万理奈と勉強した
翌日の学校の五時間目。
一番眠い時間帯なので意識を高めることに努めていた僕ですらだるいと思っていた。
そしたら、担任の先生が入ってきた。
来た、数学の先生ではなくて担任の先生ということは。
自習だ多分。
「次の数学は自習です」
ほらやっぱりやった!
「というわけで今日中提出の課題を預かっていますのでやること」
え? それガチな自習じゃん。
普通の自習なら、各自好きなことをして遊べる時間になる。だからみんな喜ぶ。
でもこれだと自習の意味ないじゃん。
教室全体がどんよりムードだった。
ぺらんぺらんと、数学の問題が書かれた紙が回ってくる。
「恒成一緒に解こうよー」
万理奈がやってきた。
普段の自習時間なら、一際うるさい女子グループにいるけど、今日は僕のところに来た。
まあ僕と一緒に解いて全部答えがわかったら、みんなのところに教えに行くつもりなんだろう。
「いいよ。 自習スペース行こうか、ここだと狭いし」
「うん」
「はい。まずは問一……わかりません!」
「考えるのやめるの早いな」
「まあね……ていうかさ、花連さんとの勉強はどんな感じなの?」
「すごいいい感じだよ」
「ふーん」
「万理奈こそ、どんな感じなの? あのかっこいい家庭教師との勉強は」
「すごいためになるよ」
「ふーん」
なんだこの会話。
僕はなんだかもやもやするのでとりあえず問一を解くことにした。
思ったよりも簡単じゃないか。
「はい、解けたよ」
「私も解けた」
「え」
「いやだってそんな難しくないよこれ」
「あ、うん、でもさっきわかりませんっていってたから」
「あれはぱっと見の話」
「なるほど」
僕はうなずいて、そして問二を解き始めた。
「ねえ、やっぱ花連さんって美人だよね」
「そうだな」
なんでその話になった。もう集中力切れちゃったのかな。
「花連さんに勉強教えてもらってドキドキしたりしないの?」
「たまにするけど……ちゃんと集中してやってるよ」
「そっか」
「ていうかさ、万理奈だってあんなかっこいい人と勉強してんだからなんか気が散ったりしないの?」
「しないよ」
「そっか」
なんだこの会話。一問進むごとになんだこの会話ってなる流れなのこれは?
結局、僕と万理奈は、お互いの勉強の様子に探りを入れながら課題を片付けるという、よくわからない時間を過ごしたのだった。