7
ジークムントを見送り、私は父のところへと向かった。
やったこと、言ったこと全て説明した。
とりあえず後から困らないように事後報告だ。
尻拭いは父がやってくれる。いつものように。
「え、あれ、本当にやっちゃったの?」
父はそう言いながらも、少し笑っている。
怒らないあたり、それなりに今回のことに対して不満を持っているのがわかる。
「当たり前じゃないですか、あんなことされたのに、笑顔で何も言わなかったら死ぬまで舐められますよ」
やられっぱなしだったら、負けを認めたようなもの。
死ぬまで踏みつけにされるつもりはない。どちらが強者なのか知らしめてやる必要がある。
「もう少しやり方があったんじゃないの?」
兄の声がした。どうやらいたようだ。存在感がなさすぎていることに気が付かなかった。
「おう、愚兄、いたのか、気が付かなかった」
「ひ、酷い」
兄を呼ぶとあからさまに傷ついた顔をして、ショックを受けている。
「で、具体的にどうすればいいの?」
ただ、穏便にことを済ませる方法も実は考えてなかったわけではない。
兄のライナーの考える最良の方法も聞いてみることにした。
まあ、聞いたところで絶対に言うことなんて聞かないのだけれど。
「そりゃ、ちゃんと穏便に話をして」
「穏便に話を聞いてくれると思ってるの?」
「……」
ライナーは途端に黙った。
彼も話なんて聞いてくれないと思ったのだろう。
だったら言うな。
「これからの付き合い方どうすればいいんだ」
父は困った顔をしている。
あちらから何か言ってくることがあるとしたら、婚約破棄か婚約破棄か婚約破棄だろうか。
王命?そんなものは知らない。
私は一ミクロンも悪くないので、向こうが地面に頭を擦り付けて国王に謝ればいいだけじゃないか。
私は悪くない。
「婚約破棄するなら、向こうの有責で吹っかけましょう!」
当然もらえるものは、もらっとけというスンポーだ。
「だったら同レベルな事しなくてもよかったじゃない?うち、潰されちゃうよ」
まあ、父は何とも弱気で情けない。
「情けない。男どもだ」
「サブリナ、頼むから早く目を覚ましてくれ、私たちにこの子を止める事はできない……」
私が吐き捨てると、父は姉の部屋のある方角に手を合わせて何やらお祈りを始めた。
今から死ぬわけでもないのに不謹慎だ。
まあ、こんな感じでバーナー家からの反応に、父と兄は情けなくも怯えて待っていた。
それから、数日後、ジークムントの名前で私宛に手紙が届いた。
どうやら私と「お話」がしたいようだ。
調査内容はどうだったのだろうか、それに対しては全く触れられていない。
私が来て「お話し」したいようだ。
何様のつもりなのか、使用人を連れてきて頭を下げるのが筋なのではないか。
まあ、格上の公爵にそんなことを言えるわけがないので、私はそれを飲み込んだ。
私だって常識はある。