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初老転生〜異世界TS転生なんて初老の『おっさん』がするもんじゃない〜  作者: 菊RIN
第一章、始まりの村【まどかside】
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4、まるで朝のホームルームに転校生的なアレ

「みんな、聞いてくれ。紹介したい人がいる」


ザワついた冒険者達の中、俺を伴ってギルマスが声を出す。程なくザワつきもおさまる。


「今日からウチのギルドの仲間になったまどかだ。テストを見てた者達は解ると思うが、実力は私が保証する。ランクは、Dだ!」


騒然となる冒険者達。ただ驚く者、値踏みするように疑う者、当然だと周りに嬉嬉として語るテストを見ていた者、様々である。


「まどかです!よろしくお願いします!キラッ!」


ライブでまどかがやってたキャッチフレーズの自己紹介をやろうと思ったが、さすがに初老のおっさんには小っ恥ずかしい。笑顔とウインクで精一杯である。それすら恥ずかしいのだけれど……


「「「うおぉぉぉーーーっっ!!!」」」


ギルドが揺れた。地鳴りのような歓声。見覚えのある光景だ。ただその手にはペンライトもサイリュームもなく、剣や斧が持たれているのだけれど……



……Overtureが流れ、ステージに続々とメンバーが揃う。

一瞬の暗転、からの一曲目のイントロ。まどかが叫ぶ。


「みんなーっ!今日も盛り上がって行くよーっ!」


「「「うおぉぉぉーーーっっ!!!」」」


「うりゃオイ!うりゃオイ!うりゃオイ!うりゃオイ!あーーーーっ!よっしゃ行くぞー!!」……



ギルドにMIXが聞こえてきそうだ。こうしてまどかの単独公演……では無く、冒険が幕を開けるのだった。


「ではまどか、一度受付カウンターに行こう。職業を決めてもらわなくては……」


そうだった、後回しにしていたが、今のところ無職だ。ただ、選びたい職業が無いんだよなぁ……


「ギルドの職業選択はね、今のスキルでなれる職業だけじゃなくて、今後目指したい職業、潜在能力に対応する職業も選べるんだよ。まぁ、才能が開花する見込みのない職業にはなれないのだけれどね」


なに?ってことは、選択肢が増えるのか?ワンチャン穏やかな生活が出来そうな職業とか……ないよ、な……


「そういえばまどかは、ナイフを武器にしてるようだけど、ガンツ戦では使わなかったね?」


「ん?あ、あぁ、このナイフは昨日貰ったんだ。よ。まだ使ったことない。です」


「ふむ。得意武器ではないと……他に何か武器を使ったことは?」


「うーん……ペンラ……光る棒みたいなヤツかな?キン……なんとかブレードって言ったかな?あはは……」


「ふむ。ブレードってことは、剣の類なのかな?光る?マジックアイテムなのか?……ま、まさか、まどかは魔剣士なのか?……この強さ、ありえない話では無い!」


あー、勘違いだよギルマス。ペンライト振ってただけだよ。魔剣なんか使えるわけねぇじゃん……


「ま、まぁ、カウンターの水晶に触れてみれば解るよ。本当に魔剣士なのか、そうじゃ無いのか」


「ねぇギルマス、魔剣士って?」


「あぁ、魔剣士とは文字通り魔剣を扱う剣士だよ。熟練の魔剣士に至っては、普通の剣にでも魔力を纏わせて闘える。ただ普通の剣では魔剣士の魔力に耐えられなくて、すぐに壊れてしまうって言ってたよ。うちのギルドのエースが魔剣士だ。言わば伝説の職業だね。ギルドの誇りだ。なりたての魔剣士でも、ランクは、B以上だよ」


