表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/30

第十七章 街のひとときと小さな力

 翌日、城の外に出ることになった。ミサは少し緊張しながらも、レオンハルトの隣に立つ。護衛のイザベルは後ろに控え、周囲に目を光らせている。城門を抜けると、穏やかな通りと人々の笑顔が広がっていた。


 「今日は少し街を歩いてみよう。人々と触れ合うのも大事だからな」

 「はい…でも、私、大丈夫でしょうか…」

 「無理せず、君のペースでいい」

 レオンハルトは軽く微笑み、そっと手を差し伸べる。ミサはその手を握り、少し勇気をもらった。


 道を歩いていると、子どもたちが遊ぶ声が聞こえた。ミサが近づくと、子どもたちは興味津々に寄ってきた。

 「ねえ、お姉さん、あそぼうよ!」

 「ええ、いいわよ」

 ミサが手を差し伸べると、ほんのわずかに手から温かい光が漏れ、子どもたちは驚き目を見開いた。だがすぐに笑顔に変わり、手を握ったまま遊ぶ。


 ミサ自身も驚きで小さく息をのむ。

 「えっ…光…出てる…?」

 レオンハルトは微笑みながらも、内心で少し驚きを覚えた。

 「…君の力、少しずつ現れているな」

 「ご、ごめんなさい、びっくりさせました?」

 「いや、問題ない。むしろ自然で良い」


 街を進むと、小さな果物屋の前で荷車が傾きかけていた。ミサは咄嗟に手を伸ばし、荷車を支える。手からほのかな光が流れ、果物は落ちずに済む。店主は思わず目を見開いた。

 「お、お姉さん!?…すごい…!」

 ミサも自分の手から光が流れるのを見て、思わず顔を赤らめた。

 「い、いえ…ただ…手を伸ばしただけで…」


 護衛たちもその光景に少し驚きつつ、冷静さを保つ。イザベルは「さすがミサ様…」と呟き、他の護衛たちはお互いに小さく頷き合った。

 ミサは胸が熱くなるのを感じた。──自分の力が、人々の助けになった──


 さらに歩いていると、道端で小さな段差に子どもが足を取られそうになる。ミサは反射的に手を伸ばし、子どもを支えた。その瞬間、手から温かい光が広がり、子どもは無事に立ち上がる。子どもは驚き目を丸くしたが、すぐに「ありがとう!」と笑顔で言った。

 ミサも思わず息をのむ。

 「光が…!私…できたの…?」


 街の人々は不思議そうに眺めつつも、恐れる様子はない。誰もが自然に微笑み、ただ優しい人だと思うだけだった。ミサは安心しながらも、力が確かに自分の中で生まれつつあることを実感する。


 帰り道、レオンハルトはさりげなく手を握り直す。

 「今日の君は、昨日より落ち着いているな」

 「皆さんのおかげです。こうして安心して歩けるのも」

 護衛たちも微笑み、ミサの成長と街での交流を静かに見守った。


 城に戻ると、夕暮れの光が窓から差し込み、庭園の木々が長く影を落としていた。ミサは胸に温かさを感じながら、静かに呟く。

 ──私を見守ってくれる人たちがいる。だから、私は力を使える──


 その夜、眠る前にミサは小さく手を合わせた。城の人々、護衛たち、そしてレオンハルトに見守られながら、少しずつ自分の力を受け入れられる自分がいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