表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初老転生〜異世界TS転生なんて初老の『おっさん』がするもんじゃない〜  作者: 菊RIN
第一章、始まりの村【まどかside】
10/27

9、無駄無駄無駄無駄的なアレ

「出来るもんならやってみろ!俺様の全魔力を注ぎ込んだスケルトンナイトで捻り潰してやる!」


カシャカシャと音を立てて、スケルトンナイトが動き出す。動きは鈍そうだが、剣と盾、鎧まで装備している。


「一気に行くか……」


まどかは拳に炎を込め、スケルトンナイトの懐に潜り込む。


「せぇいっ!」


「ガイーン!」


「なにっ?早いっ!」


スケルトンナイトの盾に阻まれ、剣による攻撃を受ける。


「ヒュン!ヒュバッ!シュン!」


連続の斬撃をギリギリで躱し、壁際まで距離をとる。


「あっぶねぇーっ……でも、手がないわけじゃない。伊達に格ゲーにハマってたわけじゃないってね!!」


「ひゃっひゃっひゃっ!どうしたぁ?もう追い詰められてるじゃねぇか!とどめだまどかーっ!」


スケルトンナイトの横薙ぎの一閃!まどかはジャンプで躱し、上から火炎魔法を放った。


「ファイヤーボール!」


スケルトンナイトは、剣と盾を交差して防ぐ。


「無駄だぁ!当たらなければどうということはねぇぞ!」


「それは囮だよ」


着地と同時に壁を蹴り、回転しながらスケルトンナイトの膝に向かって踵落としを放つ。勿論足に炎を纏わせて。


「そりゃー!」


「ガキッ!バリバリバリ!ズッズーン!」


スケルトンナイトの右膝から下が砕け、そのまま倒れ込んだ。その隙を逃さず左の脛を踏み砕き、立てないようにする。


「仕上げはやっぱりパンチの連打だよね!」


ケン○ロウかジ○ジ○か?百裂なんちゃらの如くオラオラとスケルトンナイトを砕きまくった。粉砕ってやつだな。


スケルトンナイトは、光りの粒子になり霧散していった。


「ばっ、ばかな!スケルトンナイトだぞ!小娘一人に倒せるはずが……」


「見てなかったの?今目の前で倒したじゃん」


「そ、そんな……」


「いいからいっぺん飛んでけ!」


「ドフッ!ぐぉっ!!バキバキバキッ!!!」


下から蹴り上げる。俺様さんは後ろの階段を段上へと吹っ飛び、出口を塞いでいたスケルトンの壁を突き破る。


「お、出口が出来たな。良かった良かった」


ふと足元を見ると、ネックレスが落ちている。

小さな壺のチャームが付いた、シルバーのネックレス。


「ん?これがマジックアイテムなのか?」


「アイテム情報

名称 冥王の壺

アンデッド召喚アイテム。込めるマナの量により、上位個体も召喚可能」


おや、アプリさん。ってかさっきスケルトンナイト出た時、情報くれなかったよね?圏外だったの?


「……何を言っているか解りません」


「……はぁ。なんか受け答えが如何にもアプリだな……まぁ、ネックレスくらいなら『まどか』の邪魔にはならないか……これは貰っとこ」




◆「くっそー!スケルトン共が邪魔で中に入れん!魔術ぶっぱなして、まどか様に被害があってもダメだ」


「よし、俺が突っ込む!みんな退いてろ!」


「ガンツさん!」


「行くぞ!うぉーーーっ!」


「ガッシャーン!へぶっ……」


何かが階段から飛び出し、ガンツにぶつかった。スケルトンの壁に穴が空き、中から誰か出てくる。


「終わったよー。って、ガンツ、大丈夫?」


「な、何かが飛び出して来やがって、肋が何本かいっちまった……」


「た、大変だったね。中にいたヤツの攻撃かな?……あ、あとは、私らで片付けるから、休んでて、うん。は、はは……」

(やっべー、絶対俺のせいじゃん!)


「す、すまん……まどか、たのむ」


「さ、さあ、元は潰したから、残りのスケルトン片付けるよー!」


まどかは先頭を切って駆け回り、スケルトンを殲滅した。決して自分の過ちを誤魔化すとか、ガンツが気付く前に勢いでさっさと終わらせたかった訳では無い。無いったら無い。



◆所変わってギルドのホール。

多少の怪我人は出たものの、誰一人死ぬこともなく戻ってきた。疲労困憊、だが皆達成感でどことなく笑顔である。


ガンツもガイアの治癒魔法で肋は治っている。痛みと多少の違和感は残っているみたいだが、一晩寝れば大丈夫だろう。


「みんなご苦労だった。全員無事帰って来てくれて、ありがとう。依頼達成だ。報酬も出すぞ!」


「「「おーっ!」」」


「それからまどか、報告が聞きたい。執務室に来てくれるかい?」


「はいよ」



ギルマスの執務室、ソファに座り、いつものお茶を飲む。香り高いお茶が心を落ち着かせてくれる。


「さてまどか、聞かせてくれるかい?」


「原因は、マジックアイテムだった。どっかのゴロツキが町への逆恨みで発動させたみたい」


まどかは一通り、事の顛末を報告した。一応俺様さんの事は伏せておいた。だがギルマスは、首を捻っている。何か引っかかっているらしい。


「……ふむ。なぁまどか、ただのゴロツキの逆恨みにしては、規模が大きすぎるとは思わないかい?」


「ん?そう言われれば……でも限度がわからずやらかすバカって、どこにでもいるし」


「そのマジックアイテムは、回収したのかい?良ければ見せて欲しいんだが……」


まどかはネックレスを渡した。ギルマスは机の引き出しから水晶を出し、ネックレスをかざしている。この水晶には、鑑定の能力があるらしい。


「なるほど。わずかだけど、精神支配系の魔術の残渣があるね。もう効果は切れてるけど。それに、これ程のアイテムをただのゴロツキが手に入れるのは、厳しいと思うよ」


「凄いアイテムなの?」


「あぁ。国宝級と言っていい。ゴロツキはスケルトンを大量発生させたけど、高位の魔導士が使えば、冥界の王でさえ呼び出すことが出来る。ただコントロール出来ずに暴走する可能性が高いがね」


