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初老転生〜異世界TS転生なんて初老の『おっさん』がするもんじゃない〜  作者: 菊RIN
第一章、始まりの村【まどかside】
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3、入会審査的なアレ

「マスター!美味しかったです!ね?まどか」


なるほど……わざわざ着替えて来たのだろう、サイズの合ってない料理人風の服、はみ出すゴリゴリの筋肉、

無数の傷跡、こんな不自然なゴリマッチョ、料理人であるはずがない。コスプレにしても酷い。


俺は元から、駆け引きだの、腹の探りあいだのは苦手だ。得手不得手とかではなく、生理的な意味で。理屈捏ね回すヤツ、言い訳するヤツなんかは、どうも仲良くなれない。


「はじめまして、まどかです。よろしくね、ギルマス」


「ははは、やはりバレますよね。冒険者ギルド、【ツインホークス】のマスター、ガルです。よろしく、まどか」


「ちょ、ちょっとまどか、気付いてたの?」


「貴女がごはんに誘ってくれた時からね。てか、これで気付かない方がどうかしてるでしょ。まぁ、人を見る目と、嘘を見抜くのは得意だし、人生経験の差かな?」


「なによ、人生経験って、あんまり歳かわんないでしょ?」


あ、そうだった。今の見た目はまどかだ。たしか、17歳だったかな?俺の三分の一じゃねぇか。


「ははは、なるほど。普通の女の子が経験する以上の事を乗り越えて来たようだね。いや、ギルマスとして冒険者を数々見てきたワシの勘なのだがね。まぁ、その辺の事情などは聞くまい。それがギルドの、冒険者への礼儀だ」


(ナイスフォローだ!ギルマス!)


「ま、まぁ、そんなとこかな……」


それから少しガルと話をした。冒険者というのは、それぞれ事情を抱えてるヤツらも登録しているらしい。


要はギルドってのは、それぞれが持つスキルを人の役に立つ方向に使う為の組織って意味合いがあるのだろう。


使い方を間違えれば、犯罪やテロ、ヘタすりゃ国を滅ぼす力にもなる。決して野放しには出来ない。その力を人々の幸せのために使う。それがギルドの本質なのだ。


「……と、まぁ登録したからと言って、何かを強制する訳じゃない。ギルドに依頼された仕事も、受けるかどうかは冒険者自身が決める事だ」


「わかったよ、そういう事なら私もギルドに登録しよう」


「そうか!大歓迎だ!……と言いたいが、まどか、君は可愛い」


「……なっ?」


突然なに言い出すんだコイツ……ロリコンか?俺の女になれ!とか言い出すんじゃねぇだろうな?


「確かに、可愛いは正義だ!その破壊力、ある意味武器だろう。だがその可憐な少女が冒険者としての力量があるのか?そこは確認せねばなるまいよ」


「どういうこと?」


「明日また来てくれないか。ギルド入会試験をする。ウチも冒険者の素性を保証する以上、誰でも受け入れる訳では無い。見極めさせて貰うよ。色々ね」


「……なんか、いやらしい……」


「……ギルマス、サイテー」


「へ?あ、いや、決してそういう色々じゃないよ?」


「まどか、気を付けてね。変なことされそうになったら、『助けてー!』って叫ぶんだよ?」


「ちょ!ちょっと!誤解だよ!あくまで冒険者としての資質を……」


「いーや。あの目は狙ってる。女の勘よ。間違いないわ」


俺は自分を抱きしめるポーズをとり、震えて見せた。周りの客達も、訝しげな目で見ながら、コソコソ話している。


「ち、違うよ!ホントに。じゃ、じゃあ、明日ね!私も忙しいから、もう行くよ?」


ガルは椅子に足をぶつけながら、慌てて奥へ引っ込んだ。




◆翌日、ギルドの受付カウンターに俺は居た。


腰にはナイフ。昨日俺様さんから拝借したやつだ。

ギルドの造りは、俺の記憶の中では、運転免許試験場に近いかな?

