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第一話 交通事故から始まる異世界

この俺、木下祐樹きのしたゆうきは一般的な企業に努める35歳の健全な会社員だ。

ありがたくも健康に産んでくれたお陰で大きな病気にはなったことがない、両親には感謝だ。

しかし、今まで彼女はできたことないしそれに生きていて達成感なんてものも感じたことがない。

小学生のころは不謹慎にも何か身の回りで起きないかとドキドキしながら過ごしていたこともある。

でも、何も起きなかった。

それに緊張したことなんか数えるくらいだったし、感受性が薄いのでは?と母親にも言われるくらいだった。

その図太さが度胸があると勘違いされて学校ではクラス対抗リレーのアンカー、会社では朝の代表スピーチなどどちらかというと人がやりたくないような事を今まで任されてきた。

結果は察して欲しい…

まぁ、そんな鈍感な自分だが30を超えてあまりの女っけなさに母親から孫の顔が見たいコールが毎月届くようになった。

そんな状態が約5年である…

自分のメールからlineなどSNS関連も全て母親は何故か知っておりその全てに実名で「孫見せろや」コールが鳴り響くようになった。実際に通知が止まらない…

そんなノイローゼ一歩手前の中、ペットセラピーの記事を読んだ。

かわいい小動物とふれあいを通して、心身ともに健康になるらしい。

ここで運命の出会いを果たした!

そう、猫ちゃんである!!

あの愛くるしいフォーマット、そして無邪気な行動と守りたくなるお顔!

た、たまらない!

こんなにもかわいい生物がいるなんて…

そうして猫の虜になっていた私だったが、独身がペットを飼うと婚期が遠くなると同僚に止められていた。

なぜ同僚が心配してくれたのかというと実名で世界に早く孫の顔見せろコール(ある界隈ではハヤマゴコールと呼ばれているらしい)を投稿している母親のせいだ。

ネットはある意味尖っている(気が狂っている)ものに注目が集まることがある。

そして、実名である一つの言葉だけを呪いのように投稿を続けている母親は格好の的になっていた。

その知名度はある炎上のせいで一気に拡散されることになるがそれは思い返すだけでも辛い記憶だ。

そんなこともあり、すっかり私に彼女がいないこと周りに知れ渡ってしまうことになった。

ここまで不名誉なことはない。

「ペットを飼うことまで杞憂されるなんて...俺の人生終わったな」

会社帰りにSNSを見てまた何度目かわからない母親の投稿がトレンド入りしている事を見て鬱になっていると

目の前でかわいい猫ちゃんがこちらに向かって走ってきているではないか?!

(これは天から俺にくれたご褒美なんだ!ありがとうございます!

 たぶんあれはスコティッシュフォールドの猫ちゃんだ!!)

その時!

信号無視をした車が猫ちゃん向けて横から突進してきた!

どうやら携帯電話に夢中になっているようだった。

(危ない!)

そう思ったときには体が動いていた。

次の瞬間、猫ちゃんを抱えたまま俺の体は宙に浮いていた。

猫ちゃんを守れた腕の感触の安堵感とそして贖えない程の痛みが同時に走り

俺は…気を失った。


はっ?!

気がつくとそこには真っ白な空間が広がっていた。

見渡してみると目の前だけでなく360度全て何も無い。

どうやら頭は動かせるようだ。

まるで空を浮く風船のように自分が浮いていた。

不思議な感覚だったが、こんな時でも思考は止まらない。

重力は?猫ちゃんはどうなったのか?自分はまだ生きているのだろうか?

軽いパニック状態になりかけたところに目の前から一筋の光が自分に迫ってきている!

身を翻して何とかここから動こうとしたがどうしても体の自由が効かない!

意識だけがはっきりと今目の前に迫ってきている危機に悲鳴をあげそうになり目を閉じた!

