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現世鳥の三枚者  作者: ひんべぇ
第二章:双子の偶像大使!
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第十九話:双子大使!(3)

続きです、よろしくお願いいたします。

「――さぁ……」


「はぁい……、お前ら稼げ稼げぇ」


 土煙が上がる公園では、一組の男女を中心とした集団が、ステージ前に集まっていた……。


「アレが……、一位……」


 ――一人は、土煙と共に巻き起こった風で、銀色のストレートヘアを靡かせる分厚い眼鏡の少女……。


「まぁ……、『B』でも、十五位未満の『下位A』でも……、流石に、こんだけ人数いりゃ……十分……かもな……?」


 ――もう一人は、黒髪をオールバックにした、細目の、執事服を着た男……。


「ボ、ボゾアさん……、本当にあの娘っ子を連れてくりゃ、一生働かなくてもいいんっスよね?」


「――あれ……、手を出しちゃ、駄目なんか……?」


 男女を取り囲む黒服の集団は、ステージ上の少女――『大使』パルカと、少年――『大使』デルフィニをそれぞれ指差し、執事服の男性――『ボゾア』に興奮気味に尋ねる……。


「まあ、上手くいけばそれでよしってなぁ……? ――まさぐる位は『ブローカー』も許してくれんじゃねぇの? 俺ぁ……、主の借金返済代わりにお手伝いしに来ただけだからよ……、お前らはお前らで好きにやれや……」


 ――ボゾアはそう言って肩を竦めると、細目を薄く開けて、小さな声で「まぁ……、無理だろうがなぁ……」と呟き、ステージ上の者達を見据える……。


「――パルカちゃ…………お嬢様と、お坊ちゃまには……、一切手を出させませんよ?」


「んんっはぁぁぁん……、なぁにかしらぁ……これ? サ・プ・ラ・イ・ズ? あの坊や達……、お持ち帰りしちゃっても良いのかしらぁん?」


 ボゾアの視線に気が付いたのか、『オーシ』から来た二人の秘書官は、『大使』二人を庇う様に前に出ると、黒服達と、ボゾア、眼鏡の少女を睨み付ける……。


 ――すると、その二人を更に庇う様に、スーツにフルフェイスの四人が前に出る……。


「あっらぁん? ――駄目って事ぉ?」


「――違うでしょう……、我々が手を出すと問題がある……と言う事でしょう……」


 女性秘書官の言葉に、フルフェイスの中心らしき人物がコクリと頷くと、四人の内、若干腹の出ている人物は、それに応える様に、秘書官二人と、大使二人にステージ裏に退避する様に手で誘導する……。


「に、逃がすなっ! 金の成る木だ……、俺らのどん底人生……これで終わりにするぞ……」


「「「「おぉぉっ」」」」


 黒服達は、ステージ裏へと引っ込もうとする大使達を指差すと、それぞれが武器を取り出して、ステージへと押し掛ける……。


「――ねぇ……、ボゾアさん……?」


「んん……、何かな、お嬢さん」


 ――そんな中、眼鏡の少女と執事服のボゾアは、その場から動かずに会話を始めている。


 眼鏡の少女は、その眼鏡の奥の瞳こそ見えないものの、ボゾアの執事服の裾をグイグイと引っ張る様子から、好奇心が溢れだしている様に見え、実際――。


「一位……、一位は、キ……わたくしに譲って頂けますよね……、ねっ?」


 ――そう言って、ボゾアに詰め寄り始めていた。


「ん? 何々、お嬢さん……トキワちゃんだっけか? 君はバトり畑の住人さんなの? まぁ、俺ぁ、どっちにしても、戦闘要員じゃねぇし? ――参加するだけで、良いっつうからな、お好きにどうぞ?」


 ボゾアは、そう言って、再び肩を竦めると、少女にウィンクを送る。


「じゃ、じゃあ……、行くよ? 本当に……良いんだよね?」


「ん、お、おぉ……、どう……ぞ?」


 徐々に紅潮し、息を荒げていく少女――トキワに、ボゾアは引き気味に、両手でステージ上のフルフェイスを指し示し、「どうぞどうぞ」と捧げる様に呟く。


 すると――。


「行ってきますっ! ――アサ、ミヤ、展開……!」


 トキワの手からズリュリと、鎖に繋がれた二つの鉄球を取り出し、直後、ステージに向かって飛び出していた……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――一方、ステージ前では……。


「「「「「どけぇっ」」」」


 黒服達と相対する様に、残った三人のフルフェイスの内、男性と女性の二人組が立っていた。


 フルフェイスの男性は、迫り来る黒服達を一瞥すると、右手を自らの横に差し出す。――すると、背後からもう一人、ワンピース姿の女性が現れ、ダンスパートナーの手を取る様に、フルフェイスの男性の手に自らの手を重ねる……。


