過去編 3
春期講習のクラスへと向かった私と美有は、途中で先生に引き止められた。
「佐藤さんと藤伊さん、はいこれ。」
「げ、テスト?」
「藤伊さん。あなた女の子なんだから綺麗な言葉を使いなさい。」
「無理です。」
「何でそんなにキッパリと・・・」
と、突っ込んだ私はツボにハマって大爆笑した。
ちなみに、《藤伊》というのは美有の苗字。
《伊藤》じゃなくて《藤伊》なんだって、初めて会った時に笑ったら、思いっきり叩かれた。
「げ、私点数ヤベ。美有は?」
「・・・」
反応無しってことはヤバいんだなって確信した。
そんな私達は、席についた。
まだミク・・・じゃなくて、淕って言う人は来てなかった。
残念だったのか、それともこれで良かったのかといった複雑な心境にいた。
淕という人が来るまで、美有と話しながら期待して待っていた。
美有が他の子に呼ばれた。
ごめん、と一言残して美有を呼んだ子の元へと駆けていった。
美有、友達多いんだよな・・・・。
美有は誰にでも笑顔を見せる。
美有は誰にでも優しくする。
そんな美有の周りにはいつでも友達がたくさんいた。
それが私はとてもうらやましかった。
美有みたいに綺麗な笑顔を見せることができなかったから。
初対面の人なんて、笑顔どころじゃない。
顔が強ばって、にらんでる風に見えるらしい。
そう、周りの子に言われる。
こそこそ言ってるみたいだけど聞こえてるっつの。
別ににらんでるわけじゃない。
ただ人との付き合いが苦手なだけだ。
いつの間にかしかめっ面をしていた。
またやっちまった、と考えていると、美有じゃない隣から、ガタガタッと椅子を引く音が聞こえた。
まさかと思い、恐る恐る隣を見ると
予想通りだった。
そこには淕がいた。
相手も私のことを見ていたらしい。
目が合ってしまった。
「・・・ぁ、お前。どっかで会ったことある。」
・・・え?
まさか私・・・いや、私しかいないよな・・・・。
え、ちょ・・・こ、こういう時どうすればいいんだ!?
「・・・っぷ・・!!はっ・・・あははははっ!!!」
「ぁえっ!?」
「何その声っ!まじウケる!!はははがっ・・・!!ゲホッ、ゲホッ・・・」
「・・・っく・・・あははっ」
「っつ・・・・はははっ」
―――――――
そう。
これが淕との出会い。
初めて、初対面の人に心から笑えた。
美有は呆気にとられてたな・・・
でも
まさか、淕が私の生き方を変えてくれるとは思ってもいなかった。