ぶつかる!と思ったその瞬間、その不思議な光は俺の頭をかすりながら素通りしていった。

ここで胸の高鳴りを感じながらまだ心臓が動いていることに気が付いた。

(俺は生きているのか?こんな疑問を抱くなんて初めての経験だな…)


よく見てみるとこの真っ白な空間に無数の光がまるで流星群のようにきらめいていた。

少なくとも100以上の光の筋が見える。

(ここは何なんだ!俺はどうなるんだ!)

「誰かいるのか!!!助けてくれ!!!」

力の限り叫んでみる。しかし、声は誰にも届いていないようだった。

それでも俺は叫び続けて、そしていつの間にか気を失った。


もう何時間経ったのかもわからない、いや、何日経ったのかもしれない

何もない空間というのはここまで気が狂いそうになるのだと初めて知った

もう既に気が狂っているのかもしれない

こんな時に考えたのは両親への気持ちだった

思えば何も親孝行らしいことはできず、母親には孫の顔も遂に見せることが出来なかった

(母さん、父さんごめんな…次生まれ変わったら必ず親孝行するよ…)

そう思った瞬間、大きな光が足元から自分を包み込んだ!


(暖かい…)

まだ目が開き切っていないが、その包まれる光の感覚に何故か安心感と懐かしさを感じていた。

やっと目が光に慣れてくる。

目の前には大きな丸が浮かんでいた。

何とも形容しがたいその丸は周りが黒の線のようなもので宙に浮かんでいるように見える。

平面なのか立体なのかすらわからない、ただこの真っ白な世界で明らかに異質な物体だった。

「お前は意識があるのか?」

いきなり無機質な声が頭に響くが驚きで声がとっさに出てこない!

「お前はなぜまだここにいる?」

「ま、待ってほしい!自分でもわからないんだ!意識はある!助けてくれないか?!」

(いきなり目の前に現れた存在に今はすがることしかできない!どうにかしないと!)

「そうか…意識はあるようだな…おもしろい!お前は新しい可能性を秘めている!」

(何のことかさっぱりだが、どうやらこの丸は俺に興味が出たらしい…)

「俺はどうなったんだ?!それにここはどこなんだ!?」

「それより、お前を新しい世界へいざなってやろう。すまんが最初からやり直ししてもらうことになるがそこはこの力で許してほしい」

(だめだ、会話にならない!!そして意味がわからない)

「つ、つまり俺は死んでいるんだな?そ、それに、やり直し…?よくわからないがここにいるよりはましだ!お願いできないだろうか?」

「死…ああ、そんな概念だったな…その通り。お前という存在は無くなった。そして、生き返らせてやろう!」

「あ、ありがとう!どうか頼むよ!」

「ふむ、ところで私の想像する力をお前は持つことになる。簡単だが教えてやろう。」

「想像する…力?」

「そうだ、これは日が出てから落ちるまで3回まで使用可能だ。そして、その結果は6つの要素から付与される。良い結果になるも、悪い結果になるもお前次第だ。」

「な、なにを言ってるんだ!全然説明になってないぞ!も、もう少しわかりや…」

「すまん、もう時間がない。どうやら転生する準備が整ったようだ。お前の新しい存在に幸多からんことを…」

「ふ、ふざけるなあああああああああ!!!」

次の瞬間、俺は産声をあげていた。

そう、出産のタイミングだったというわけだ。


(やっと落ち着いた…)

(まさか、生まれ変わるなんて…!しかも、記憶がそのままある!)

出産後、取り上げられた俺は暖かいお湯で流され、綺麗にしてもらった後に毛布のようなもので包まれた。

誤算だったのは、あまりにも産声が短すぎて助産師のような人に死産だったと疑われてしまったこと…。

何度ももしりをひっぱたかれた。未だにヒリヒリする。

そして、様子を見るため別室で検査を受けることになったのがついさっきだ。

(ここはどこなのだろうか?見た限り雰囲気は日本というより西洋のような感じだな)

周辺を見てみると、木製の机・ベット・食器などが多く銀やシリコンなどの素材が見当たらない。

布もごわごわしているような気がする。

生まれ変わったこと自体も驚きだが、赤ちゃんの時から意識がはっきりしているというのも苦痛になってきた。

(そう…動けないのである!!これでは真っ白な空間にいた時と何ら変わらないではないか!?)

