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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

パニック関連

やまない雨

作者: よぎそーと

 終わる事無く雨が続いていた。

 既に三ヶ月ほど降り続いている。

 その間、晴れの日も何日かはあったが。

 曇った空は延々と水を降り注ぎ続けていた。



 世界各地で増水が発生していた。

 低地は既に水に沈んでいる。

 高知であっても、川の氾濫で孤立した地域が出ていた。

 それらを救助しに行こうにも、簡単にはいかない。

 風も吹き荒れてるので、飛行機やヘリコプターも飛ばせない。

 救助は全く進んでいなかった。



 そもそも救助ができる状況ではない。

 雨による増水は逃げ場を潰していた。

 どこにいても雨の影響は免れない。

 安全地帯などどこにもない。



 単に住む場所が無くなるだけではない。

 三ヶ月も日光がささない。

 主立った耕作地は水没している。

 この年の農作物は壊滅的だと確定している。

 例え雨が上がっても、その後の食糧難をどうするか。

 保存食も足りてないのだ。

 飢餓は確実とみなされていた。



 そこまで待つこともなく、食糧難は深刻化している。

 誰もが何ヶ月分もの食料を確保してるわけではない。

 政府は配給をしているが、それも充分とはいえない。



 そして、配給担当者は配給数をいじって自分の取り分を確保していく。

 避難所では、食料の強奪も行われている。

 力で奪うという単純な方法から。

 みんなで分け合うという嘘をついて、食料を強奪する者まで。

 ありとあらゆる方法で食料の争奪戦が起こっていた。



 果ては殺し合いまで起こっている。

 当然といえば当然の流れだった。

 殺さねば殺されるという状況なのだから。



 かくて、隔離された各避難所で殺し合いが行われ。

 生き残った者達がかろうじて食いつないでいった。

 それすらもほんの一時の間生き延びるに過ぎない。

 避難所の食料もやがては尽きる。

 そこで生き残った者達も終わる。

 終わらない雨に囲まれながら。



 そんな雨もやがては終わる。

 雲が途切れ、日差しがさしこんでくる。

 降り続けた雨は5ヶ月目にして消えた。



 あとに残ったのは水浸しの大地。

 水が引くまで誰も入り込む事はできない。

 その水が引いて、ようやく住処に戻っても、水浸しだった住居は使いものにならない。

 人は居場所を失った。



 それよりも問題なのは食糧だった。

 この年の農作物は絶望的。

 食糧難はまだ続く。

 奪い合いの殺し合いはまだまだ続く。



「来年になれば」

 希望を口にする者もいる。

 今年はもう駄目だ。

 でも、来年になれば好転すると。

 確かに、水が引いて田畑で再び農作物が実ればどうにかなるだろう。

 この苦しみも今年一年で終わる。



 だが、そんなわけもない。

 水没して、流れこんだ土砂だらけになった田畑。

 再び使えるようにするには、整備が必要になる。

 それが来年までに終わるわけがない。



 それに、たとえ田畑がまともに使えたとしてもだ。

 来年が好天に恵まれるという保証はない。

 今年と同じように雨が降り続けるかもしれない。

 逆に、炎天下が続くかもしれない。

 天候がどうなるかは全くわからない。



 晴れ渡った空は、確かに希望を感じさせる。

 だが、希望はあくまで空想だ。

 そうであってほしいという願望にすぎない。

 実際に希望に満ちた日々が待ってるとは限らない。

 最悪の日々がまだまだ続く可能性だってあるのだ。



 げんに、晴天の下で人は殺し合っている。

 生き延びるために、自分に必用なものを奪うために。

 そこに希望なんてみあたらない。

 やむえない事ではあるが、絶望だけがただよっている。



 今日もどこかで殺し合いが行われている。

 天候に振り回されながら。

 大自然はいまだに人類にとって大きな脅威で蟻続けている。

 水ひとつで人類を存亡の危機においやるほどに。



 そんな自然の中で、人は生きていくしかない。

 どれほど絶望にまみれようと。

 絶望と隣り合わせであろうと。

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