表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画  作者: ゆいレギナ
最終回 死にたくなかった死神くん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/34

29話「リア充の常識は非リアの非常識」


 ちなみに、橋元くんは前々から私の誕生日を知っていた様子。

 地元の駅で橋元くんと別れてから、その口の軽い相手に『なんで人の誕生日漏らすかな』とメールすると、『来週の土日は予定空けておいてねー』とトンチンカンの即レスが返ってきた。


 もう知らん。勝手にしろっ!


 誰もいない静かすぎる家に帰り、私はそのままお布団にダイブする。電気も着けない。だって、余計に寂しくなるだけだもん。


 うん……疲れた。明日の朝にシャワー浴びればいいや。スーツがしわになるのなんか今更だし。明日も仕事だからね。このまま寝よ。なんだったら顔だけ洗っていけばいい。今日は寒かったし。イケるイケる。


 だって、もう口うるさいの、いないんだもん。

 スーツ脱がせてくれてさ。お風呂用意してくれてさ。お茶漬けを作ってくれたりさ。そんなイケメン、もういないんだもん。


 ゲームやる気ないから、課金してないの。だからいつもよりはお金も残っているけど……それでも、自分でお昼におにぎり作ってみたんだ。すっごく不味かったけどさ。


 しかも、お父さんだったとか。お父さんとか……思い返すだけで恥ずかしい。そりゃあ情緒も不安定になりますよちくしょー。

 てか、なんでミハエル様に似ているかな。あれか? ミハエル様に似ているんじゃなくて、ミハエル様があっちに似ているのか? 父親の面影を感じて、ミハエル様推しになったとか?


 わーまじか。ちょーファザコンじゃん。きもちわる。我ながら、きもちわる!

 ……なんて考えてたら、どんなに身体が重たくても、寝れないよね。


「はあ……」


 今何時なんだろ。リッキーの指すら見えない。

 それは暗いからだろうか。それとも私が泣いているからか。

 お月さまの明かりが目障りだった。それなのに、誰もカーテンを閉めてくれない。




「あーなるほど。運転ねー。それは盲点だったわ」


 そして、給料日二日前のお昼休み。今日も『昨日はどうだったの?』と津田さんに連行され、貴重な一時間が費やされることになりました。


 しかし、報告そうそう、


「それで? 橋元くんからデート誘われた?」


 褒めてと言わんばかりにルンルンしている津田さんに、私は嘆息を返す。


「なしてそーなる?」

「だって、誕生日近いねってなったんでしょ? だったら、一緒にお祝いしようって流れになるじゃん?」


 いや、なるじゃん言われましても。そんな世界の常識ちっくに言われても、それはリア充の常識。非リアの私には非常識。


 私がモグモグと食パンにハムを挟んだだけのもの(サンドイッチとは言わない。くっつかないから。なんでだろう?)を食していると、返事がないことを気にせず津田さんは話し続ける。


「で、進展どうなのよ? そろそろ告白されそう?」

「だから、ないでしょ」

「そうかなー。橋元くんまんざらじゃないと思うんだけどなー」


 しつこいなぁ。

 でも……そこまで言われちゃうとか、ちょっぴりだけ想像しちゃうわけで。

 ううん。でも、やっぱないや。

 私は言った。


「たとえばさ……自分の半生が誰かにずっと観察されて、どっかで好き勝手言われてたらどうする?」

「なにそれ? 盗撮とか?」

「そんな感じ」


 私の突拍子もない質問に、津田さんは色の落ちた唇を「うーん」と尖らせる。

 そして、拳を握った。


「うん。とりあえずぶっ飛ばすね!」


 でーすーよーねー‼

 やっぱり、津田さんとは仲良くしちゃいけないなぁ、とベンチを立とうとした時だった。


「でも案外、問題ないかも」

「へ?」


 コンビニの立派なサンドイッチをモグモグごっくんしてから、津田さんは言いのける。


「わたし、何も恥ずかしいことしてないし」

「……婚約破棄も?」


 日頃の下世話な発言は、という言葉は呑み込んで。

 でも言ったとて、津田さんの「もちろん!」という答えは変わらない気がする。怒られそうではあるけれど。


「あ、わたし新しく彼氏出来たよ。今度は同い年のSE。ゲーム好きらしいからさ、今度紹介するよ」

「遠慮するよ」


 あっけらかんと話を切り替えくる津田さんに反射対応した時だ。「御手洗さん」と声をかけてくるのは、お腹が余計に丸い佐藤課長代理。


「せっかくのお昼休みにごめんね。転属の件、どうする?」


 きっと美味しいものをたらふく食べてきたのだろう。にんにく臭がひどい。

 だけど、私が顔を渋らせるのはそれだけのせいじゃない。


「……もう一日、時間をください」


 座ったまま頭を下げると、佐藤さんは「了解―」と緑道を歩いていって。

 さり際の「あの二人、仲良いなぁ」なんて不思議がる台詞は、聞かぬふり。

 だって、それどころじゃなくなったんだもん。


「よし、じゃあ今度の土曜日にドライブ行こう!」

「……は?」

「もちろん、花子ちゃんが運転ね。お金は全部こっちが持つから。誕生日祝いってことで!」

「いや、だから、どうしてそうなる?」

「え、だって運転に自信ないなら、練習するしかないじゃん。あとで精算はするけど、とりあえずレンタカーは花子ちゃん借りてね。保険とかの関係で、一番事故りそうな人にしておいたほうがいいし。あとでやり方はメールしとくよ」


 私が「え?」とか「は?」と口をパクパクしている間に、津田さんはスマホを両手で操作しだす。

「橋元くんとわたしの彼氏も誘って、やっぱダブルデートだよねー。あ、週末は暖かくなるみたいだから、お花見もいいかも。桜の綺麗な行楽地は……」


 なんか、ますますトンデモナイことになってしまったぞ……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