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現世鳥の三枚者  作者: ひんべぇ
第二章:双子の偶像大使!
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第十八話:双子大使!(2)

続きです、よろしくお願いいたします。

 ――『砦市市民総合運動公園』。


 普段は使用者も余りおらず、広大な敷地の管理費が市民税の無駄遣いだと揶揄やゆされるこの公園も、今日ばかりは人で賑わっている……。


「は~い、こっち来ちゃだめなの~……」


「――『風壁』……、はい、こっち通れませんからね?」


「そこのおじいちゃん、おっぱい触っちゃダメなのっ!」


「――『風壁』…………、はい、お巡りさん、こっちです……」


 現在、公園入口と街道をつなぐ細道で、ペリと、タテは交通整理……を兼ねて、不審者や、スリの摘発に勤しんでいた……。


「これぇ……、何時までやるの?」


「う~ん……、終わるまで……ですかね?」


 本日、何件目だか分からない痴漢を捕まえたペリとタテは、「ノーカン」と、タテが作り出した『風の壁』の中で喚く老人……、そして、その他の痴漢、痴女を見渡して、ため息を吐く。


『二人供、愚痴ってないで、キリキリ働くですよ?』


 ――すると、ペリとタテが耳に付けたイヤホンから、イグルの声が響く。


「んぇ~? イグルは、座ってるからそう言えるの……」


『――心外なっ! ウチの『鷹の目(パラ・サイト)』がないと、無駄に広いこの公園で、全ての不審者をピックアップするなんて、出来ないですよ? それとも、ペリ、動き回るですか?』


 イグルは、『鷹の目(パラ・サイト)』の有用性が認められ、現在、対策本部から公園の監視を行い、配置に付いた各『冒険者』に指示を与えている。


 そんなイグルに、「代わる?」と聞かれたペリは、「ううぇ」と舌を出しながら、渋々と謝り、大人しく、交通整理へと戻る……。


「――まぁ……、全域把握は大変でしょうけど……、俺達も……、こう……、何と言うか、だまし討ちしているみたいな気分になるんですよね……」


 タテは、既に十人近くになる逮捕者を見ながら、ため息を吐く。――そして、対策本部のイグルが見ているだろうと、ペリと自分の格好……、やたらと露出の多い警備服を指差す。


『ま、まぁ……、それは…………』


 ――実際は、単に対策本部のお偉いさん方からのリクエスト(遠回しなセクハラ)ではあり、それに痴漢、痴女が引っかかっているだけなのだが、その事実を把握しているイグルは、何とも言えず言葉に詰まってしまい、ピューと口笛を吹く。


「あ、そう言えば、コラキは?」


「そう言えば……、今日は見かけませんね?」


『あ、あ~……、今日は『(八咫烏)』モードで、お出迎えらしいです』


「あぁ……、成程……」


 ――ペリとタテは、イグルの回答に納得し、頷き……、笑い合い……、その視点を一点に集中させる。そこには――。


「あれ……、玲人先輩……なの?」


「――あぁっ? あの……入学早々……、姫をナンパしようとした……?」


 ――何故か、会場スタッフの制服に身を包み、交通整理とゴミ拾いを行っている。コラキの同級生、玲人が居た……。


 タテは額に青筋を浮かべ、ペリは何とも言えない表情を浮かべながら、せっせと働く玲人を見つめる。


 すると、二人の様子を伺っていたイグルから、再び通信が入る――。


『――あぁ……、気付いちゃったです? 何か、玲人先輩、修学旅行で『Aランク七位』を倒しちゃったらしくて……、今回、補充の『Aランク候補』として、参加するらしいです……。これだけで決まる訳じゃないらしいですけど……』


「――ほぁ……、先輩が後輩になるの……?」


「はは……、その前に、俺が荒廃させてあげましょうか?」


 ポカンとするペリとは別に、タテは顔の筋肉を引き攣らせ、腰に付けた横笛に手を伸ばす。


『――っ! だ、ダメですよ? ペリ、タテを抑えるです!』


 と、イグルが慌てて声を掛けると――。


「オイッ! 来たんじゃねえか?」


 ――公園に集まった集団の中から、喜色を込めた叫び声が上がる……。


「「「「おぉ……、何か地面が光ってる!」」」」


 徐々にざわめきは広がっていき、集団の視線は公園の奥に設置された、特設ステージへと注がれる……。


 ――そして、光が徐々に弱まっていき、同時に集団のざわめきも落ち着き始めた頃……。


「――静まれっ!」


 その光の中から……、四つの人影が現れ、声を上げた……。


「ん? とっくに静かなの……」


「――父上……」


 静まり返った中で響く、「静まれ」の声に、思わずタテが赤面し、恥ずかしそうにその場に蹲る。


 ――そんな、ステージ上の四人は、全員が黒のスーツにフルフェイスのヘルメットを被っており、一人が女性であろうと言う事以外……、その素顔が分から無い様になっていた……。


