表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/30

第四章:宮殿での初日


客室の椅子に腰を下ろしたミサは、暖炉の柔らかい光に包まれながら深く息をついた。

雪と馬の疲れが体中に残っているが、肩越しに感じる黒髪と赤い瞳のレオンハルトの存在が、不思議と心を落ち着かせる。


「少し休むといい」

レオンハルトは優しく微笑みながら言う。

ミサは頷き、差し出された温かい飲み物を手に取り、一口ずつ体に染み渡るのを感じた。


しばらくすると、部屋の扉がノックされる。

「王子、客室の安全は確保済みです」

カイルの落ち着いた声が聞こえる。銀髪の彼は、依然として警戒心を緩めない。

ダリウスは長身でがっしりとした体つき、黒い髪に鋭い目を持ち、部屋の隅で周囲を警戒している。

セリオは柔和な顔立ちだが、観察力が鋭く、部屋の隅々まで目を配る。


レオンハルトは「皆、ここで待っていてくれ」と一声かけると、カイルたちは静かに従い、少し距離を置いて部屋の外に控える。


ミサは心の中で、まだ彼らに信用されていないことを感じた。しかし、レオンハルトの揺るがぬ信頼は確かに存在する。

「……この人は、きっと私を守ってくれる」

心の中で小さくつぶやき、疲れた体を椅子にもたせかける。


休息の時間が過ぎると、レオンハルトはそっと立ち上がり、「そろそろ宮殿内を案内しよう」と声をかける。

ミサはまだ少し緊張していたが、レオンハルトの手を借りながら立ち上がる。

騎士たちは依然として距離を保ちながら、整列して後ろに控える。


宮殿内を歩きながら、ミサは広大な空間に圧倒される。

天井の高さ、絵画や装飾の豪華さ、暖炉のぬくもり。

それらすべてが、前にいたグランベル王国の冷たさとは対照的で、心に安心感をもたらす。


レオンハルトは穏やかに話しかける。

「ここでは無理をする必要はない。疲れたら休めばいい」

その言葉に、ミサは少し肩の力を抜くことができた。


まだ聖女としての力は覚醒していない。

しかし、追放された過去とは異なり、周囲には守ってくれる人々がいる。

そして、黒髪で赤い瞳の青年――レオンハルト――の存在が、未来への希望を少しずつ膨らませていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