第10章:絆を紡ぐ日々
朝、宮殿の客室に柔らかな光が差し込む。
ミサはまだ眠気の残る頭を抱えながら、昨夜の温かい客室やエリナの用意してくれた朝食を思い出す。
「こんなに丁寧に用意してくれるなんて……」
心の奥が少し温かくなる。
イザベルは後ろで姿勢を正し、静かに見守っていた。
外に出ると、宮殿周囲は雪で真っ白になっている。
黒髪赤瞳のレオンハルトが、護衛たちとともに中庭で待っていた。
カイルは冷静で知的な雰囲気、鋭い目つきだがどこか優しさがにじむ。
エドワードは穏やかで笑顔が柔らかく、話しかけやすい印象。
ルーカスは明るく冗談交じりで場を和ませるムードメーカー。
ミサはその整列した姿を目にし、少し緊張する。
「おはようございます」
「おはよう、ミサ」
挨拶を交わすと、護衛たちも揃って声を合わせる。
「おはようございます、ミサ様」
イザベルは後ろで一歩下がり、常に安全を見守りながら、彼女を静かに支える。
今日の予定は雪中での歩行訓練と剣の動きの確認。
雪が舞う中、ミサは慎重に足を運び、剣の構えを試す。
カイルは冷静に指示を出し、動作のチェックを行う。
エドワードは姿勢の修正をそっと手助けし、ルーカスは冗談を交えながら声をかけ、ミサの緊張を解く。
イザベルは常に後方で安全を確認しつつ、彼女の動きを見守る。
「肩の力を抜いて、もっと自然に」
レオンハルトの言葉に、ミサは少しずつ剣の感覚をつかみ、緊張が和らいでいった。
訓練が一段落した頃、エリナが準備してくれた昼食を中庭の簡素な木製テーブルに並べる。
温かいスープ、パン、軽いおかずが雪の白さに映え、湯気が雪に溶けて淡く立ち上る。
「お疲れ様です、ミサ様。こちらでどうぞ」
「ありがとうございます」
ミサは少し戸惑いながらも、レオンハルトと護衛たちと一緒に外で昼食を取ることにする。
雪の中、温かい食事を口に運びながら、自然と会話が始まる。
「雪の上での動き、昨日より随分安定していたな。少し慣れてきたか?」とレオンハルト。
「はい……皆さんのおかげです」
カイルは穏やかに微笑み、「焦らず少しずつ慣れればいい」と助言する。
「でも、皆さんと一緒だから安心できました」とミサが笑うと、護衛たちも柔らかく微笑む。
ルーカスは冗談交じりに、「まあ、少しずつだが確実に上達してるな」と言って笑いを誘う。
レオンハルトは食事の間も視線の端でミサを気にかける。
「無理はしていないか?」
「はい、大丈夫です。少し疲れましたけど、楽しいです」
わずかにほほ笑むレオンハルトを見て、ミサの胸が温かくなる。
雪の上での昼食は、寒さと温かい食事の対比が心地よい。
会話も自然と弾み、訓練の反省や今日の印象、些細な冗談も交わされる。
「この雪、滑りやすいけど、皆さんのサポートで安心でした」
「それは良かった」とカイル。
「私もミサ様が無理せず楽しめるよう支えます」とイザベルが控えめに言う。
「皆さんに支えてもらっているのが嬉しいです」とミサが微笑むと、護衛たちは少し照れながら頷く。
雪の舞う中、レオンハルトはふと視線をミサに向け、さりげなく観察する。
訓練の疲れが表れる前に声をかけたり、休憩のタイミングを調整したり。
「無理は禁物だ、少し休め」
「はい……ありがとうございます」
ミサはその気遣いに心を温められ、自然と笑顔が増えていく。
昼食後、雪景色の中で暖かい空気に包まれながら、ミサは今日の出来事を振り返る。
雪中訓練、護衛たちの気遣い、レオンハルトの優しい目線……
少しずつ信頼できる人々との距離が縮まり、心が穏やかになるのを感じた。
「ここなら、少しずつ前に進めそう」
胸の奥で静かに微笑むミサの横で、イザベルは後ろからそっと頷き、これからの日々を見守る決意を新たにするのだった。