表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現世鳥の三枚者  作者: ひんべぇ
第二章:双子の偶像大使!
50/102

第十七話:双子大使!(1)

続きです、よろしくお願いいたします。

 ――『冒険者養成学校』の修学旅行が終わり、週末を挟んで空けて月曜日……。


『砦が丘』の上に存在する校舎から、昼を告げる鐘の音が鳴り響き、『冒険者養成学校』の生徒達は皆、思い思いに弁当を広げたり、食堂に走ったりと、その腹を満たす為にさまよい始める――。


 それ自体は、『冒険者養成学校』の昼食風景として、いつも通りであるのだが、今日は……、少しだけいつもと違う雰囲気が校舎内に漂っていた……。


 ――『異世界からの大使』……。その訪問がいよいよ今週末に迫り、生徒達の話題はそれがメインとなっており、当然……、コラキのクラス『三年S組』でも、その話題で持ち切りであった……。


「――ねぇ? どんな人なんだろねっ? コラキちゃん……」


「ん~……? さぁなぁ……?」


 雛子は、今朝方購入した週刊誌の特集ページを開いて、コラキに見せつけながら、「楽しみだね」と、コラキの髪に小さなリボンを取り付けている最中である。


 コラキは、そんな雛子にされるがままになりながら、パックの牛乳をストローを使わずに、開いて飲みながら、その週刊誌の、「大使は双子?」と書かれた見出しをチラリと見て、教室を見渡す。


「――にしても……、少ねぇな……」


「あ~……、結構、大怪我した人多かったらしいよ……」


 現在、コラキのクラスを始めとして、『冒険者養成学校』の三年生には、教師、生徒共に欠席が多い。


 ――と言うのも……。


「――そりゃ……、あんなんに襲われたら……なぁ?」


『そう……ですね……』


 先週実施された『修学旅行』で、『Aランク七位』と、『分厚い眼鏡』の『冒険者』達に襲撃された結果、かなりの教師、生徒が病院送りになってしまった為である。


 ――幸いにして、『首謀者である』とされる元『Aランク七位:ダグ・ドルド』は逮捕されたのだが、かと言って怪我人がすぐ動けると言う訳も無く、三年生の教室がある階は少しばかり寂しい雰囲気となっている。


 そんな状態ではあるが、辛うじて『学級閉鎖』等にならず、動ける生徒達は登校し、「次こそは」と、『Aランク』レベルの襲撃者に出会った事で、寧ろ奮起している。


 ――そして、三年生達の大きな意識改革とは別に、小さな範囲で、一つの意識改革が起こっていた……。


『あ、玲人君、これ、私とひっこちゃんで作ったプリンですけど……、どうですか?』


「お、おっふ……、い、頂き……ます……」


「ああああああああああああああ~ん……」


 白いコタツから、白い手がニュゥッと伸びて来て、スプーンで掬ったプリンを、玲人の口に運んで行く……。


「――なぁ……、何があったんだ……?」


 玲人とこたつ(レイ)……、眼前の二人から放たれるぎこちないオーラに、コラキはたまらず椅子をガタガタッと引き、髪をモシャる雛子を見上げ、尋ねる。


「ん……、おやおや、コラキちゃん……、親友のリア化にお焦りかなぁ?」


「い、いや……、そんなんじゃねぇけど……」


「ん~、何か……、前から『コタツ姿しか見てないのに、好意を持ってくれてる』って、気にはなってたみたいなんだけどね? この間の『頑張り』が、何だかどストライクだったみたい」


 雛子は「梧桐君、頑張ってたもんね?」と付け加えると、初々しい二人に生温かい視線を送る――。


「ん……、そ、そう言うひっこはどうなんだ? ――やっぱ、あん時の玲人に……」


「ん? 何々? コラキちゃん、イイとこ持ってかれて拗ねてる? ――ふふ……、大丈夫だよぉ? 私、コラキちゃんが、玲人君を守ってくれたのも、私を守ろうと何か投げてくれたのも……ちゃあんと、知ってるからね?」


「――っ! お、おぅ……」


 ――そんな、何とも言えない空気の中、二対二での昼食は進んでいく……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――一方、二年生の教室がある階でも、当然、話題は似た様なモノで……。


