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過去編 1


「きりーつ、」


ため息をつきながら立つ。


「きおつけー」


背筋を丸める。


「れーい」


大声で



『ありがとーございました!』



「あー、やっと終わった!」


私はゆっくり背伸びをし、帰るために机の横の塾用鞄へと手を伸ばした。



すると誰からか前の方から澪、と声をかけられた。



「今日の帰りって車?それとも電車?」



「あ、綾女かぁー」



目の前にいるのは私の塾友達の上川 綾女。唯一の塾での女友達でもある。すごく頭が良くて、スポーツ万能、優秀な子。



「何よその残念そうな顔。悪かったわね、私で。」



だけど毒舌。一つ一つの言葉がキツい・・・。

そんな綾女だけど、内心は優しいし、こんなバカな私でも一緒にいてくれるから好きだ。

いや、もちろん恋愛とかそっち系じゃなくて友達として。



「悪いとは言ってないじゃんかぁー・・・。そういえば帰りだっけ?もち車だよー」


ふにゃっと私が笑うと綾女は軽くため息をつき途中まで一緒に帰ろう、と残して自分の席へと戻った。

その後、私は鞄の中に教科書とノート、プリントなどをぐしゃぐしゃに突っ込み、黒のコートをはおり、灰色のマフラーを首に巻いて綾女の元へと駆け寄った。


私達は雑談をしながら一階へと階段を降りていった。


ちょうど二階のホームにさしかかった時、


ドンっ



「うわっ!?」


「痛っ!?」



あー・・・やばい。

またいつものクセで男口調になってしまった、と思いながらぶつかった相手が誰だか見た。




「いたたた・・・」


あれ、何か見たことあるぞこの天パ。




「ったく、よそ見してんじゃねぇよデブ。」



あれ、何かめちゃくちゃ聞いたことあるぞこの言い様。


まさかとは思いたくないが・・・・まさかのまさか・・・


「・・・ミク・・・・」


「死ね。何度も言わせんな!!俺は淕だ!!!ちゃんと信条 淕って名前あんだよ!!!」




最悪。

何で今会うんだよ。

信条 淕、一番会いたくない時限ってに現れやがって。

さっき喧嘩したの覚えてないのか?

あー・・・本っ当最悪。




「ちょっと、澪。大丈夫?」


「んぇ?あー・・・何とか。ごめんごめん。ぼーっとしてた。」


「なら良いけど。ほら、帰るよ。もう7時だ。」


「え、まじで!?あの特集始まってんじゃん!早く帰「ちょっと待て!お前、俺転ばせといて謝りもしないで帰んのかよ!」


「・・・無駄な遠吠えを。大体、ぶつかって来たのはお前だろ?校内走るなよ。だからお前が謝れ。」



あーあ・・・これ以上、素の自分出したくなかったのに。

畜生。

お前のせいで「可愛いワンコ特集☆〜これであなたの心は癒される♪編〜」が見れねぇじゃねえか。



「避けなかったお前が悪い!つか、走ったのは仕方ないだろー。急いでたんだから。」


「何、彼女とのデート?」


「ちげぇよバカ!病院だよ病院!!」




病院?


え、何でよ・・・



《病院》、という言葉を聞いた私は声が出なかった。


だって、



これ以上大切な人を失いたくない。




実は、私。




今目の前にいる男、



信条 淕に片想い中。




だって、ありのままの自分を出せる。

ちゃんと私の話に耳を傾けてくれる。

コイツの前では素直に笑える。


コイツと一緒にいると心地好い。


そう感じた時にはいつの間にか恋愛感情があった。




-----------------



あの頃の私は、


これからどんな悲しい時を過ごすかも分からずに笑って過ごしてた。



どこにでもいるような、1人の女の子だったね。




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