表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ:光の導きと果てなき戦場

数ある作品の中から本作を見つけていただき、ありがとうございます。


ただのFPSゲーマーだった青年は、いかにして最強の戦士となり、そして世界を敵に回す『反逆者』となったのか。

圧倒的なSF兵器で絶望を打ち砕くダークアクション戦記、ここに開幕します。


少しでも皆様の心に刺さるものがあれば幸いです。

それでは、本編をどうぞ。

 愛機の冷却ファンが微かに唸る、1Kの薄暗い部屋。

 地元・熊本を離れ、福岡のIT系専門学校に通う19歳、江島大我えじま・たいがの日常は、どこまでも平坦で退屈なものだった。

 今日も中身のない授業とアルバイトをこなし、ようやく手に入れた自分の時間。

 冷蔵庫から取り出した冷たいエナジードリンクを喉に流し込み、定位置であるゲーミングチェアへと深く腰を沈める。使い込まれたマウスを握り込んだ瞬間、大我の目つきが、退屈そうな学生のものから「捕食者」のそれへと鋭く変貌した。

 『江島大我』という本名を知る者は少ない。だが、画面の向こう側の世界で彼のアカウント名を知らない者はモグリだ。

 『TIGER』――グローバルランキング3位。アジア圏においては「彼の右に出る者はいない」と畏怖される、圧倒的な反射神経と戦術眼を持つ天才FPSプレイヤー。それが彼の真の姿だった。

「よし……今日こそ世界1位の首を狩りに行くか」

 ヘッドセットに手を伸ばした、その瞬間だった。

 カチリ、と世界がバグったような音が鳴り――視界が、脳髄まで焼き尽くすような白光に飲み込まれた。

「……っ!?」

 眩暈とともに目を開けた大我の網膜に映ったのは、見慣れたモニターでも、飲みかけの缶でもなかった。

 冷たく無機質な、金属質の壁に囲まれた空間。そして、奇妙な意匠の純白の服を纏った、ひとりの金髪の少女だった。

「やっと……やっと見つけました」

 ルミティア・ミラステアと名乗ったその少女は、とある星の王女だと言った。

 インベーダーと呼ばれる外宇宙からの侵略者と戦ってほしい。貴方にしか果たせない使命があるのだと、彼女は真っ直ぐに大我を見つめていた。

 だが、大我の視線は、彼女の可憐な顔立ちよりも先に「そこ」へと縫い付けられた。

 彼女の左目。額から頬にかけて斜めに走る、凄惨な切り傷の痕。そして、本来の色を失い、光を反射することすら忘れてしまったかのような「真っ白に濁った瞳」。

 透き通るような青空を思わせる右目との対比が、あまりにも痛々しかった。

 訳も分からぬまま彼女の宇宙船に乗せられ、故郷の星へ向かうことになった大我。

 体感で5日ほどの航行の間、ルミティアは彼に惑星ミラステアの悲惨な現状と、彼を地球から喚び出した理由を語った。彼が、無尽蔵に湧き出すインベーダーのことわりに唯一干渉できる、『特異点因子シンギュラリティ・コード』を持った唯一の『適合者』なのだと。

(俺は、ただの学生だ。実戦の経験なんてあるはずがない)

 大我は内心で固く決めていた。

(ゲームじゃあるまいし、戦争なんてごめんだ。王様に会ったら、事情を話して丁重に断り、地球に帰してもらおう)

 やがて大気圏に突入し、窓の外を見下ろした大我は息を呑んだ。

 遥か宇宙の衛星軌道から地表に向けて、神が突き立てた槍のように長大な軌道エレベーターが聳え立っている。

 だが、地表に近づくにつれ、この星の「歪な姿」が露わになった。大陸の大部分は赤黒く荒廃し、分厚い雲に覆われていたのだ。

 その地獄のような荒野から切り離されるように、超巨大な半球状のエネルギー防壁が展開されている。防壁の内側にのみ、幾何学的な高層ビル群と、アニメで見るような空飛ぶ車が無数に行き交う光景が広がっていた。

 地球の科学力を遥かに凌駕する未来都市――それは、インベーダーに追い詰められたこの星の、最後の砦「王都エリシウス」だった。

 王都エリシウスの宇宙港に船が降り立つと、最初は未確認の侵入者として武装した近衛兵たちに包囲された。しかし、宇宙船のハッチが開き、最初に姿を現したルミティアの顔を見るなり、部隊長が武器を取り落とし「ル、ルミティア殿下……!?」と叫んだのを皮切りに、港はパニックに近い騒ぎとなった。

