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【完結】団地の花子さんと死にたい死神くんの人生実況解説動画  作者: ゆいレギナ
第二回 訳ありエリートイケメン君

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14話「いけ、デブ元っ!」


「さぁさ今日もおはこんばんは! 皆さんの心のアイドル死神くんと団地の花子ちゃんです!」

「こ、こんにちは~」


 あぁ、眼球くんからビームされるハイビジョンを見ながら耳惠ちゃんに話すのは、二度目でも慣れない……。しかも私は寝間着です。襟元が破れている色落ちした紫のジャージです。髪は死神くんが丁寧に乾かしてくれたから、無駄にサラサラ。あまりの気持ちよさに、私はウトウトしかけました。


 ともあれ、深夜0時。死神くんは今夜も絶好調。


「ちょっと花子氏。視聴者の皆さんはいつ観てるかわからんのですから。配慮が足りんですぞ~」

「只今の時刻は深夜〇時。私は眠いけど、死神さんたちは元気に活動時間なのでは?」

「まぁ、イメージ的にわからんではないですな。生者の自殺が多い時間帯ではありますからねぇ。でも二番目。一番多いのは朝方五時くらいです。特に月曜日。いやあ、生者の皆さんも働きたくないのでござるな☆」

「……わからんでもない」

「でも、花子氏は死なせまてん☆ まだまだ生者として拙者と動画配信しなくちゃなりませんからね~」


 なんとなーく、私は訊いてみる。


「私の価値は生きてるってだけですか?」

「…………さてさて、今日のターゲットは――でけでけどんっ。橋元雄大くん。二十三歳。先程勇敢にも花子氏をデートに誘ってきたイケメンくんですな! いやぁ、素晴らしき度胸。まさに勇者。花子氏とデートして何が楽しいのか⁉」


 ごまかした⁉ しかも挙げ句に私とのデートが拷問ってか?

 だけど死神くんの毒舌は続く。


「果たして、この座敷わらしをそのまま大きくしたような女性のどこが魅力的なのか。身体ものっぺり。顔ものっぺり。しかも対人技能ものっぺりにも関わらず課金だけはのっぺりと終わらせない花子氏とデートしたいと宣う猛者……いやぁ、どんな半生を送ってきたのか、実に興味ありますな~」

「……死神さん死神さん」

「わざわざ『さん』付けでどうしましたの」

「花子、泣いてもいいですか?」

「事実をそのまま述べただけで、どうして花子氏が泣く必要が?」

「ねぇ、泣いていい?」

「さて、今回も幼少期から見てみましょうっ!」


 うわああああんっ。嫉妬説をあんなにも否定したくせに、なんでそんなに機嫌悪いんだああああ⁉

 だけど眼球くんがブルッとすれば、ハイビジョンに古き映像が映し出される。

 野畑と山々に囲まれた田舎の一軒家だった。のどかなお家の軒下で、まんまるとした坊主の男の子が漫画を読み耽っている。


 誰だ、これ……?

 目が異様にぱっちりしてるアンバランスおデブちゃんはどなたですか?


「ねーねー、死神くん」

「なんすか花子氏」

「映す人間違ってない?」


 だって、今日のターゲットは営業部の新人エースの橋元さんですよね? あのキラッキラした笑顔の眩しい美青年。初対面のあたくしにも「可愛い」言っちゃう……言うなればチャラ男くんですよね?


 このお姿は、どー見ても私の同志候補なのですが?


 それなのに、死神くんは「いんや」と首を横に振った。


「拙者が設定を間違えるなんてありえまてん。これは間違いなく橋元雄大くんの幼少期でござりまする」

「まじで?」

「それじゃ、も少し時間を進めてみましょか」


 死神くんの指示に、眼球くんは再びブルッと。

 すると、あのおデブくんは相変わらずまつげがバサバサのまま、学ラン姿になっていた。メガネを掛けてもわかるまつげって凄いね。私なんか鏡でガン見してようやく数束あるのが見えるくらいなのに。漫画にしたら三本しか書いてもらえないと思うよ。はぁ……。


 そしてメガネのおデブくんは休み時間なのか、クラスメイトたちがガヤガヤ雑談している中、やっぱり教室の片隅で本を読んでいる。

 お、ブックカバーで誤魔化しているとはいえ、それはラノベだね。うん、わかるわかる。挿絵のページは超高速でページを捲っちゃうよね。どうせ自分のことなんか誰も見てないとわかっていても、クラスメイトの視線が気になるんだよねー。うんうん、わかるよ。これは有望な我らの同志だ。


『よぉー、デブ元。今日もエロ本読んでんの?』


 住む世界が違うんだから、ほっといてくれればいいのに。どこでも無駄絡みしてくる輩はいるもんなんだね。彼の本を無理やり取り上げて、ゲラゲラ笑ってくるウエイ系。我らの敵。

 そんな敵に『デブ元』と呼ばれた橋元くん(仮)は、果敢に『返してよ』と立ち上がる。頑張れ、同志よ! だけど、ウエイ系は『おっ、無駄におっぱいデケー』とゲラゲラ笑う。

『オレらでもっとエロくしてやろうぜー』

 そして、油性ペンで落書きを始めてしまう。橋元くん(仮)は、ウエイのお仲間に取り押さえられて。あっという間に、素敵絵師さまの描いた可愛くも切ない女の子のイラストは、下品極まりない落書きに変貌させられてしまった。


『か、かえせえええええええ!』


 そして、デブ元はキレた。押さえてた奴らを吹き飛ばし、ウエイの主犯をぶん殴る。だけどウエイも黙ってはいない。『あんだよ』と殴り返し、そこからは取っ組み合いの大乱闘。教室は騒然となるが、そんなのデブ元には関係がないようだ。無論、私にも。


「やれ、そうだ! いけ、デブ元!」

「花子氏、燃えてますな。喧嘩が怖くないんですか?」

「素敵絵を汚すやつは万死に値する。絵師様は神。すなわちそれは神への冒涜」


 そして、デブ元は机を持ち上げて――放り投げた。それはウエイにクリーンヒット! やったぜデブ元。悪は滅びた! 頭から血を流してノックアウト……て、これはやばくね?


『お前達、何をしている⁉』


 そこで女生徒に連れられてきた男の先生。担任かな? その先生は頭を怪我したウエイを見て、即座に他の生徒に保険の先生と校長を呼んでくるように指示しながら、古い形の携帯電話でどこかへ電話して――。


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