第9章:少しずつの絆
宮殿の中庭に足を踏み入れると、黒髪の赤い瞳の王子と護衛たちの姿がすでに目に入った。
カイル、エドワード、ルーカス――それぞれが中庭の端に整然と立ち、ミサの到着を静かに待っている。
ミサのすぐ後ろにはイザベルが控え、護衛として常に距離を保ちながら、必要に応じて声をかけられる位置に立っている。
ミサは深く息を吸い、少し緊張しながら頭を下げた。
「おはようございます、レオンハルト様」
黒髪の赤い瞳の王子――レオンハルトは柔らかく微笑みながら答える。
「おはよう、ミサ」
次に、護衛たちが一斉に挨拶した。
「おはようございます、ミサ様」
カイル、エドワード、ルーカスの声が揃い、整列した姿勢で敬意を表す。
イザベルは言葉を発さず、ミサのすぐ後ろで距離を保ちながら周囲を見守る。
その後ろ姿からも、護衛としての確かな緊張感と信頼の強さが感じられる。
冬の陽光が雪に反射し、中庭は淡く輝いていた。
レオンハルトは穏やかに微笑みながら、ミサを見つめる。
「今日は少し、外で体を動かしてみようか」
「体を動かす……ですか?」
ミサは驚きと戸惑いを隠せない。
「歩くだけでもいい。宮殿内に慣れたら、外での活動も自然に感じられるようになる」
カイルは少し眉をひそめる。
「危険はないのですか?」
「大丈夫だ、ミサに少し慣れてもらいたいだけだ」
レオンハルトの穏やかな声に、カイルも黙って頷く。
エドワードは優しい笑みを浮かべ、ルーカスも無言でミサの様子を見守る。
イザベルは後ろで常に安全を確認し、必要に応じて声をかける。
外に出る準備を整え、ミサは初めて馬に跨がる。
「レオンハルト様……こんなふうに乗るんですね」
「そうだ、落ち着いて。私が手伝うから」
レオンハルトはそっと手を添え、ミサの体を支える。
イザベルは馬のすぐ後ろに付き添い、必要に応じて手を貸す準備をしている。
馬がゆっくりと歩き出す。冷たい風が顔をかすめ、雪の匂いが鼻をくすぐる。
初めての感覚に、ミサは少し緊張するが、レオンハルトの落ち着いた手と声により、心が徐々にほぐれていく。
「……怖くないんですね」
「怖がる必要はない。私たちがついている」
その声にミサは安心して微笑む。
中庭で軽い剣の練習を始める。
イザベルは後方でミサの動きを観察し、必要なときだけ声をかける。
「まずは構えを安定させること。力で押すのではなく、体全体で支えるのです」
ミサは言われた通りに動くと、思ったよりも楽に剣を振ることができ、自然と笑みがこぼれる。
カイルは少し離れた位置から観察する。「……悪くないな。少しずつだが、慣れてきている」
ルーカスは冗談交じりに声をかける。「もう少し上手くなったら、私たちの相手もできるかもな」
エドワードは微笑みながら、細やかにミサの肩を支える。
イザベルは後ろで常に安全を確認し、必要に応じて指示を出す。
午後には宮殿の外周を馬で回りながら、訓練や散歩を行う。
レオンハルトは馬の操作を教え、ミサが安心できるよう手を添える。
イザベルは常にミサのすぐ後ろで、視線を巡らせ安全を守る。
カイルは警戒を怠らず、ルーカスは時折声をかけて笑わせ、エドワードも転倒に備え手を添える。
夕暮れ、客室に戻るとエリナが用意した軽い夕食が並ぶ。
「お疲れ様です、ミサ様。今日一日、よく頑張りましたね」
ミサは微笑みながら頷く。「皆さんのおかげです……本当に、ありがとうございます」
窓の外には雪が静かに降り積もり、宮殿を白く染めている。
暖かい部屋の中で、ミサは今日一日の出来事を振り返る。
レオンハルトや護衛たち、そしてイザベルとの距離が少しずつ縮まり、信頼が芽生え始めているのを心の奥で感じた。
宮殿での生活――少しずつ心を開き、絆を育む日々――
ミサの胸には、小さな希望と安らぎが確かに芽生え始めたのだった。