 そして、その紅一点らしき女性は、「静まれ」と言った一人を踏みつけ、グリグリとしながら、マイクを奪い取り、別のフルフェイスにマイクを渡す……。


「ん……、あ、あぁ……、テステス……、はい、皆様、お疲れ様です。――これより、ギルドマスターと一緒に、『オーシ』の秘書官が、その後にお待ちかねの方がいらっしゃいますので、どうかお静かにお待ち下さいね?」


 ――マイクを持ったフルフェイスは、穏やかにそう告げると、マイクを最初の男を踏み付ける女性へと返す……。


「――父上……、姉上……」


「ほぁ……、今の、佐竹さんなの……、メット蒸れそうなの……」


 ――「恥ずかしい」を連呼するタテを他所に、ペリは「大丈夫かな?」と、穏やか声の男性……の頭髪を心配していたが……。


「あ、誰か出て来たの! ――アレは……、校長先生と………………」


 まず現れたのは、ペリも良く知る『冒険者養成学校』の校長――『ウピール』。


 そして、次に現れたのは、ひっつめ髪と眼鏡が、如何にも『出来る秘書』と言った感じの女性であった……。


「ほぁ……、あっちの人……」


 ペリは何となく呟き、色々な事を思い、熱に浮かされた様に、ペコリと頭を下げるその秘書官を見ていたが……。


「――っ! イ、イグルッ!」


『ペリ……、コレは……』


 その次に現れた、灰色の肌を持つ、鋭い目のイブニングドレスを纏う男性秘書官を見た途端、切羽詰まった表情を浮かべる……。


「あっは~ん♪ ――『幻月』の皆様、ご・き・げ・んよぉ……、『オーシ浮遊議会』、第二秘書官……、スッファーノちゃんで~す♪」


「タ……、タテ……、立つの……」


『――は、『伯獣』……? タテ、立つです……』


 ペリとイグルは、揃って緊張し、タテにも警戒を促していたが……。


「――あ、大丈夫です、アレ……、父上も把握してますから……」


「『――え?』」


「――はて? コラキには言っていた筈ですけど……?」


「『えぇっ?』」


 ――そのまま、ポカンと口を開けて、タテの説明を聞く……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「全く……、人騒がせなの……」


『ふぉぉ……、恥かくとこだったです……、コラキィ……』


 ペリとイグルが、そんな感じで、連絡を忘れていたコラキに対する恨みを募らせていると……。


「――来た……」


「あれ……が……?」


 ――ステージ上では、いよいよ今回の目玉が出て来るらしく……。大量のスモークが、ステージ上から溢れだしていた……。


 そして、大量に焚かれるスモークの中心で、パァッと明かりが灯り、その中から、二つの影が現れた……。


「? 何だ……、これ、歌……?」


 ――影が現れると同時……、公園内には子守歌の様な……、静かな歌声が響き始める……。


「ほぁ…………、眠くなるけど……、寝たくないの……」


「――へぇ……」


『ふぉぉ……、ぱ、『鷹の目(パラ・サイト)』……、録音です……』


 ペリ、タテ、イグルは、周りの集団と同様に、思わずと言った感じで、それぞれその歌声に聞き入っていた……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「「皆さん、始めまして……」」


 ――歌が終わると、歌声の主、ステージ上の人影は、ゆっくりとスモークの中から姿を現して来た……。


「――私は、『デルフィニ・オーシ』……、ここより遥か彼方にある国、『海上国家オーシ』より参りました……」


 ――白いスーツに身を包み、青みがかった黒髪をお下げにした少年は、目の下に特徴的なくまがあるものの、その中性的な顔つきによって、公園内のおば様方を早くも虜にしたらしく、腰にぶら下げた剣をカチャカチャと鳴らし、おば様方の嬌声に答える様に、静かに手を振りお辞儀をしていた。


「――…………わたくしは、『パルカ・オーシ』……、……あにとともにまいりました……」


 ――一方、黒いドレスに身を包み、両サイドにヒレの様なクセっ毛と、兄同様に後ろ髪をお下げにした、たれ目の少女は、スカートの裾が気になるのか、もじもじとスカートの裾を摘まみながら、言葉少な目に、ペコリと頭を下げ、フルフェイス集団の内の一人の後ろに隠れる。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――とんでもねぇな……」


 その頃、コラキは自分の出番を待ちながら、公園から少し離れたビルの上で、そう呟いていた……。


『? あの秘書官です?』


「ん? あぁ……、スファーノのおっさんは元々……って、お前……覚えてねぇのか? ――まあ良いや、俺がとんでもねぇっつうのは――」


 コラキが何かを言い掛けたその時だった……。


「――キャァァァァッ!」


 ――突如、公園内に叫び声が響き渡り、同時に……。


「――爆発ッ? イグル……!」


『はい……、誘導するですっ!』


 大きな土煙が、公園内に立ち上った。

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