いくつか窓口があって、ホール内には人がごった返してる。みんな冒険者なのだろう。


さっきから視線を感じる。と言うより、ほぼ全員に見られてる感。

そうだよな、まどか可愛いからなぁ……俺でも見るよ。ガン見だよ!ほらそこ!hshsしてんじゃねぇ!


受付のお姉さんは、無表情だ。淡々と仕事をこなすタイプなのだろう。おかげで試験場感が二割増だよ。


「本日は、どのようなご依頼ですか?」


「いや、ギルマスに呼ばれて来た。試験を受ける」


「え?試験って……入会テストですか?そのような軽装で……怪我しますよ?」


と言われてもなぁ、これしか服無いし、正直まどかの容姿にゴツゴツの防具など着せたくない。アイドルにとって、ステージ衣装こそ戦闘服なのだよ。ここは譲れない!


でもまぁ、傷も付けたくないし……今後考える必要はあるな。


「今日は、これでいい。です」


こちらに来て、多少は言葉遣いにも気を使っているが、どうも素が出てしまう。これはまどかのキャラ設定とか考えて、なりきるしかないのかもな……


「おい姉ちゃん!ギルドナメてんのか!」

「まぁ、怪我をしたら、私が優しく介抱して、なんなら嫁にしてあげますよ。フフッ」

「生きて帰ってこれたらな!ヒャッヒャツヒャッ……」


いかにもな三人組。どうやらパーティを組んでいるのだろう。ぶっちゃけめんどくせー。スルーだスルー。


「騒がしいな!ちったぁ静かに出来ねぇのか!」


入って来たのは、大柄の男。短い角、赤みがかった皮膚、肩に担いだトゲトゲの金棒……これで虎柄のパンツなら完全に節分の鬼だ。

豆ぶつけてやりたい衝動に駆られるわ。


「試験官のガンツだ。まどかってぇのはオマエか?」


ガンツ。オーガ種。HP450 MP200

え?俺より弱くね?防御力は高そうだけど……


「テストってぇのは簡単だ。この俺に傷一つでも付けれたら合格。おめぇが死んじまったら不合格だ。まぁ、戦闘不能くらいで止めといてやるがな」


あー、逆だよ逆。手加減難しいなぁ……うっかり殺したらどうしよう……


「本気で掛かってこい!」


いや、ダメだって!俺の本気じゃ、たぶん受け止めきれないって!


「ホントにいいの?痛かったらゴメンね。死なないでね?」


「はっはっはっ!気の強いお嬢ちゃんだ。俺を倒す気でいやがる。まぁ、それくらいじゃないと俺に傷なんか付けれんだろ。よし、訓練場に来いや」



訓練場は体育館程の広さだろうか、石の床に石壁、床には魔法陣が書いてある。障壁を張っているのだろう。


「いつでもいいぞ!掛かってこい!」


ガンツと俺の距離は約十五メートル。金棒を片手でブルン!と振り回し肩に担いだ。


「ガンツさーん、顔だけはダメだよー。後で嫁にするんだから」


はぁ、まだ言ってら……アイツもシメとかなきゃかな……いやいや、暴力反対。


「んじゃ、行くよ。もっかい言うけど、死なないでね」


「さっさと来いや!」


「ふぅ……知らないからね。せいっ!」


「ドゴーーーン!!……げふっ……」


一瞬で懐に飛び込み、腹への下段突きでガンツは吹っ飛ぶ。石壁にヒビを入れながら激突、そのままドサリと倒れ、動かなくなった。


「へ?」「え?」「まぢ?」「……」


「大丈夫?死んでない?」


敵対者情報 戦闘不能です。


あ、アプリさん、死んでないよね?


生命反応確認。反撃の可能性0% トドメをさしますか?


