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現世鳥の三枚者  作者: ひんべぇ
プロローグ:学費を稼げ!
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第一話:私の猫を探して!(1)

世界観引継ぎです。なるべく、前作無しでも読める様に気を付けて参りますが、もし、分かり辛ければ、随時改稿していきます。

因みに、タイトルの読みは『うつしよどりのさんきょうだい』となります。

……タイトルにルビ振れないのに、さっき気付きましたorz

※『三枚者』=『三人組』です。

 ――『リーマン・クライシス』。


 二つの世界が密かに迎えた滅亡の危機を、一人のサラリーマンと、その仲間達が未然に防いだとされる、その事件から、約十年……。


 世界は、徐々に、徐々にと、変化を続けていた。


 ――『五柱』、『ビースト・ピラーズ』と呼ばれる、地球と、もう一つの世界とを貫き、繋げる五本の光の柱。


 ――『魔素』、『スキルソース』と呼ばれる新元素。


 ――『魔獣化』と呼ばれる、動植物に訪れる変化による、『超自然災害』の発生。


 ――『異界化迷宮』と呼ばれる、世界十八か所に現れた『魔獣』や、不可思議現象満載の秘境。


 ――『ジョブ』と言う十五歳以上の者が持つ様になる個体特性と、『スキル』と言う異能を持つモノ達の出現。


 地球に訪れた、それらの転機は、地球に生きるモノ達に、大きな災厄と恩恵を齎した。


 その災厄と恩恵をいち早く察知した日本政府と、とある企業は、その変化に対応する様に、『魔獣』、『異界化迷宮』対策のプロである『冒険者』制度の採用及び、『冒険者ギルド』、『冒険者養成学校』の設立等の対策を実施する事で、国民を、世界を安心させる事に成功した。


 そして、『リーマン・コネクト』と呼ばれる、サラリーマンの帰還と、異世界間交流の本格的な開始から約半年……、世界は更なる変化を迎えようとしていた……。


 そんな変化の中、とある企業――『ファルマ・コピオス』が、対策案の一つとして、『リーマン・クライシス』時に企画した『商店街計画』によって開発され、今となっては寂れかけた通称――『幻想商店街』、その一画に建つビルの二階テナントでは、細々と……、探偵業(ほぼ何でも屋状態)を営む、三人の兄妹達が居た……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――はいっ、しゅーごーっ!」


 壊れかけたエアコンが、ゴガガガと、湿った生ぬるい空気を送り続ける中、右の前髪を少し長めに垂らした、ツリ目がちな、褐色肌の少年が、自信が座る焦げ茶色のオフィスデスクから見て前方左右に設置された、えんじ色のソファにだらりと寝そべる二人の少女目がけて、手をパンパンと叩きながら、声を掛けている。


「う? 何なの?」


 白い髪をふわふわのショートボブにカットし、髪とお揃いの色合いをしたノースリーブのサマーセーターに、バブルスカートを履いた、たれ目の少女が、その細身の腰と低めの身長に反比例するかの如く大きな胸を、ソファの肘掛けに乗せながら、ゴロゴロと少年を見上げている。


「――暑いから、今、暑いから、後にして欲しいです……」


 そして、たれ目少女の向かいのソファにうつ伏せに寝そべる、灰色のチューブトップに、デニム生地のホットパンツを履いた、長身スレンダー(笑)な三白眼の少女が、後頭部の茶色い尻尾(ポニーテール)を揺らし、アイスを舐めながら、少年を見ずに、自慢の足をパタパタさせている。


 褐色肌の少年は、そんな二人の少女のだらしなさに、大きなため息を一つ吐くと、意を決して、二人に告げる――。


「残高、三万円……」


 その呟きに、たれ目少女と、三白眼少女の動きが、ピタリと止まる。


 そして、たれ目少女は、目をパチパチと瞬かせながら、少年を見上げ、尋ねる――。


「今日って……、えいぷりるふぅる……なの?」


 少年は、首を横に振り、ソレを否定する。


「――残念だけど……、本当だ。昨日……、大家さん(魔女)に……、持ってかれた……」


「えっ! な、何でです……?」


「――曰く……、「家賃、五月、六月、七月……、振り込まれてなかったですよ? ――幾ら、温厚なボクでも、やる時はやりますよー?」……だそうだ……。ついでに、今月、来月分も持っていかれた……」