そう思ったとき、金髪の綺麗な女性がドアを勢いよく開けて部屋に入ってきた。

「私のかわいい赤ちゃん無事で良かった!今ご飯をあげるからね!」

いきなりの展開に頭が着いてこない。

そして、何も抵抗できない俺の口に前世であんなに憧れていた大きなおっぱいが近づいてくる!

(こんな最高の展開があるのか!!生まれ変わって良かった!!)

俺は食欲なのか性欲なのかわからないまま本能に従っておっぱいを初めて吸った!

「食欲はあるみい!本当に良かったわ…元気に吸っている…本当に良かった…」

(涙ぐんでいる…そうか、あまりにも俺が泣かなかったせいで心配させてしまったのか…)

少し反省しながらも本能には逆らえず俺は憧れのおっぱいにずっと吸い付いていた。

バタン!またドアが大きく開いた。大柄な男性が入ってくる。

「ニーリア!よく頑張ったな!これが俺の子か?!」

「そうよ!あなた!こんなにもたくさんおっぱいをのんでくれてるの!元気で良かったわ!」

なぜか罪悪感が絶えない。

この大柄な男性が父親のようだ。

おっぱいを飲みながら、この世界は美男美女ばかりだと思った。

先ほどの助産師さんも歳はとっていると思うが、鼻筋も通っており、目も大きな綺麗な人だった。

まるで、ゲームの物語の中のような感覚がする。

そんな事を思っていたら、すっかり人が増えており周りは俺のことを祝福する声で溢れている。

なんだか、とても安心感があり居心地がいい。こんなにも安らかな気持ちになったのはいつ以来だろう。

そう思ったら、急に眠気が出てきた。

おっぱい飲んでねんねして…あの歌がふと頭に現れたとき意識がゆっくりと遠のいていった…


それからしばらくしてから

俺は周りを整理してみることにした。

どうやら俺はこのファルマ家と呼ばれる一家の次男として産まれたらしい。

フォルマ家は父親のフォルマ・バズ、母親のフォルマ・ニーリア、長男のフォルマ・フォージャー

そして、この俺フォルマ・アルスの4人家族だ。

名付け方として当たり前だがやはりここは日本ではないらしい。やはり西洋風のなのか?

正直、35年間日本で過ごしてきたせいかまだまだ名前の違和感が抜けていない。

今はまだ赤ちゃんだからいいもの母親に呼ばれても自分のことだと認識できなさそうだ…

フォルマ家は地元では有力な家らしく、俺の誕生のお祝いとして様々な人達が顔を見に来てくた際に大量のお祝い品が献上されていた。

そして、この世界には魔法が存在していた!

日常生活のほとんどが魔法によってまかなわれており、料理するときはもちろん、掃除・洗濯から犬の散歩まで…まるでゲームのような感覚で日常に魔法がありふれていた。

最初にニーリア母さんの手から火が出て来た時は本当に驚き、年甲斐もなく漏らしてしまった、いや赤ちゃんならいいのか…?

魔法が使用できることに胸は高鳴っていた。


そして、家族のことだが

父親のバズは身体も大きいがそれに負けないほど人柄もよく、俺のために来てくれる人達に対して年齢関係なく深々と頭を下げて心から感謝の思いを述べていた。その際にくしゃっと目頭が細くなるとびっきりの笑顔が男の俺でさえ素敵に見えた。

母親のニーリアは身体は小柄だが、おっぱいが大きい…おっと、私情が出てしまった。天真爛漫な性格で男女構わず言いたいことを言い、やりたい事をやる、そんな彼女は周りから愛されていた。そして、面倒見がとてもいいのでしょうっちゅう捨て猫や犬を拾ってきては丸々に太らせて飼いたい人に渡していた。そんな彼女は5年前に子供を拾ってきた。そう、それがこの家の長男であるフォージャーだ。