イヤイヤ!出来れば回復してあげようよ……


回復魔法 メディックを発動。敵対者のHP100回復しました。




◆一時間後


「イヤイヤまいった。ガル、このお嬢ちゃん、間違いなく俺より強いぞ!」


「ガンツ、君がそれでは困るんだかね……それから一応ギルマスと呼んでくれないかな。せめてギルドの中では」


「いいじゃねぇか、この執務室にゃ、俺とお前とガイア、あとお嬢ちゃんしかいねぇんだから」


「やれやれ……ガンツは相変わらずですのね」


校長室っぽい重厚な机、資料が整理された書棚、地味だが洗練された調度品……今俺が居るのは、ギルマスの執務室だ。現在、俺を含めて四人が居た。


ギルマスのガル、教官のガンツ、もう一人は受付に居たお姉さん、ガイアという名前らしい。無表情で淡々と仕事をこなしていたカウンターの姿と違って、緩やかな笑を浮かべている。


「まどかさん、実はこの三人、元々は、冒険者のパーティでしたのよ」


なるほど。ガイアさんもなかなかの強さだ。HPは150程度だがMPは250オーバー、後方支援と魔術系なのだろう。

それが今ではギルドを立ち上げて、それぞれギルマス、試験官兼教育係、受付兼秘書といったところか。


「さてまどか、君の実力はわかった。いやもしかするとまだわかってないのかもしれないけどね。それ程に強いのは確かだ。危険な程に……」


おいおい、危険だから通報とか、今のうちに排除とか、そういう流れじゃないだろうなぁ?このギルマス、見た目は脳筋なのに何考えてるのか読めねぇ……


「だけど、ウチのギルドの主戦力になるのは間違いないだろうね。どうだい?登録してくれるかい?」


ん?拒否権もあるのか?穏やかな生活が戻って来るのかね?


「まぁ、これだけの強さを示したんだ。ウチに登録しないのならば、今後様々な厄介事に巻き込まれるのは、目に見えてるけどね」


軽い脅しキター!なんだよ!遠回しに逃げ道塞ぎやがって!曲者だなぁギルマス。


「これでも一応名は通っているからね。ここのギルドのメンバーだと解れば、ヘタに手は出してこないと思うよ」


「わかったよ、登録するよ!穏やかな生活でひっそり暮らしたかったのに……」


「ははは、穏やかな生活は無理だろうね。良くも悪くも君は目立ち過ぎる。だが歓迎するよ!まどか、我がギルドへようこそ!」


やれやれ、やはりこの流れは止められなかったか……


「となると問題なのは、まどかさんのランクですわね……」


「ランク?」


「えぇ、冒険者にはランクがあるのよ。AからFまで。ちなみにガンツは、Cクラスよ。Aより上もあるのだけれど、そこは考える必要はないわ。Aでさえ大国を滅ぼす力って言われてるんですもの」


あぁ、自然災害クラスね。所詮交通事故クラスの俺には、かんけーねーな……それより上があるのか?会いたくねーな……


「ウチのギルドのトップでもBクラスなのよ。Aの壁は、高いわ」


「そこなんだよ。基本は新人のランクはF。稀にテストで実力を認められてEというのがギルドの決まりだ。しかしまどかがガンツより強いとなると、実力はBクラスということになる。

入ったばかりのお嬢ちゃんがいきなりトップと並ぶクラスというのは、他の冒険者も納得はしないだろう。ガンツも若手の指導者という立場もある。そう考えるとDクラスということになるのだが……」


「おい、ガル、このお嬢ちゃんがDってこたぁねぇだろ?」


「ん?いいよそれで。よくわかんないし」


「そうかい?まぁ本人がいいと言ってる事だし、まどかのランクは、Dということで。先ずは様子見だろうね」


「では、他の冒険者にもそう伝えますね」


「いや、せっかくだから、私が皆の前で発表するよ。ギルド創設以来の、特例中の特例だからね」

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