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私的夢十夜  作者: 南ゆう
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第一夜

夢を見た。

あたりは真っ暗で何も見えない。

吹く風が重い。

砂漠か?いや、それにしては土が重い。

徐々に目が慣れ、辺りを見回すことができた。

どうやらここは戦地らしい。

あたりに敵は見えない。

日中は激しい戦闘があったようで、あちこちに蟻地獄のような穴が開いている。

俺は長細く続く塹壕の中にいる。


おい、生き残った者は何人いる。


偉そうな声を響かせた奴がいた。

身なりは俺たちとそう違わないが、声や行動には周囲の人々をひれ伏させようとする威厳がある。

そのうち、私を含めて10人でありますと答えた奴がいた。

威厳を持つおっさんは、明日は厳しい戦いになるだろうが覚悟しておけという内容を、わざわざ抑揚をつけて、人の気持ちを揺らすようにして話す。

なるほどこいつの威厳はペテンからきているらしい。

人を乗せるのが上手いから俺たちを指揮する立場についたんだなと考えていたが、聞いているうちにいつのまにか乗せられしまい、しまいには全員で大声を挙げていた。


三日月のいる場所がだいぶ西へと傾いた。

元々何も見えない暗闇だが闇が一層濃くなったように思う。

ここでは布団どころではない。靴も脱げずに夜を明かす。

冬の寒い頃は指から凍ってゆく。今が夏でよかった。

縦長の空はやけに星が明るい。

俺は名前も知らない星屑を見ながら寝るのが好きだった。

空をじっくり見つめていると時折星が流れる。

昔聞いた話では、星が流れている間に願い事をすると叶うらしい。

馬鹿馬鹿しい話だが、たまには願掛けも良いだろうと、次流れた星に願うことに決めた。


頭上を今までにないほど大きな光の筋が右から左に通り過ぎた。

あまりにも早いせいで幻覚を見ているのかと疑った刹那、訳のわからない衝撃が周りの土を地面から剥がすように競り上がった。当然土の上で寝ている俺や仲間たちはなす術もなく全身を飲み込まれた。

どれくらい時間が経ったのだろう。

目が覚めた俺は辺りを見渡すが何も見えない。

叫んでも仲間の声は聞こえない。

そのうち気力も尽き果て、喉の渇きも抑えられず息絶えた。

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