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初老転生〜異世界TS転生なんて初老の『おっさん』がするもんじゃない〜  作者: 菊RIN
第一章、始まりの村【まどかside】
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8、私だっ!お前だったのか的なアレ

俺様さん脱村事件からしばらく、まどかは依頼をなるべく受けず、偶に人気の無い荒野に出て魔法の特訓をした。炎、氷、雷、時空……あらゆる魔法を試し、イメージを固めていった。

おかげで収納スキルの【倉庫】が、上限の見えない【異空間収納】に改変された。今なら家でも持ち運べるかもしれない。


まどかの呪いの噂は、かなり落ち着いたもののまだ残っている。顔には出さないが、特に村を出て行ったゴロツキの親達だ。まどかを村から追放すれば、我が子が帰ってくるかもしれない……と考えている者もいるらしい。


(親がそんな心根だから、子供がグレるんだよ)


と言ってやりたい気持ちもあるが、正直これ以上関わりたくないとも思う。


(とりあえずスルーでいいか)




◆ある程度魔法の扱いに慣れてきた頃、ギルドに既視感を覚える知らせが入る。


「た、大変だ!アンデッドの大軍が、町に向かって来てる!」


「ギルマスに報告だ!数は解るか?」


「わからん。辺り一面覆い尽くす程だ。西の洞窟から湧いて来てる!まだまだ増える可能性も!」



ギルドに緊張が走った。すぐさまガルがロビーに出る。


「みんな聞いてくれ!ギルマス、ガルシアの名において、ここに居る全冒険者への緊急依頼だ。

ランクFは、町のみんなの避難誘導、逃げ遅れる者がいないように、細心の注意を払え!ランクE以上は、アンデッドの撃退だ。数も多い、心してかかれ!一人も死ぬことは許さん!」


「「「おぉーーっ!!」」」


なんかギルマスの言葉も一字一句同じような気が……そして目付きが変わる冒険者達。

前回行動を共にした、既に見慣れた闘う男の顔だ。勿論死なせたくはない。


「まどか、行ってくれるか」


「皆まで言うな。承知よ!」


村人の一部からどう思われていようと、この村には世話になったし、好きだ。魔物と闘う理由なんて、それで十分じゃないか……まどかはそう思い、拳を握った。




◆辺りに生臭い匂いが漂う。アンデッド特有の腐臭だ。

カシャカシャと硬いものがぶつかる音、スケルトンだ!


コイツらの攻撃は基本、掴みかかる、殴る。自らの骨を棍棒代わりに使って。

中には投げてくるヤツも居るらしい。

単体ならば冒険者でなくても倒すことが出来る下級アンデッドだが、ここまで数が多いと駆け出しの冒険者達でも苦戦するだろう、命を落とす者もいるかもしれない。


「気を抜くなよ!回り込まれるな!魔術師は後方支援と広範囲魔法による殲滅!ヤツらが怯んだら戦士共、一気に行くぞ!」


なるほどね。見事な連携だ。こりゃ出番ないかもな……


前回同様ガンツが指揮をとっている。こういう所は頼りになるな。前線に出てもスケルトンくらいなら無双だろう。だが……


「ガンツさん、おかしい、コイツら普通のスケルトンじゃない!いつものヤツらより強い!」


「敵対者情報

名称 ハイスケルトン

スケルトンの上位種 特殊な召喚魔法により強化されたスケルトン

浄化、炎系魔法に弱い」


流石アプリさん、その辺の情報は助かるわ。ガンツ達に教えてやるか……


「みんな、コイツらは上位種、ハイスケルトンみたい。気を付けて!」


「「「まどか様ー!」」」


だから様はやめろ。


「ガンツ!コイツらは浄化、炎系魔法に弱い!聖属性、炎系の術士に指示を!」


「なに!そうか、みんな聞いたか!魔術は炎系に限定!町に行かせるなよ!」


「「「おう!」」」


「それからガンツ、コイツらはどうやら、特殊召喚されてる」


「ってことはお嬢、召喚してる奴が居ると?」


ガンツは、まどかの情報を疑う事無く聞いている。おそらく分析系のスキルか何か、あるいは町に来るまでの経験による意見だと思ったらしい。


「あぁ、多分洞窟の中だ。私は洞窟へ行くよ」


「お、おう!だが、お嬢一人じゃ……」


「ガンツさん!我らまどか親衛隊が、まどか様のお供を!」


「要らない。みんなはこっちを片付けて!」


(てか来んなよ!下手にスキル使って巻き込んだらどうすんだよ……)


「は、はい!まどか様!よし。お前ら、まどか様のご命令だ!コイツら殲滅するぞー!」


「(……まぁいいや)みんな!死ぬなよ」


「「「うぉーーーっ!よっしゃ行くぞー!」」」


犇めくアンデッド。輝く炎魔法。声を上げる冒険者達。

会場は正にまどか単独ライブだ!アリーナに花道を作るぞ!