伝説ねぇ。まぁ俺にはかんけーねーな。多分。とりあえず水晶さんに、俺の職業の幅を見せてもらうとするか。


「ではまどかさん、こちらの水晶に触れてください」


あれ?執務室ではもう少し感情があったと思ったけど、やはりガイアさんは淡々と仕事するね。


「はい。触れればいいのね」


淡く光る水晶。台座に埋め込まれている石版の様なものに文字が浮かぶ


魔法使い、魔導士、武闘家、僧侶、戦士


賢者、盗賊、魔闘士、騎士、狂戦士……


さすがに魔剣士はないな……


「なにぃー!ま、魔闘士だとー!」


「ん?なにか問題でも?」


「魔闘士ってのはなぁ、魔剣士を無手でやるようなもんだ!」


ギルマスの言葉遣いが変わった。多分こっちが素なんだろうな。

立場上、丁寧な口調にしてるんだろ。解るぜ、その苦労……


「……あ、失礼。少々取り乱しましたね。つまりはその拳に魔力を纏わせて、どんな剣とでもヤリ合える、下手をすれば、そこいらの剣など弾き飛ばしてしまう程の拳技、その拳に貫けぬものは無い!とまで言われる職業だよ」


ギルマス、立ち直り早ぇな。


「という事は、魔闘士になった途端、ランクBってこと?」


「そうだね。こちらがいくら隠しても、相手は間違いなくそう思うだろうね。相手が有象無象ならいいけど、貴族や王族、土地の有力者なんかだと、懐に置いて役に立てようとか、出世の手駒に、領地拡大の戦力に、あの手この手で懐柔してくるだろうね」


あー、職業魔闘士ですよーなんて言ったら、向こうから厄介が寄ってくるのか……


「しかしね、魔剣士や魔闘士のようなハイクラスの職業を選択すれば、それに応じた基礎能力の底上げをしてくれる。新たなスキルも付属することがあるんだよ」


なるほどね。チート付きってヤツだ。名前からして、肉体強化系のスキルくらい付きそうだな。まどかの容姿がゴリマッチョになるのは勘弁して欲しいが、傷が付かなくて済むなら、それもアリかな……


「あのー、ちょっと相談なんですが、一応ここで魔闘士にしといて、表向きは武闘家とか、ちょっと誤魔化すこと出来ませんかねぇ……?なるべく本気出さないようにするので……」


「うーん……出来ると言えば出来なくもないけどね。他の国や地域のギルドに向かう際、ウチが発行するギルドカードを提示しなくてはならない決まりなんだよ。ギルドカードの偽装は重罪、発行したギルドにも影響がある。ウチとしては、困るねぇ……」


「その時はその時で考えます。勿論ギルドに迷惑かけないように、ちゃんと提示した上で内密にしてもらうように交渉するとか、そんな感じで……どうかなぁ?チラッ……」


秘技、まどかの上目遣い!(中身おっさんだけど)破壊力半端ないはず……


「あ、う、うん、そうだね。じゃ、じゃあその時は自己責任ということで。まぁ私もその時は、他のギルマスに連絡して、交渉するなり、脅すなり、上手いこと話を着けよう。なぁに、アイツらの弱みの二つや三つ、この私にかかれば……」


思った以上に効果があったな。ギルマス、目がハートだぞ。俺おっさんだけど……


「では決まりね。職業、魔闘士。決定!」


輝く水晶の台座から、一枚のカードが出てくる。


所属 ツインホークス

冒険者ランク Bクラス

職業 魔闘士

名前 まどか

マスターの名においてこの者の身分を証明する。

ツインホークス ギルドマスター ガルシア=クロムウェル


「これで正式にギルド所属の冒険者です。おめでとうございます。まぁ、先程ギルマスがランクDと発表したので、表向きはそれで構わないかと思います。バレてもギルマスが嘘つき呼ばわりされるだけですので」


ガイアさん、何気に怖い……




◆ギルドには、宿泊施設がある。

寮とまではいかないが、冒険者達が仮眠をとるくらいは出来るらしい。

村人Aの家にいつまでも居候出来ない(本人はいいと言ったのだが、やはり気が引ける。おっさんだし、コンプライアンス的に)俺は、住処がない事を伝え、安宿でも紹介してもらおうと思って居たが、ギルドに寝泊まりするのもアリかな?