長男のフォージャーはいわゆる頭脳明晰タイプで身体は細く、常に何かの本を手に持っていた。俺に対しては新しい家族として複雑な感情を持っているようだった。興味があるようで何度か見に来てくれたもの少し顔を見ると直ぐに引っ込んでしまった。

捨て子だと俺がわかったのも両親がフォージャーのことで話しているのを偶然聞いてしまった。

どうやら家族の問題は産まれた時から始まっているようだ。


そして、あの丸から自分に授けられた能力とも言える「想像する力」これについても何度か試してみてわかったことがある。

一つ目に確かに一日に3回まで能力を使用できること

この世界がどのくらいで1日になるかわからないが日が出て落ちても夜の間に使用でき、日が出た後にまた使用できたことから日の出がリセットのタイミングのようだ。3回目以降はどうやっても使用は出来なかった。また、再度使用するには体感で約3時間ほどクールタイムが必要だった。


二つ目にこの能力を使用するには頭の中でレバーのようなものを引くことで機能すること

これはイメージだけでも良いようで、分かりやすく残り使用回数が見えている。

レバーを引くとガチャっという効果音と共に色付きの丸いボールが上から落ちてくる。

(今のところ赤・青・黄色の三色があることを確認している。)

パカッという気持ちのいい音と共にボールが開き、まるでパソコンのウィンドウのような画面に能力内容が記載される。

その後、その能力を使用するかどうかは「適用」・「破棄」の2項目が使用後に現れ、念じることによって選択ができる。これは一目見てやり方がわかった。


三つ目に付与される力は大きな分類として容姿変化、身体能力、思考能力この3個からランダムで付与されること

しかも、自分の望む結果に必ずしもなるとは限らず、マイナスの効果いわゆるデバフもあることがわかった。

そして、一番のデメリットとしてわかったのは能力結果は必ず使用しなければならないということだ。

一度「足が1日遅くなる」という効果が発現し「破棄」を選択したところ、ニーリア母さんの悲鳴が聞こえてきた。どうやら、洗濯物を取り込む際に風が強く吹いた勢いで足場が崩れてしまい足をくじいてしまったようだった。

頭の中のウィンドウには「破棄の結果、あなたの一番近い人間へ悪い影響が出ました」と記載があった。

(なにが想像の力だよ!マイナスもあるって聞いてないんだけど!しかも、引き戻しもなく拒否したら近い人に悪影響が出るなんて最悪だ!!想像の力なんてもんじゃない!こんなのクソガチャじゃないか!!!あのまん丸野郎許さんぞ!!!)

俺は心の中でまん丸野郎への復讐とニーリア母さんに謝りながら二度と母さんが近くにいるときに「破棄」は使用しないことを誓った。


そして俺はこの能力を「クソガチャ」と名付け、何度も試していく日々を過ごした。

そう、産まれたての俺は他にすることもなくこのクソガチャを回すことが1日の楽しみになっていた。

幸いにもデバフと思われるマイナス効果は赤ちゃんの自分でも耐えられるようなものばかりだった。(まぁ、でも「一日全身が痒くなる」身体能力効果はくるものがあった…)

ガチャで目指したのは身体能力強化の能力を受けること

容姿は鏡のようなものを見た時に自分で見惚れるほど美男子だったのでさすが美男美女の世界だなぁと妙に納得してしまった。

よって、容姿系のガチャ結果にはそこまで気にならず「眉毛が一本生える」のようにガチャ内容も大きな変化があるものではなかったためとりあえず適用するしか選択しないことにしていた。

思考能力についても大きな変化はあるように思えず「0.1秒間考えられない」など本当に意味があるのか?と思えるデバフなどがあったがこちらもとりあえず適用することにしていた。

(筋肉こそ至高!身体能力を上げるのだ!マッチョ赤ちゃんを目指すぞ!)