「はい、あ~ん……」


「――あんっ!」


 二年生の教室が並ぶ、『冒険者養成学校』の校舎二階にある『二年B組』の教室では、ペリがその口をあんぐりと開けて、ひな鳥の様に食材が口に運ばれるのを待っていた……。


「んっふっふ……、今日も良い食べっぷりだよね? ――あぁ……、私、ペリちゃんとの子供なら、今生んでも良いっ!」


「――? 智咲……、女の子同士じゃ子供は作れないの、私でも知ってるのっ!」


「大丈夫……、大丈夫だからっ! ――私、絶対、その『スキル』を発現して見せる!」


 ペリの同級生であり、女子水泳部部長であり、ペリの親友である智咲は、ペリ用にと作って来た弁当を、ペリの口に運びながら、ハァハァとシャッターを切っていた。


「ん~? よく分から無いけど、応援するの!」


「――っ! してっ! 応援してしてっ!」


 ――『二年B組』の昼休み恒例行事となってしまった、『智咲アタックタイム』を、周囲のクラスメイト達は、「触らぬ神に祟りなし」と、ツッコミたい気持ちを抑えて箸を進める。


「――それにしても、『異世界の大使』かぁ……、どんな人なんだろうねぇ?」


「ん~……、私は会った事無いけど、雑誌とかに情報が出てると思うの!」


 智咲が何気なく呟くと、ペリはそう言って、ぐちゃぐちゃになった週刊誌を取り出す。


「んもぉ、ペリちゃんったら……、今回が『初来日』……いや、『初来地』なんだから、そりゃ会った事無いよ……」


「ほぁっ! そ、そうだったの……、えっと、そ、そうなの、智咲、何て書いてあるか読んで欲しいの!」


 ――ペリはその額からダラダラと汗を流しながら、取り出した週刊誌を智咲にグイグイと押し付け、「読んで」とせがむ……。


「ん? んもぉ、ペリちゃんは甘えん坊だねぇ……、じゃあ、読むよ? ――えっと……」


 そして、智咲は声を上げて、週刊誌の記事を読み始める――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――歳は十五歳、小さい頃から『国の子』として育てられた為、国内での人気は絶大……?」


 ――一方、一年生の教室がある校舎一階、その中の一室『一年S組』では、ペリが持っていた物と同様の週刊誌を、イグルの同級生であるピトが読み上げていた……。


「ふふぇ? ――同い年です……?」


 イグルは、ピトから入手した情報に、ポカンと口を開けて驚いていた。


「うん……、懐かしいなぁ……」


「あれ? 羽衣は知ってるです?」


 箸を口に咥えながらしみじみと呟く羽衣に、イグルが尋ねると、羽衣は「うん」と答え、口を開く。


「――アソコ(オーシ)も回ったからねぇ……」


「よく、姫と父上の頭上を争ってましたね……」


「むむ……、それは……、ライバルの予感がするです……」


「ピュ……、流石に十年近く経ってたら、あんなおっさん………………ねぇ?」


 羽衣とタテがしみじみとしながら、箸を進める中、イグルとピトは、若干、頬を引き攣らせながら、「「ねぇ?」」と、言い合う。


 そして、互いの事情を良く知っているイグル、羽衣、タテ、ピトは、イグルが今週の来訪時に『周辺警護』を担当すると聞き、羨ましがりつつ、話に花を咲かせる――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――そして、その頃……。


「――旦那さん? 準備はよろしおすか?」


「おう、急に召喚(呼び出)して悪かったな? んで、俺はオッケー……だけど……」


 日本から遠く、遠く離れた土地では、雪景色の中にポツンと建つ城の中で、緋色の女性と、スーツ姿の男性が、見つめ合っており、その足元には、黄色と黒色……二色で構成された『大極図』が浮かび上がっている。


 そして、そんな男女の元に、新たに四つの人影が現れ――。


「……キュイ……」


「……行ける……」


「うふ……アタシは、オゥルウェイィィズ! イケるわよぉん?」


「はぁ……はぁ……、二人供、決まっていますよっ! ――はい、こっちっ! 目線っ、目線頂戴!」


「――んじゃ、行くかっ! ――『浪漫飛行(ビジネス・トリップ)』!」


 ――その直後、光が六人を包み込んだ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