 10年間行方不明だった王女の帰還。特例中の特例として、大我たちはすぐさま王城の最奥の間へと通された。

 そこには、ルミティアの父であるルクアード・ミラステア王と、母であるルヴィリア王妃が待っていた。

「ルミティア……!」

 二人の姿を見た瞬間、王と王妃は弾かれたように玉座から立ち上がった。

 彼らは王族としての威厳も、周囲の側近たちの目もかなぐり捨てて大理石の階段を駆け下り、泥だらけの娘を力強く抱きしめた。

「おお……よくぞ、よくぞ生きて戻ってきてくれた……!」

「ルミティア……! あぁ、なんてこと……どうしてこんなお姿に……っ!」

 王妃は震える手で娘の真っ白な左目に触れ、大粒の涙をこぼして泣き崩れた。

 その時、ルミティアの破れかけた外套がふわりと揺れ、隙間から彼女の華奢な背中が露わになった。

 大我は思わず息を呑んだ。そこには、獣の爪で深く抉られたような、あるいは熱線から何かを庇って焼かれたような、生々しく巨大な傷跡がべったりと刻まれていたのだ。

 聞けば、彼女は『適合者』を見つけ出すため、10年以上も星を離れて命懸けの旅をしていたという。

 超新星爆発スーパーノヴァの熱線に焼かれそうになり、ブラックホールの重力場で船体が軋み、凶悪な宙族の襲撃で血を流した。

(――王女なんて、安全な城の奥で守られているだけの存在だと思っていた)

 大我は、断ろうとしていた自分を強く恥じた。

 彼女は違った。国のため、民のために、自分の命を天秤にかけ、文字通り身を削って10年間も宇宙の地獄を這いずり回ってきたのだ。その結果が、光を失った瞳と、背中のあの痛々しい傷痕だった。

 見つけられるかどうかも分からない希望にすがり、泥水をすするような思いで宇宙を彷徨っていた同世代の少女。

 そんな彼女の血を吐くような覚悟を突きつけられて、背を向けて逃げ出すことなんて、男として、人間として、できるはずがなかった。

「……俺に、どこまで出来るかは分からない。でも」

 大我は一歩前に出て、真っ直ぐにルミティアと王たちを見据えた。

 その瞳には、かつてモニター越しに世界王者たちを狩り尽くしてきた「絶対的な勝負師」の冷たい炎が宿っていた。

「あんたの覚悟に応えたい。力になるよ」

 大我が腹をくくった、その瞬間だった。

 ――ォォォォン……!

 突如、玉座の背後の壁に厳重に祀られていた長大な銃器が、重低音の振動を響かせた。

 『イクリプス』。王家が所有していた前時代の古代兵器であり、光エネルギーを変換して弾丸とする国宝。莫大なエネルギーを消費するため、この星の歴史上でも数発撃てる人間すらほとんど存在しない代物だ。

 そのイクリプスの冷たい金属のラインから、太陽のように眩く温かい黄金の光が脈打つように溢れ出したのだ。

 何千年も深い眠りについていた古代の神具が、まるで大我の内に秘められた「何か」に強烈に惹かれ、歓喜の産声を上げるように。

「なっ……!? 古代兵器が、光った……!?」

 驚愕に目を見開く王。その隣で、ルミティアもまた信じられないものを見るかのように息を呑んでいた。

 声も出せずに立ち尽くす彼らをよそに、大我は吸い寄せられるように玉座の裏へ歩み寄り、光り輝くイクリプスを手に取った。

 ずしりとくるその質量は、驚くほど彼の手と肩に完璧に馴染んだ。偶然か、それとも運命か。まるで、最初から彼の手の形に合わせて作られていたかのように。

 王城の最上階にある巨大なガラス窓。そこからは、繁栄する王都エリシウスと、都市をすっぽりと覆う巨大な防壁、そして――そのすぐ外側に広がる絶望の最前線が一望できた。

 かつては王都の一部だったであろう崩壊したビル群。黒く荒廃した大地の中心には、天を突くほどの巨大なクリスタル――『異界魔道門』が不気味な脈動を打って鎮座している。

 門からは這いつくばるような異形の化け物たちが無尽蔵に湧き出している。

 防壁の外側では、重装甲の機動兵器や無数の巨大なエネルギー砲台が火を噴き、ミラステアの軍隊が血みどろの死闘を繰り広げていた。だが、星の技術を結集したその強固な防衛線すらも、圧倒的な数の暴力の前に押し込まれ、崩壊の危機に瀕しているのは誰の目にも明らかだった。

 イクリプスを片手に下げ、大我は防壁の向こうの地獄を見据える。

「行くぞ」

 ただのゲーマーだった青年が、星の命運を懸けた長き戦端を開いた瞬間だった。

プロローグを読んでくださり、本当にありがとうございます!

ここから主人公・大我の長く熱い戦いが始まっていきます。


ブックマークや評価を押して応援していただけると、作者が泣いて喜びます。更新の励みになりますので、ぜひポチッとお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