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28 誰だって時には真似したくなる

「我が力、特別に見せてやろう」

(……見ちまった)

「すまんな。この技は気をためるのに時間が必要でな」


 この日、アルバは思わぬものを見てしまった。

 天井裏を渡ってステラの部屋に行こうとしていたのだが、プルースの部屋に差しかかる直前で隙間から見えた光景に、言葉が見当たらないのだ。


 アルバ自身、これでも男なのでプルースの状態は痛いほど理解出来る。

 確かに周囲の目はない場所で、男と言うものは漫画とかに出るキャラクターの真似や、ちょっと恥ずかしいけど覚えたての曲を音痴であっても口ずさみたいようなものだ。


 天井からアルバが覗いてしまった事も知らずに、プルースは額に人差し指と中指を当てている。

 溜めるシーンまでわざわざ再現するのは、男だろう。


「まかんこ――」


 プルースが指を突き出そうとした時だった。

 乗っていた天井は隙間から亀裂が生え、パラパラと崩れ落ちたのだ。

 そしてプルースの前に落ちると、彼は恥ずかしそうに顔を真っ赤にし始めた。

 思わず突き出している指を戻すのを忘れてしまう程、沸騰している発情期らしい。


「あ、あああ、あああ、アルバ、さん……こここれは、ですね、その……」

「プルース、分かってる」

「ア、アルバさん……」

「セキさんやステラには、プルースの部屋上の天井を渡らない事、プルースの部屋に入る時は必ずノックをするように伝えておく。それに、壁は更なる防音が出来るようにしておくから、その、なんだ……頑張ってくれ」

「ちょっ、絶対わかってないですよねぇええ!? 何を分かったって言うんですか!」


 邪魔したな、と一言残して、プルースの部屋を後にしようとした時だった。

 ドアノブに手をかけると、がっしりと手が置かれた。

 その手はぎちぎちと悲鳴を上げる程に力を入れており、逃がさない決意の表れだ。


 結局のところ、プルースにつかまったのもあって、アルバは部屋に残っていた。


「まあ、別に分かるからな? 男なんて、かっこいいキャラクターに憧れたり、手を伸ばしたり、ビームを溜めて撃ったりするかっちょいい技に憧れるって」

「なんで蒸し返すんですか! ていうか、アルバさんはそーいうのないんですか?」

「ふん、プルース、その手には乗らん。生憎、俺はそこまでおこちゃまじゃないからな」


 と言った数分後、プルースの部屋を厳重にしてから、アルバは両腕を広げていた。


「お前に受け止める覚悟はあるかぁああ!!」


 グッと伸ばした腕を中央に。

 そして一気に力を放出しようとした、その時だった。


「プルース、アルバ見てないか? ……すまない、だから厳重だったんだな。次からはしっかりノックはするし、別に自分の部屋でやればいい話なんだ。そうだな、ああ」

「ちょい待てぇゴラァアアア!?」

「アルバさん、そういうことなんですよ……」


 様子を見に来たセキを捕まえてから、プルースの部屋を出来るだけ厳重にした。


「いやなに、俺はお前らが兄弟みたいに仲良くしてるから目をつぶっただけだ。安心しろ、ステラにはしっかりと入る前には必ずノックをするように言っておくし、地下から部屋の下を通る際は耳栓をするからよ」

「やっぱりこの人勘違いしてますよ」

「セキさんはエロいから。仕方ない、あの日セキさんが【自主規制】の話をステラに――」

「おいおい、その話題はエヌジーだろ? アルバ、勘違いするな」


 どうやらセキは乗り気になってくれたらしい。

 ふふっ、と低い笑い声を出すセキに、アルバはそっと笑みをこぼしておく。

 プルースも乗り気になってくれているようで、三人はそれぞれ構えるのだ。

 そう、男と言うものはロマンに憧れている。


 たとえ技がでなくても、脳内アドレナリンで見えるのだから。


「ファイナルゥウウウ」

「まかぁんこぉお」

「デッド――」

「ねーねー、アッちゃんいな……い……?」


 どうしてプルースの部屋は躊躇なくこじ開けられるのだろうか。

 ドアを壁ごと取り外したステラは固まって、まるでゴミを見るような目を向けている。

 ステラ自身、この男三人衆の行動は理解しているだろう。だが、一つの部屋に集い、傍から見れば変な格好を取っていれば勘違いもあると言える。


 そんな気まずい空間に、一つの足音が響いた。


「ステラ、アルバならいるぞ。後、一応言っておこう、これは俺がアルバたちを誘って練習していたんだ。それとも、ステラも練習してみるか?」

「へー」

「あっ、プルース、よけろぉおお!!」

「な、ぐはぁああああ!?」


 ステラは誘われた瞬間、手始めにプルースを蹴り上げた。

 そして追撃と言わんばかりに、空を切る拳を振り上げてプルースを爆殺した。


「あの馬鹿、どういう行動かも見極められんのか」


 セキは誘ったのが不味かったと思ったのか、こっそりと部屋を後にしようとしている。


「セッちゃん、どこに行くつもりー?」

「……す、ステラの【自主規制】の写真を拝みに行くために、脱出の準備を――」

「ひとりでこっそり、ナニを【自主規制】してやる気かなー? 言ったよねー、次は無いって」

「くっ、愛しいステラに倒されるのも、最強が故の定めか……」


 セキが言葉を最後まで言い切らないうちに、ステラはセキを振り回して天井に投げ捨てた。

 壁を強化していたのもあり、大きな音が耳を打つ。


 ステラは振り返ると、アルバを見ている。


「アッちゃんは何をしてたのー?」

「……ステラの部屋に行こうとしてただけだ」

「なんでー?」

「……にげるんだぁああ。俺は生きるぞ!」

「そっかー、帰れるといいねー」

「どぅるっしゃいあやぁあああ!?」


 ステラがアルバの顔面を鷲掴みにし、逃げようとしたアルバを壁に叩きつけた。

 メリメリと押し込まれる壁は音を立て、ステラはアルバを気絶させようとしている。


「なあ、ステラ……お前も真似するのす――」

「あーあー、玩具壊れちゃったー」


 ステラは口元に指を当てて、わざとらしい笑みを浮かべている。

 結論、家族は共通して好きなものがあるようだ。

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