と思っていたがどうやらこの世界は本当にゲームのようなものらしい、見た目に影響を及ぼすわけではなく、全て数値化されておりそれが能力に紐づけされているようだった。

ガチャが有利な結果の時にはファンファーレと共に「おめでとうございます!あなたは力が10ポイント上がりました!」など大げさに表示される。

もちろん「適用」を選択するが「10ポイント付与されました」と表示があるだけ。何にも感覚は無かった。

(そうか、ステータスが見えないということか?!!モチベーション下がるわーーー!!!)

後に長男のフォージャー兄さんの10歳のお祝いでわかったのだが

どうやら、個人のステータスと魔法適正の顕在化には年齢の制限があり10歳の誕生日に儀式を行うのが通常の流れのようで、俺がステータスが見えないのも魔法も使えないのは当たり前のようだった。それにガチャで魔法に関する能力は出たことがなく残念に思った記憶がある。

だが、ここで俺はおれなかった…

(新しいこの人生では絶対に彼女を作る!そして、何の説明もなく転生させあのまん丸野郎に一声言ってやる!)

この不純な理由で俺は10年間毎日ガチャを回し続け、見えない能力を上げ続けた。

そして、10年の月日が流れた…


「さて、行ってくるよニーリア母さん!」

「気を付けて行ってくるのよ!帰ったらみんなでお祝いする用意をしてるからね!」

「ありがとう!さぁ、行こう、マーニャ!」

「ちょっとおば様にはしたないでしょ!すいません、行ってきます!」

幼馴染のマーニャと共に教会へ馬車で向かった、そう、2人とも10歳になる年だった。

マーニャは3歳ごろに一緒に地方貴族が催す食事会で出会い、それからは事あるごとに一緒に行動することが多くなった。

赤ちゃんのころはわからなかったがどうやら俺の家は商業から成り上がり、伯爵の位を受けたようだった。父さんの人柄がよいのも納得だ。

マーニャは代々伝わる王家直属の貴族で公爵家の令嬢だった。

このような階級制度があることを知って、この世界は時空を超えた過去の地球なのではと考えたこともあるが、魔法の存在からその考えは打ち消された。

(やっぱりゲームみたいだなぁ~)

吞気に考え事をしていると、マーニャから小突かれ

「ほら!王都だよ!大きいわね!見てみて!」

と馬車の窓口から落ちる勢いで身体を乗り出しているマーニャに促されて外を見てみた。

息を吞む…まさにその通りの景色が眼前に広がっていた。

あれは、テレビで見た万里の長城だったか、同じ感動を覚えた。

王都はまさしく城であった。

巨大な門を中心に先が見えないほどの石の牙城が続いている。

驚くべきはその高さである。近接してみるとその迫力に押しつぶされそうになった。

そして、門には銀のオートメイルをした門番が少なくとも30名が佇んでいた。

一式を銀製の武装でまとった姿には一ミリも隙がないように思えた。

圧倒されたまま馬車が門まで着くと、簡単な手続きを済ませた後に巨大な門が開いた。

(そうか、門番はこの扉を開くためにも人数が多かったんだ)

この巨大な門が動くこと自体驚きが隠せなかったが、それよりも門番の力に目が離せない。

大きな音を立てながら門が開き、中には華やかな家が綺麗に並んで建てられていた。

感動が収まらないまま、初めての王都のきらびやかな雰囲気が自身を飲み込んでいく。

馬車はそんな個人の気持ちを無視するようにこの爽健な街並みを颯爽とかけていった。

見るもの全てが新鮮に感じる、こんなにも綺麗なものがあるなんて信じられなかった。

マーニャも騒いでいるが俺より来たことがある分、落ち着いていた。

感動束の間、儀式を取り行う教会の前に馬車が着いたようだ。

街並みの綺麗さとは違い、教会は古風な趣きをしていた。

(いや、むしろ汚いような感覚を感じる)