 ――その瞬間、褐色肌の少年と、三白眼少女の視線が、たれ目少女の胸――でなく、顔に注がれる……。


 たれ目少女は、暫くの間、寝ぼけているかの様に、ボーっとしていたが、やがて「ハッ」とした表情を浮かべ……。


「えへへ……、忘れてたの」


 気まずそうに、そう告げた。


「なんっだよぉっ、もぉっ! ――道理で、ここ最近、お金があるなぁって思ったよっ! 仕事着、新調しちゃったよっ!」


 机をバンバンと叩きながら、少年は瞳を潤ませて、壁に掛かった漆黒のスーツを指差す。


「――お金があるからって……、すぐ使う方にも問題あるですっ!」


 駄々を捏ねる少年の頭を、三白眼の少女が叩く。


 そして、三白眼の少女は、少年ともう一人の少女を、一睨みし、ため息を吐くと、心底残念そうに――。


「だから……、お金の管理とかはウチがやりたかったんです……」


「えへへ……、私のジャンケン力は、五十三万なのっ!」


「――誰だよ……、役割分担はジャンケンなんて言いだしたの……」


 すると、二人の少女は、声と動作をピッタリと合わせ、少年を睨み付けると――。


「「お前だっ!」」


 と、その頭を叩いた……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――ともかく……だ、家賃に関しては、今月どころか、来月分まで持っていかれたから問題は……無い。問題があるとすれば……」


 ――ゴクリと……、三白眼の少女が息を呑み、少年に尋ねる。


「学費……です?」


「――ああ……」


 そう答えた少年が、机の上にスッと差し出したのは、『xx年度 後期学費について』と、書かれた一枚の紙。


 ――『冒険者養成学校』……、入試倍率最低二十倍とされる、その学校の卒業者には特典が存在する。


 それは、『異界化迷宮』への入場無料権であったり、『冒険者ギルド』のランク(FからSまである)が最高二ランク上昇、もしくは、Cランクからスタートであったり、税金の減免であったり、大企業への優先的紹介であったりと、様々である。


 しかし、当然ながら、卒業するための試練は、入試に合格しただけで終わる訳ではない。


 それは、通常の高校と同様の定期考査であったり、『魔獣』討伐を含めた実習であったり、在学中に『冒険者ギルド』仮免許以上を取得する事であったりと、これまた様々なモノの総合評価である。


 そして、そんな障害の一つに……、学費が挙げられる。


 ――その額、年間およそ百万円……。私立高校と同程度の学費であり、学資保険や、その他の援助を受けられれば、一般家庭でも、やり繰り次第では、払えない額では無い……が。


 この『冒険者養成学校』では、進級の条件の一つに『学費は自力で払う事』と言うものがある。それは、つまり――。


「――後期の学費支払期限……、つまり、九月の中旬までに、三人分の学費、三百万を稼がなきゃ……いけないって、事です?」


「そう言う事」


 三白眼の少女が、頬の筋肉をピクピクと引き攣らせながら、少年を見つめる――と言うよりは、睨み付ける。


「えっと……、無理っ! ――なの……」


 そして、たれ目少女は、事務所の窓から見える商店街の風景を、悲しげに見つめながら、呟く……。


 しかし、褐色肌の少年は、不敵に――いや、やけっぱちな表情を浮かべながら、二人の少女に告げる。


「ふ……、ふふふ……、こうなったら……、やるぞ……、やってやるっ!」


「? 強盗です?」


「それとも、『迷宮』に侵入して、『魔獣』狩り?」


 二人の少女から、次々に飛び出す違法行為の提案に、褐色肌の少年は、ドン引きしつつも、首を横に振り、否定し、二人の少女に、とある衣装と紙の束を手渡す。


「ん? 何です?」


「これ……、水着なの?」


 少女達が広げ、身体に当てた衣装は、世間一般で言う所の、『バニーガール』であった。


 少年は、目頭を押さえ、悔しそうに――。


「同じ数えられ方でも、奴ら()の方が、需要あるんだってよ……。――腑に落ちねぇ……、落ちねぇけど……、俺はっ、おやっさんを信じてっ、コレに賭けるっ! 行くぞっ! ――営業活動開始だっ――ブゲェッ!」


