第7章:エリナと女性騎士の紹介
国王陛下との挨拶を終え、客室に戻ったミサは、窓の外に広がる雪景色をぼんやりと眺めていた。
心の奥に少しだけ芽生えた希望を抱えながらも、まだ緊張が抜け切れない。
一歩ずつ、ここでの生活に慣れていかねば――そんな思いが胸の奥で静かに膨らむ。
そこへ、清楚な装いの女性メイド、エリナが優しい足音を立てて入ってくる。
栗色の髪をきちんと束ね、落ち着いた瞳で微笑む。
「おかえりなさいませ。国王陛下とのご挨拶は無事に済みましたか?」
ミサは少し頬を赤らめながら頷く。
「はい……なんとか。でも、まだ少し緊張しています」
エリナはにこやかに微笑み、ゆっくりと声をかける。
「当然ですわ。初めての宮殿、初めての国王陛下ですもの。ですが、落ち着いていれば大丈夫です」
ミサは小さく息をつき、少しだけ安心した。
「ありがとうございます……」
エリナは少し真剣な表情になる。
「それと、今後のことですが……こちらの宮殿では、あなたを護衛する騎士が必要です。レオンハルト様がすでに女性騎士を選んでいます」
ミサは驚き、少し戸惑う。
「女性騎士……ですか?」
「はい。戦闘能力だけでなく、あなたが不安にならないよう、寄り添ってくれる存在です」
エリナは穏やかに微笑みながら、ドアの向こうを見やる。
するとレオンハルトが静かに客室に入ってくる。
「さて、ミサ。護衛として君に同行する者を紹介しよう」
扉の奥から、長身で引き締まった体格の女性騎士がゆっくりと現れる。
黒い鎧に身を包み、鋭い目つきだが、どこか落ち着いた優しさも宿る。
「ミサ様、私はあなたの護衛騎士、イザベル・リヒターです。これからミサ様を守ります」
ミサは少し緊張しながらも、イザベルの誠実さと強さに安心感を覚え、深く頭を下げる。
「……はい、よろしくお願いいたします」
イザベルは微笑み、静かに一歩前に進む。
「困ったことがあれば、遠慮なくお申し付けください、ミサ様」
その声に、ミサの胸の奥で小さな勇気が芽生える。
レオンハルトは静かに微笑む。
「これで、君の安全はある程度保障される。無理に心を開かなくていい。少しずつ慣れていけばいい」
ミサは窓の外に目をやり、雪がゆっくりと降るのを眺めながら、心の中で小さく決意する。
「ここで、少しずつでも、強くなっていこう……」
エリナはにこやかにトレーを片付けながら、そっと耳打ちするように言った。
「ミサ様、まずはここでゆっくり体を休めてください。宮殿生活はこれから長く続きます。慌てず、一歩ずつ」
ミサは頷き、イザベルの視線とエリナの微笑みに支えられながら、少しだけ胸の緊張が解けた。
外にはまだ雪がちらつく。
だが、ミサの胸の中には、暖かい光が静かに灯っていた。
新しい生活――そして、新しい絆の第一歩が、今まさに始まろうとしていた。