中に入ってみるとその違和感はさらに大きくなる。

小さな教壇と椅子が4席ほどしかなく、周りの街並みからは想像のつかない小さな内装だった。

奥に行くと牧師のような格好をした高齢の男性が手に水晶のようなものを持って待っていた。

儀式中に従者は入ってはいけないため、2人で恐る恐る近づくと

「あなたがたが今回の付与者たちですね?」

2人とも小さく頷いた。

「よろしい、ではハルベルト・マーニャ!あなたからです、前に来なさい!」

マーニャが教壇の前に出る

「我らが神よりこの者に祝福を授け給え!」

強い光が水晶のようなものから出ている!

マーニャは震えながらその光へ向かって手を差し出した。

光に触れたその瞬間マーニャは赤と緑の光に包まれた。

「よろしい、ハルベルト・マーニャ。あなたは火と風の加護を承りました。そして、こちらがあなたの現在の能力です。これからは公爵家に恥じないように人のために尽くしなさい。」

牧師の手からウィンドウのようなものがマーニャに手渡されそこに文字列が羅列していた


ハルベルト・マーニャ(10)公爵家・長女 

レベル:5 

HP:24 MP:55 STR:10 DEF:8 INT:30 AGI:18 LUK:20

魔法:ファイア・ウィンド

加護:火の加護/風の加護

スキル:魔力コントロール


(これは!?まるでゲームじゃないか!表記自体もよく見るし、それにスキルというのもあるのか?!)

マーニャが牧師から受け取るとウィンドウのようなものは消えてしまった。

「今後は念じればいつでも内容を確認できるようになる。お前の父や母のように強く、そして領地の皆のため力をつくすのじゃぞ」

「はい!これよりハルベルトの名に懸け、己を鍛えて参ります!」

「よろしい。では、フォルマ・アルス!こちらへ!」

「はい!」思わず声が出てしまった。

ゆっくりと教壇の近くに移動した。

「それではお主の番じゃ。我らが神よりこの者に祝福を授け給え!」

また、水晶のようなものが発光している。

勇気を出して光に向かって手を伸ばす…と

七色の光が辺りを包み込んだ。

光の波動は広がっていき、水晶のようなものが震えだした。

パキッ

綺麗な音を立てて水晶のようなものは砕けてしまった。

牧師は有り得ないといった表情で俺を見ている。

俺は勝手に出てきた目の前のウィンドウを凝視していた。


フォルマ・アルス(10)伯爵家・次男

レベル:20 

HP:1000 MP:2000 STR:800 DEF:500 INT:400 AGI:300 LUK:5

魔法:ファイア・ウォーター・サンダー・ウィンド・アースウォール・ライト・シャドウ・ヒール

加護:火の加護/水の加護/雷の加護/風の加護/地の加護/光の加護/闇の加護/無属性

スキル:


(な、なんだこれ!!スキルはないけど他には見たこともない数字と魔法が並んでいる!)

牧師とマーニャは驚きの顔を隠せないでいた。

「か、神のステータスじゃ…これは伝説の勇者様ではないか!?た、大変なことじゃ、王へ報告せねば!」

「待ってください!」

そこには、父がきていた。

「と、父さん、なんでここに…」

「牧師様!息子はまだ10歳になったばかりです。もう少しだけ家で過ごす時間をもらえないでしょうか?せめて、魔法学園に入学する12歳になるまでは一緒に過ごしたいのです!」

「バズ…ここまでのステータス…本来ならば一刻も早く国のために奉仕するように伯爵であれば献上するのが当たり前であろう!それに2年という歳月、無駄にできないとは言い切れまい。この国は今窮地に瀕しておるのだぞ!それを分かっておるのか?」