「とんでもない!こんな野獣の檻にまどかみたいな可愛い子を寝泊まりさせるなんて、寝込みを襲う未来しか見えない!」


と、ギルマスが書庫にしていた空き部屋をまどかに提供(ガイアによって無理矢理)してくれた。

ギルドに入り浸ってる冒険者をかき集めて、書類や資料を運び出し、補修から掃除、ベッドやテーブルの設置、瞬く間に完了した。


「なんか、ゴメンねみんな」


「お安い御用ですまどか様!なにかありましたら、我らまどか親衛隊にお任せ下さい!」


「さ、様?親衛隊??」


後で聞いた話だが、ギルマスが心配していたのは、寝込みを襲われるであろうまどかよりも、手を出そうとして片っ端から潰されるであろう冒険者達だったらしい。


ギルドとしては、大事な戦力である冒険者達をまどか一人に蹂躙されることは避けなければならない。

そこで、自主的に冒険者の有志で結成された、まどか親衛隊(非公認)に目を付けた。


まどかを守り、部屋に野獣共を近づけないように、ギルマスが直接指示を出したのだ。

これにより、まどか親衛隊は公認となった。俺に無断で。

(ってか、俺に潰されるってなんだよ!こんなに争い事が嫌いな俺に……暴力反対)


ただ、この後少し揉めたらしい、一つは誰が隊長になるか。

これは円満に殴り合いで決まった。

そういえば部屋の片付けの時、みんなアザだらけだなぁ……と思ったけど。

まぁ、冒険者など、傷やアザをつくるのは、日常茶飯事だと思っていたのだが、まさか隊長を決めるバトルロイヤルだったとは……


もう一つは、入隊希望者が押し寄せたこと。

少しでもまどかに近付きたい!そんな下心丸出しの冒険者達が溢れかえったらしい。結局

「立ち上げメンバー以外認めない」

という、どこかのヲタ界隈みたいな理由で、却下されたようだ。

まぁ、しばらくは反感をかうだろう。どこかのヲタ界隈みたいに。


俺としても、勝手に立ち上がった親衛隊など興味ないし、むさくるしい男共と付き合う気もない。

まぁ、穏やかな生活に多少近づけるなら、このまま利用するけどね。



……しかし、仮初の穏やかな生活も、露と消える知らせが入る。


「た、大変だ!ゴブリンの群れが、町に向かって来てる!」


「ギルマスに報告だ!数は解るか?」


「おそらく百体、南の岩山方面から湧いて来てる!まだまだ増える可能性も!」



ギルドに緊張が走った。すぐさまガルがロビーに出る。


「みんな聞いてくれ!ギルマス、ガルシアの名において、ここに居る全冒険者への緊急依頼だ。

ランクF、Eは、町のみんなの避難誘導、逃げ遅れる者がいないように、細心の注意を払え!ランクD以上は、ゴブリンの撃退だ。数も多い、心してかかれ!一人も死ぬことは許さん!」


「「「おぉーーっ!!」」」


ちょっと感動したね。ギルマスの一言で目付きが変わる冒険者達。

普段鼻の下伸ばしてhshs言ってるヤツらが、闘う男の顔だ。

ギルマスの男気も感じたし、せっかく知り合えた仲間だ。死なせたくはない。


「まどか、力を貸してくれるかい?穏やかな生活を邪魔して悪いね」


「承知よ!」


「あぁ、それからコレ。ゴブリン相手に素手じゃ、何かと問題だろう。私からの入隊祝いだ」


ギルマスは革の指貫グローブを差し出す。


「行ってくる!」


ちょっと胸熱じゃねぇか。仕方ない、穏やかな生活は、もう少し先だ……

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