表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

15.砂塵の王国2


「なんだ、問題なかった」

そう、独り言を零してしまうぐらい、がっかりした。

昨日、一昨日とせっせと積み上げた七メートル以上の壁を抜けて、また砂は、風とともに舞い上がり、城内に降り注いで行く。


今までは、作ったものには降り注がなかったのに、今回は範囲が広すぎたのか、そうであれば嬉しいと思っていたからなのかは解らないが、結果として、砂が降り積もっていく。


ならば、ゆっくり街を成長させていこう。

わざわざ、自分で積み上げていく必要はない。水を撒いて、降り積もったものが固まるだけ固めて、それを繰り返せばいいだけの話、となれば、必要なのは、結果だ。

理想の形を、決めないと、また、見たくないようなものが出来上がってしまう。


悩んでいると、じりじりと太陽に焦がされていく。

一時撤退、かまくらに逃げ込む、日陰にはいると、ほっとする。


目を閉じれば、一瞬目眩を起こしたかと錯覚するような、暗さにふ、と意識が遠のきそうになる。程良い疲労感からの、心地よい眠りへの誘い。そんな感覚だろうか。


この街にはそういうのが似合う街なのだろうか。


財を護るための堅牢な城壁。内と外をわけ、密に連なる家。その中の人たちは、強烈な日差しを浴びながら生き、城壁と家の日陰の恩恵に心癒され、深き眠りにつく。

そんな日常を繰り返し行く人たちなのだろうか。


ああ、だめだ、どんどん意識が遠のく。



夢の中、人々がざわめき、砂をかき分け、積み上げているいた。

籠に盛った砂をつり下げ、城壁や家を伸ばして行く。


井戸を掘り下げ、水がでたことに、喜び。乾燥に強い植生が実をつけたのを収穫し、食べている。


そんな中、同じように砂を盛り上げ、家を街を作って行く。

ああ、なんて楽しんだ。人々が笑い、私も笑う。


どんどんと街は密になっていく。路地の上には、布が張られ日陰を作って行く。


これで完成だろう。この街に足りないものはない。


街の人たちと作り上げた城下町。なんとすばらしいんだろうか。



ふふふ、と自分の笑い声で目を覚ます。

すっかり寝入ってしまったようだと、気付いた時には、少しばかり後悔をしたが、夢でみた街を再現するには、この涼しい夜は最適だろうと、かまくらから出た。


高い城壁が私を出迎える。

所々、光が漏れている。憮然として城壁に近付く。

閉じられた門の隙間から見える景色は、夢でみた景色そのものだった。


閉じたままの城壁をするりと、城壁を抜けた。それを驚く間もなく、目の前の光景に目を疑った。

出来上がっていすぎる。砂漠の街なのに、出来たばかりの街なのに、ひび割れたところや、強い植生が壁に蔦を生やしている場所、人々が暮らす生活感が色濃くある街。


愕然とした。世界があまりにも過ぎ去りすぎている。


ふらふらと歩くと、人々が騒ぐ場所に出た。

まだ宵の口らしい。酒を酌み交わし、そして歌う人々に声を掛けた。


いったいこれは、どういう状況かと。


しかし、答えるものはいない。むしろ、私を見る者がいない。

もし、と手を掛ける。そして、悲鳴。うわぁぁぁと、腰を抜かし叫び声を上げた男をはじめ、最初いぶかしんでいた周りが、その恐怖が電波したように、私を知覚し、悲鳴とともに、武器を構えた。


私は逃げた。全てを目に納めることなく、私は、かまくらに逃げ帰り錨を上げた。


風よ、吹け。私を遠い所まで運べ。


その祈りが通じたように、風はふき、私は涙ながら眠りに沈む。


ああ、夢から覚めるのではなかったのか。

いったいどう言うことなのか、と悪夢の中、移動していく。


それが、私という存在が、他者と邂逅したはじめての証であったのは、間違いなかった。

こんにちは、めずらしい時間に完成し、投稿。

やっと書き上がって嬉しいかぎり、毎日書いてても、出せるまでのものは難しい。

でも、やっぱり楽しいけど、今回はちょっと塩辛いです。

それでは、またー



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