「――いくッスよ……?」


『はい……、どうぞよろしく』


 ――すると、女性の身体が光に包まれ、徐々に形を変えていく……。


「――『イバラ』……」


 女性の身体が完全に元の形から崩れ、大剣の形に変わると、その大剣を握ったフルフェイスの男性は、大剣を左右に二、三度振り、呟く――。


「「「おぁっ?」」」


 黒服達が気付いた時には、既にその身体は、棘の生えた光るツタに絡め取られており、黒服達は、ステージ手前五メートルと届かずに、その動きを止められてしまう。


 すると、フルフェイスの男性の隣に立っていた、フルフェイスの女性がスッと、その手を黒服達に向ける……。


「――あんまり、おいたしたらあきまへんよ? 『フォーメーション:蕾』」


 フルフェイスの女性が、黒服達に向けた手の平をギュッと握り締めると、黒服達の身体に絡み付く光るツタから、朱い蕾が生えて来る。


 そして、蕾は徐々に大きくなっていき、やがて、開き始め、朱い薔薇の花を咲かせ――。


「「「「「あばばばばばばばばっ」」」」」


 ――バチバチッと言う閃光と共に、黒服達の身体を痺れさせ始めた。


「――ふぅ……」


「お疲れ様ッス」


 そして、黒服達がその場に崩れ落ちると、フルフェイスの男女がパチンッと手を叩き合い、互いの苦労を称え合う……その時――。


「んにゃっはっ、お膳立てありがとねぇ♪」


「「――っ」」


 ――二人の頭上を、銀色の影が通り過ぎ……。


「――一位……、一位っ」


 ――両手に鎖を握り締め、その鎖の先に付いた鉄球を振り回しながら、ステージ上に残った一人、最後のフルフェイスを目がけて、突き進んでいき……。


「――ファイブトリック………………え?」


 フルフェイスの手前、一メートル程の所で、ピタリとその動きを止める。


 そして――。


「え? 何、これ……? 何か、グニャってしてぇぇぇぇぇぇぇ――」


「――『リーマン流:たーまやー』……なんつってな?」


 ――そのまま、ボヨンッと言う音と共に、手を振るフルフェイスに見送られながら、遥か空を目掛けて飛んで行った……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――あらら……、予想外……って事はねぇけど……、早すぎじゃね?」


 ――空を飛んで行くトキワを呆然と見送りながら、ボゾアは呟く。


「おい……、おい、ボゾアさんっ、話が違うじゃねぇか! ――『S』だって、多勢に無勢なら何とかなるっつったじゃねぇか!」


 黒服の生き残り達は、ボゾアの執事服を掴みながら叫ぶが、対するボゾアは面倒臭そうな表情を浮かべながら。


「あん? 俺ぁ……「かもな?」って付けたじゃねぇか……、んな事一々知るかよ……、元から俺ぁ戦闘要員じゃねぇっつったろ? 彼我の戦力差位、『冒険者』なら自分で計れよ」


 そう呟くと――。


「あぁ、もう知らねえ……、俺ぁもう帰るぜ? ――『胞子活動』!」


 その身体を茶色い……煙の様に変えていき、その場から消え去ってしまった。


 ――残された黒服達は……。


「へぇ、捕まえたんやよ?」


「――諦めるッス……」


 既に崩れ落ちた他の黒服達と同様に、フルフェイス達によって絡め取られ――。


「「「ばばばばば――」」」


 ――そのまま、焦げて崩れ落ちた……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「なぁ……イグル?」


『――何ですっ? 今、保存で忙しいですよ!』


 ――イグルの『鷹の目(パラ・サイト)』で現場の様子を見ながら飛んでいたコラキは、自分が到着する前に終わってしまった事件に、どう対応したら良いものかと、その場に制止し、イグルに問い掛ける。


 しかし、イグルは、その現場の動画を何処かに保存しているらしく、コラキの問い掛けには答えてくれなかった。


 ――その時……。


「んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 現場から吹き飛ばされたトキワが、目から涙を溢れさせながら、コラキ目がけて飛んで来た。


「アレは……って、こっち来んのかよっ」


『あ、丁度良いです、本部の人が「キャッチしろぉっ、マジでお願いっ」って言ってるですよ』


 慌てふためくコラキに、イグルは『ファイル名は~』と呟きながら、本部の指示を伝える。


「キャッチって、んなボールじゃあるまいし……って、あ、そうだ! ――『午王宝印(ごおうほういん)』、『ホーミータイト』ロード、実行!」


 コラキはワタワタとしながら、胸部にはめ込まれた赤いレンズに、腰に付けた袋の中から取り出した赤い玉を近付ける。すると、赤いレンズ――『午王宝印』が、機械音声を伴って点滅し始める。


『――モデル・さびしんぼう………………ロード……OK……『ホーミータイト』……エグゼキューション』


 点滅が早くなり、やがてピコンッと言う音が響くと、コラキが両腕を大の字に広げる――。


「うわぁ……、これ、腕広げる所までセットなのかよ……」


 ――コラキがうんざりと言った感じで呟くと、コラキから、トキワに向けてズゾゾゾ……と、吸引力が発生し始める。


 すると、トキワの飛行軌道がググググッと、コラキの腕の中を目指し始め――。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……って、痛ぁっ!」


「ゴッフッ!」


 ――両者がぶつかり合い、その結果……、トキワの身体は、スッポリと、コラキの腕に収まっていた……。


『――モデル・さびしんぼう………………スータビリティ・レイト・ロー………………エンデュランス・リミット………………デストラクション』


 そして、同時にコラキの胸部、『午王宝印』の前に浮かんでいた赤い玉が、静かに砕け散っていく……。


「あちゃあ……、壊れた? ――まあ、良いけどさ……」


「んにゃぁぁ……」


「――取り敢えず、下ろすか……」


 そして、コラキは目を回すトキワを抱えたまま、元居たビルまで引き返した……。

二章は後、三話くらいです。

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