万理奈①
私は放課後、部活が終わると急いで帰った。だらだらしてしてない分、かなり早い方である。
でも今日は部活でいつもよりは遅いし、頑張らないと。
正直なところ、今日は帰ったらすぐ寝たいという気持ちなんだけど、それでもちゃんと勉強したいという気持ちもある。
六時ぴったりに家に着いたら、玄関のところに光樹さんが立っていた。私の家庭教師だ。
「部活おつかれ」
「あ、ありがとうございます。今日もよろしくお願いします」
「うんうん。適度に頑張ってこう」
「はい」
私は光樹さんと一緒に家にあがった。
私が勉強をしている理由は、恒成に比べてあまりに勉強ができないという状況から、脱却するためだ。
恒成は成績がそこそこいいけど、その恒成でも受かるか怪しいレベルの難しい大学を、恒成は志望している。
私は恒成と一緒の大学に行きたいと思うんだけど、ちょっと流石にこのままだと無理そう。
恒成が勉強をやめて成績を落としてくれれば一緒の大学に行くことになるかもしれないけど、それは全然嬉しくない。
恒成はちゃんとやりたいことがあって、志望大学を決めているらしいから、それはちゃんと応援したい。
そう思った時、考えついたのが今のスタイルだ。
私はかっこよくてすごい頭がいい光樹さんに家庭教師をお願いした。光樹さんはお母さんの友達の息子。
私は光樹さんのおかげで、勉強癖がつくとともに、適切な指導で学力向上。
ここまでは私に関する計画で。
あともう一つは、恒成に関する計画。
恒成は、多分私と光樹さんが一緒に仲良く勉強しているのを知ると嫉妬する。
た、多分ね。
だって一応、私頑張って可愛い女の子目指してるし、恒成の幼馴染、だもん。両想いのはず、だもん。
そしたら、恒成はきっと勉強をがんばる。
そして圧倒的な成績をおさめて、私に勉強教えてくれようとしたりするかも。
とにかく恒成は、なんだかんだで負けず嫌いなので、勉強やるよ、うん。
だからそうすれば、恒成の成績も上がり、恒成は夢に一歩近づく。
つまり、私も恒成もちゃんと勉強するようになる計画ってわけ。
すごいいいと思う。
実際、恒成は早速勉強のモチベが上がってて、花連さんに教えてもらって英語頑張ることにしたみたいだし。
今のところ、順調じゃない?
「今日はなんの教科からやる?」
「あ、数学からお願いします」
光樹さんは全教科教えられるすごい人。
よし、今日も頑張るよ。
私はぴしっと、数学の参考書を開いた。