「はい!もちろんであります!先日、長男のフォージャーも国へ奉仕するため軍直属の士官魔法訓練所への転入を決意致しました。しかし、妻のニーリアはそのために衰弱しております。ここで、心の支えであるもう一人の息子であるアルスを直ぐに国へ出すことは大きな負担になります!どうか、ご慈悲を頂けないでしょうか?」

(頭が混乱していた、この能力値にも驚いていたのに、あんなにも荘厳な城を持つこの国が窮地だということ、そして兄がもうすぐ同じ学校ではなく軍に行くことに…)

「バズよ…お前が今まで国のために尽くしてきたことは良く分かっておる、しかし、ここまでの人材を何の訓練もせずに放置しておくのは認められん!少なくとも猶予については国を通じて判断し、通知を出させてもらおう。悪いが知ってしまった以上、わしにできるのはここまでじゃ、すまぬな。」

「牧師様、ご猶予を頂き感謝申し上げます。」

バズ父さんは唇をかみしめていた。

マーニャは目の前の自体に対処できず、ただ見ることしか出来なかった。

「さぁ、マーニャ様、アルス、帰ろう」

父さんに連れられて僕たちは教会を後にした。


帰りの馬車は終始無言だった。本当は聞きたいことがたくさんあったのに声に出すことが出来なかった。

たぶん、マーニャも父さんも同じだ。

マーニャは去り際に

「アルス、いつでも私はあなたの味方だからね。」と言って少しだけ下を向いて馬車を降りて行った。

ハルベルト家のお屋敷にマーニャが到着を知らせると家の中からたくさんの使用人が出てきて、マーニャをあっという間にパーティーの主催席に座らせてしまった。

本来のお祝いごとを思い出すかのように家の中の雰囲気は明るかった。

俺はその日、家に着くと母さんと兄さんがせっかくお祝いの準備をしてくれていたのに

参加する気持ちになれず部屋に戻り泥のように眠ってしまった。


次の日、目が覚めて部屋を出ると両親は深刻な表情で机を囲って話をしていた。

「そんな!フォージャーだけでなくアルスも国へ取られるの?!もう耐えられないわ!」

「俺だって同じだ!まさかアルスが神のステータスを持っているなんて、今だって信じられない…」

「私たちは普通なのに…どうして?」

ここまで聞いて俺は黙っていられなかった。

「父さん、母さん、聞いてほしいことがある!」

「アルス!もう大丈夫なの?」

「大丈夫、それよりも聞いてほしいんだ!」

俺は自分が別の世界から転生してきた存在であること、クソガチャと読んでいる能力について、そして前世の記憶についてなどを必死に話した。

伝わらなくていい、でも俺のせいで2人が苦しむ姿を見たくない、その罪の意識が俺を突き動かしていた。

ひとしきり話した後、母さんが俺を抱きしめてきた。

「なっ…!」

「ごめんねぇ…わかってあげれなくて…何にもわからないのに…でもあなたがうちに産まれてきてくれて本当に嬉しかった…私の息子として…ありがとう…」

正直、殴られてもしょうがないと思っていた、いやむしろ頭がおかしくなったと思われ追い出されることも覚悟していた…

なのにどうして…母さんはありがとうなんて言うんだ…

「アルス…俺も同じ思いだよ。この10年間お前が家で過ごした時間は俺たちにとってかけがえのないものだ。例えお前が俺たちの息子じゃないと言っても、俺たちにとってはアルスとフォージャーが息子であり家族なんだ。」

耐え切れず涙が出てくる。

こんなに涙もろいのかと思う、精神年齢は父さんを超えているだけどどうしても2人の愛の大きさに心の中が暖かくなった。

何にも解決していない、むしろわからないことだらけだけど家族だけは必ず守ろうと心に決めた。

そして、ひとしきり母さんと一緒に泣き終わった後、俺は頭の中のウィンドウにある文字が浮かんでいることに気が付いた。

おめでとうございます!新たに「譲渡」の能力を獲得しました!

(何のことじゃあああああああ!!!)


続く


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