 ――叫ぼうとした所で、二人の少女からの蹴りと、(アッパー)を喰らい、そのまま、後頭部から地面に激突する。


 そして、少女達は――。


「はいはい、ちゃっちゃとビラ配るです」


「お客ゲットするのっ!」


 ――少年を放置し、そのまま事務所を後にした。


「――チッ……、失敗したか……、手っ取り早く写真売って稼ごうと思ったのになぁ……」


 少年は、「何でバレたんだろ?」と、頭を捻りながら一人、事務所の掃除を始めるのであった――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 暫くの間、黙々と掃除を続けていると、事務所の扉をコンコンと叩く音が聞こえ、少年は音の発生源を辿ってみる。


 すると、そこには――。


「あ、あの……すいません、ここ、何でも屋さんって、聞いて来たんですけどぉ……」


 身長百五十センチ程、黒髪ロングの清楚な感じの女性が、立っていた。


 少年は、「あぁ、またか……」と呟き、その女性をソファに座る様に促し、自分も対面のソファに座ると、苦笑いしながら、口を開く。


「えっと、ようこそ……と、言いたいんですが、うち、『何でも屋』じゃなくて、これでも『探偵事務所』なんですよ……」


 乾いた笑いを浮かべる少年に、女性は「す、すいません」と何度も頭を下げると、小さく「それなら」と呟き……。


「――探して欲しいんですっ!」


 と、涙を浮かべながら叫んだ。


 すると、少年の目が、徐々に、ギラついた、真剣なモノに変わる。


「成程……、人探しですか? 宝探しですか? 場所探しですか? ――何でも探しますよ?」


 女性の顔がパァッと明るいモノになっていき、いそいそと、その手に持った鞄の中から、一枚の写真を取り出した。


 そこに写っているのは、一匹の……、黒い子猫――。


 女性は、スッと写真を差し出したまま、少年に向かって懇願する――。


「――私の飼い猫です……」


 ――内心、「猫かぁ……」と思いながら、少年は写真と女性を見比べる。


 女性の表情は、悲痛で、この猫をどれだけ大切に思っているのかが、伺える……。


 どうするべきかと、迷っていると――。


「良いと思うです……。ウチ、やるです」


「私もっ! 猫、撫でたいの!」


 ビラを配り終えたのか、二人の少女が事務所の入り口から、ピンっと手を上げて、賛成している。


 少年は、暫くの間、少女達と、女性の顔を見比べていたが、やがて――。


「――オッケー、やりましょう」


 ――そう答えた。


「うっしゃ……です!」


「ヤル気満々なのっ」


 少年の了承を確認し、たれ目少女と、三白眼少女は、上機嫌で、褐色肌の少年の両サイドに腰かける。


「こちら、当事務所との契約書になります。――ご確認を……、あ、それと……」


 少年は女性に依頼を受ける事を告げると、思い出した様に立ち上がり、机の上に置いてあった、三人分の名刺を、女性に差し出し、告げる――。


「遅ればせながら、俺――いや、私、『天鳥(たかとり)探偵事務所』所長の『天鳥(たかとり)コラキ』と申します」


「――ちょ、調査員の『天鳥(たかとり)ペリ』なの」


「事務の『天鳥(たかとり)イグル』です」


 少年少女は、キョトンとする女性に向けて、歳相応の笑顔を向け――。


「「「ご依頼、ありがとうございますっ!」」」


 ――久々の依頼人(金づる)を歓迎し、頭を下げるのであった……。


 ――――『私の猫を探して!』Start――――

新連載です。取り敢えずよろしくお願いいたします。

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