「冥界の王だって!そんなのが暴走したら、この町どころか、国が滅ぶんじゃない?」


「そうだね。まぁ、そこまでのマナを込められる魔導士は、滅多にいないけどね。そのゴロツキも、スケルトンナイトが精一杯だったみたいだしね。まどかも使い方さえ気を付ければ、中々使えるアイテムだと思うよ。相当レアなアイテムだしね」


そう言ってネックレスを返してくれた。どうやら戦利品扱いで、まどかに所有権があるらしい。


「それよりも、精神支配系の魔術残渣が、今回の件の鍵だと思うんだよね。入手困難なアイテムに精神支配か」


「……という事は、これをゴロツキに渡して、裏で操ったヤツがいると?」


「うん。そう考えた方が良さそうだね。ゴロツキに接触してきたヤツが居ないか、こちらで調べてみよう」


「ん」


「ところで まどか、今後はどうするつもりだい?」


「とは?」


「いやね、まどかは異国から来たのだろ?ウチとしては町に残って欲しいのだけれど、何か目的があって旅をしてるんだったら、無理に引き止めるのもアレだからね……」


(異国……ってか異世界だけどな……でも異世界から転生してきました!なんて言っても、信じないだろ?)


「目的ねぇ……その目的を探してるっていうか……多分 私にしか出来ない事があるみたい。今はそれが何か探してる」


こんなフワッとした答えでいいのか?だがギルマスは、しばらく考えこんでる。まどかとしても、そこまで考えがまとまっている訳じゃない。

むしろ何をすればいいか、何処に行けばいいか、見当も付かないんだよな……曖昧な答え過ぎて、逆にギルマスが深い意味に捉えたらしい。しばらくして……


「まどか、帝都に行ってみないか?」


「帝都?」


「あぁ。今この国は不安定な状態でね、現皇帝が病に倒れて、次期皇帝候補が争ってるんだよ。今はまだ水面下の争いだけど、いつ内乱が起きても不思議じゃない。

基本ギルドは、戦争には不参加で権力の及ばない組織なんだけど、国が滅ぶような事があると、ギルドも立ち行かなくなってしまうからね……」


「だからって、私が行ったところで、国がどうこうなるわけが……」


「うーん、そうかもしれない。でもね、この国の人間じゃないまどかから見て、何が正しいのか、何が民の幸せに繋がるのか、その目で確かめて欲しいんだよ」


「……確かめるねぇ……まぁ、見てくるだけなら……」


「そうかい!まぁ、旅のきっかけだと思ってくれ。その途中でまどかの探してる何かが見つかるかもしれないよ?先ずはこの国を見て、感じて、思うままに動けばいいと思うよ」


こっちの世界に来る時も、そんなこと言われた気がするなぁ……とりあえず行き先だけは決まった。今はそう考えることにするか……


「わかった。そうさせてもらいます」


「ん。それじゃあ旅の支度にも何かと必要だろう。今回の依頼の報酬だ。少し色を付けておいたよ」


「ありがとう。んじゃ明日買い出しにでも行こうかな……」


「そう言えば、まどかはここまで旅をしてきたにしては、持ち物が少ないねぇ……無駄を省く主義なのかい?あ、いやいや、聞くのはルール違反だね。それならまず、収納用のマジックアイテムを買うといい。この町のアイテムは優れものだよ。手のひらサイズでも、テント毛布食料くらいは平気で入るよ」


まどかはギルマスから、金貨百枚を受け取った。金貨と銀貨って、どう違うんだ?未だに価値観と物価がピンとこないが……まぁ路銀にはなるだろう。




◆翌日。早朝から西の洞窟に来ている。事件の調べ……という訳ではなく、旅立つ前にスキルと魔法で出来ることの確認をしたかったのだ。


アプリさんによると、魔法には基本的な術はあるが、本質は「イメージの具現化」らしい。自然現象などをイメージし、そのエネルギー量に見合うマナを使用する事により、再現する事が魔法の真骨頂なのだそうだ。


「という事は……この前収得した土魔法を使って山小屋的なやつをイメージすれば……」


「ゴゴゴゴ……」


「うん。なんとか出来たな。マナはそれ程減ってない。土壁というか、石壁というか、雨露をしのぐことは出来そうだな。テントは買わなくてよさそうだ。

テーブル、椅子は勿論、かまども出来るし、火も着けれる。鍋や食器、薪くらいあれば生活出来るか。ベッドも作れるが、さすがに硬い」


誰に話すでも無く独りごちるまどか。


「まてよ……水魔法で水を出し、表面をマナの膜で覆えば……ウォーターベッドも出来るじゃん!毛布があれば他は必要ないだろう。街中ならば宿もとれるが、道中野宿はしなくて済むな。っていうか、宿も必要ないってことか!」


ニヤリとするまどか。


「収入が不安定だからな。節約するに越したことはない!自炊も割と得意だし、なんと言っても俺のメシは美味い!(自画自賛)」


「なんか、RPGで魔法って言ったら戦闘能力って思ってたけど、こんな使い方もアリなのかね?生活魔法とでも言えばいいか?元嫁には生活力がどうとか言われた事があるが、今や生活力有りまくりじゃん!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