万理奈とデートに来た
……で、その週の日曜日。
動物園の入り口に僕と万理奈は立っていた。
どうして来てしまったのか。
まあそれはデートするためなんだけどね。
三日前を振り返ると。
「ねえ、恒成、あの……」
「万理奈、そういや……」
二人ともほぼ同時に何かいいかけた帰り道。
そしてお互い続きが言えない。
僕はでもその間をチャンスと勝手に捉えて、言った。
「どこか出かけない? 二人で」
「う、うん」
万理奈は大きくうなずいた。
よ、よかったー。
忙しいから断られるかと思ったけど。
よかったほんとに。
なんでここまでいちいち心配したりほっとしたりしてるのかなとは思うけど。
それでもやっぱり久々に万理奈と出かけたいと思うのだ。
「どこ行く?」
「そうだなあ。動物園とかどう?」
動物園が出て来たのはたぶん、この前花連さんからアメリカの野生動物について聞いて、なんかすごいなあと思っていたからだと思う。
そんななんとなくな理由だったけど、
「いいね。動物園賛成!」
そう万理奈が手を挙げて笑うので、動物園って言ってよかったなと思った。
……というわけで万理奈と僕は今動物園にいる。
「さて、順路はおおまかにしか決まってないみたいだけど、どこから回る?」
入り口ゲートをくぐると、万理奈が早速園内マップを広げてそう言った。
「そうだなあ、混みそうなところから先に行きますか」
「あ、じゃあ、サーバルとかチーターとかいるところじゃないやっぱ」
「たしかに、どっちも人気ありそうだなあ」
というわけでとりあえずそこに行くことにした。
「え、サーバル思ったよりもちっちゃい! 可愛い!」
「たしかに、これは人気が出るのにもうなずけるな」
「二匹なんか仲良し」
「この動物園で一緒に生まれ育ったらしいぞ。ほら、名前も書いてある」
「へー、仲良しな幼馴染なんだね。わ、私たちみたいだね!」
「そうだなあ」
万理奈がそう言ってくれたことが嬉しくて、僕はサーバルから万理奈に視線を移した。
「……なんでいきなりこっち?」
「あ、いや。なんか楽しいなって思って」
「そうだね、まだまだまだいっぱいあるからねここの動物園大きいから」
「そうだな。次はカンガルーとワラビーのところでも行くか」
「あ、行きたい! カンガルーとワラビーって何が違うの?」
「わかんない。でも有袋類だよねどっちも」
僕たちはそんなのんびりとした会話をしながら、三月の少し暖かい園内を歩いた。
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次が最終話の予定です。