……魔闘士は、その拳に魔力を纏い如何なる者も突き破ると言ったな……

「アプリさん、炎を拳に纏わせることは可能?」


「炎系上位魔法、魔闘士固有スキル併用により、ハイスケルトンに最も効果的な戦闘パターンを構築。これより名称アプリさんは、戦闘補助演算プログラムに移行します」


まどかは脳内に浮かぶ術式に従う。


「よし。発動!炎陣フルスロットル!」


「了。直噴十二バルブエンジン始動、ツインインタークーラーターボ、出力七十二パーセント……」


「ぬぉ!まどか、なんてスピードと破壊力だ!」


スキルの名前は思いつきのテキトーだが、拳に火炎を纏い、後方に小爆発を起こし、爆風を推進力に一撃で敵を突き破る。


まぁ、元の世界で見たアニメの、なんとかバーナーってヤツをヒントにしたんだけど、効果は絶大だな。


あぁ、一応言っておくが、辰巳おれはアニヲタでは無い。元の世界の『まどか』が、アニメ好きなので、握手会での話のネタに、一応全部見ただけだ。

そのうち『まどか』より詳しくなったから、熱く語り過ぎて若干引かれたのは、気のせいだと思いたい……


「見ろ!まどか様が洞窟へ向かって一直線、まるでスケルトン共が、道を開けるように分断されて行くぞ!」


「なんてヤツだお嬢、俺のテストも相当手加減してたってことか……ガッハッハッ!底無しだなぁおい!」


「野郎ども!嬢ちゃんに見とれてんじゃねぇぞ!ギルドの意地、見せたれや!!」


「「「おう!」」」


……よし、洞窟までもうすぐだ。召喚者か……どんなヤツだろうと絶対に許さん!


「一気に元を断つ!!」




洞窟内部、スケルトンに揉みくちゃにされると覚悟していたのに、気配がまるで無い。


「どういうこと?」


中に入って思ったのだが、洞窟という程の広さも奥行きもない。


「でもみんなは、洞窟って言ったよな……」


「ダンジョン情報

マナ反応 一部土魔術使用箇所あります。

同系魔法でレジスト出来ます」


お!アプリさん情報か。だが如何せん、土魔術無いんだよなぁ……

テキトーにぶっ壊してみるか?


「ダンジョン情報補足

物理的破壊は、崩落の可能性あり。危険です」


なんだよ……土魔術じゃなきゃ無理ってことか?


一度戻って土魔術使えるヤツを連れて来るか?

いや、ヘタなヤツ連れてきて、レジスト出来なかったり、最悪俺の職業バレることは避けたい。

どうする、考えろ!


「スキル情報

使用制限が解除されました。EXスキルにより、残留マナにaccess

土魔術 ストーンウォール ダウンロード可能です。

インストールしますか?」


「え?そう言えばなんか、そんなのあったな……よくわからんが、yes!」


「ストーンウォール ダウンロード開始します。……残り二秒……正常にダウンロードしました。続けてインストール中……完了。ストーンウォールは、正常にインストールされました。

EXスキル ロック作動。次回使用可能まで二十四時間です」


「なるほど。使用制限があるのか。だがこれでなんとかなる!」

「レジスト!ストーンウォール!」


仄かに光り、壁が崩れ落ちる


「やっべ!ミスったか?」


洞窟入口が塞がり崩落かと思ったが、壁の奥に地下への階段が現れた。




◆「粗方倒せたが油断するな。残りを殲滅するぞ!」


ガンツが檄を飛ばす中突然の地鳴り。音の出処を辿ると洞窟入口が塞がっていく。


「「まどかー!」「まどか様ー!」」


「お前ら、スケルトン共を殲滅しつつ、お嬢救出に向かうぞ!」


「大変だガンツさん!洞窟前に階段が現れて、スケルトンが溢れ出して来やがる!」


「なにー!くっそー!押し返せ!おそらくその階段の先にお嬢が居るぞ!数を減らしたら、突入だ!」


「まどか様には指一本触れさせん!(オレだって触れたことないのに)」


「親衛隊、行くぞー!」


普段より統率された一団が、洞窟前の階段へ斬りこんで行く。

ただのお調子者だと思っていたヤツらだが、さすがは歴戦の冒険者、上位種とはいえスケルトン如きに後れを取るものでは無い。


とは言え、数による圧力で、階段に辿り着くことが出来ない。スケルトンが正に骨の壁になっていた。


「えぇい!邪魔するなぁー!」




◆階段を降りるまどか。それ程広くない。高校の教室ぐらいだろうか。二歩三歩、足を進める。すると岩陰に人の気配が……見ると頬は痩け、髪も半分抜け落ちたような男が立っている。


「誰?」


「まーどーかーちゃん、だったか?てめぇよくも俺様に呪いをかけてくれたな。今度こそひん剥いてやる!覚悟しろ!」


「だから誰?」


「忘れたとは言わせねぇぞ!その腰のナイフ、俺様のナイフだろうが!」


「忘れた。(ごめん、本当に忘れてた。てか、こんな顔だったっけ?)」


見た目はかなり変わっているが、そこにいたのは忘れもしない、まどかが夜な夜な説得を試みたが(一応説得というていになっている)気を病んで脱村した村長の息子、俺様さん(ジャイって名前だけど、もう今更だよね)だった。


「くぅーっっ!舐めやがって!まぁいい。俺様の新しい力、思い知れ!

マジックアイテム『冥王の壺』サモン アンデッド!スケルトンナイト!」


床に魔法陣が浮かび上がり、ドス黒いマナが渦巻く。そこから三メートルはあろう武装したスケルトンが這い出てくる。


「俺様に呪いをかけたてめぇだけじゃねぇ!弟ばかり贔屓した町のヤツらも皆殺しにしてやる!そうすりゃ俺様の呪いも解ける!行けスケルトンナイト!アイツを蹂躙しろ!」


つまりは思い通りにならない我儘と優秀な弟への嫉妬、まどかにあしらわれた屈辱、そんな心の濁が凝り固まって癇癪を起こしているのだ。


「くだらない。そんなくだらない事の為に町の人達を殺そうなんて……誰だか知らない(記憶に残したくないらしい。まどかの中でそう結論が出たようだ)けど、そのアイテムごと叩き潰してやるよ!」

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