城壁を抜けた。それを驚く間もなく、目の前の光景に目を疑った。
出来上がっていすぎる。砂漠の街なのに、出来たばかりの街なのに、ひび割れたところや、強い植生が壁に蔦を生やしている場所、人々が暮らす生活感が色濃くある街。
愕然とした。世界があまりにも過ぎ去りすぎている。
ふらふらと歩くと、人々が騒ぐ場所に出た。
まだ宵の口らしい。酒を酌み交わし、そして歌う人々に声を掛けた。
いったいこれは、どういう状況かと。
しかし、答えるものはいない。むしろ、私を見る者がいない。
もし、と手を掛ける。そして、悲鳴。うわぁぁぁと、腰を抜かし叫び声を上げた男をはじめ、最初いぶかしんでいた周りが、その恐怖が電波したように、私を知覚し、悲鳴とともに、武器を構えた。
私は逃げた。全てを目に納めることなく、私は、かまくらに逃げ帰り錨を上げた。
風よ、吹け。私を遠い所まで運べ。
その祈りが通じたように、風はふき、私は涙ながら眠りに沈む。
ああ、夢から覚めるのではなかったのか。
いったいどう言うことなのか、と悪夢の中、移動していく。
それが、私という存在が、他者と邂逅したはじめての証であったのは、間違いなかった。
こんにちは、めずらしい時間に完成し、投稿。
やっと書き上がって嬉しいかぎり、毎日書いてても、出せるまでのものは難しい。
でも、やっぱり楽しいけど、今回はちょっと塩辛いです。
それでは、またー




