表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/31

大人も子供もない裏世界②

後味の悪い胸糞展開、残酷、殺人表現あります。


主人公達は一切出てきませんし読まなくても問題ありません。

 今ギーメイの前には二人の兄弟がいた。


 二人は地面に座り込み震える身体をお互い抱き締めているが、兄と思わしき方の手には拳銃が握られている。


「夜道で周りが見えなくても真っ直ぐ飛ぶから大丈夫だと思った? 銃っていうのは引き金を引けばいいだけの簡単な道具じゃないよ。君、人を撃った事ないだろう。銃を撃つ訓練どころか持った事もない初心者で、人を撃つ覚悟もない子がいくら至近距離からとはいえ当てられるわけないじゃないか」


 ギーメイは兄弟達の前で拳銃を取り出すと見せつけるようにゆっくりと弾を込めていく。


「『子供のやった事だから』『まだ子供だから』見逃されると思った? それは他の人達の考えてあって僕は違う」


 そう言うとギーメイは銃口を弟の方へ向けた。


「子供であろうとやった事に対する責任は取ってもらうよ」

「待っ、待ってください! 撃つのなら僕を! 僕だけにしてください! 貴方を撃ったのは僕です! だから弟だけは助けてください!」

「ああ! 君は何て酷いお兄さんなんだ!」


 パァンと乾いた音が真っ暗な夜道に響く。それと同時に兄の後ろでドシャリと重たい何かが水音とともに倒れる音がした。


「な、なんで……」

「頼れる人も信じられる人も、助けてくれる人もいない、こんな世界にたった一人ぼっちで生きていくなんてこれ以上可哀想な事はないだろう? だから苦しむ事なく安らかに眠らせてあげた、僕なりの優しさだよ」


 いつの間にか兄の正面にまで近づきギーメイは覗き込むように顔を近づける。


「君はそんな世界で一人生きていけばいい。弟にこんな思いをさせるつもりだったんだと苦しみながら生きていけばいいんだ」


 だんだん兄の瞳に憎しみが宿っていく。


「ああ、でもたった今僕は君に生きる理由を与えちゃった。弟を殺した僕に復讐する為ならどんな事をしても生きるという理由を。これなら弟君は事故に見せかければよかったね、そうすれば恨みを晴らす相手もなく生きる理由も見つからず真の一人ぼっちになったのに……僕のように!」

「え?」

「生きる理由を見つけてしまった君に興味はないよ、さっさと消えて。ん? いや僕が去ればいいのか。そうそう、弟君の遺体が大事ならちゃんと埋葬してあげなよ。君以外にとってその死体はゴミ以外の何でもないんだから、気をつけないと他のゴミと一緒にまとめて一つの穴に捨てられちゃうよ、じゃあね」


 さりげなく兄から銃を奪い取るとマントをひるがえしギーメイはそのまま去っていった。

オマケ


ギーメイの過去


子供の頃に家族と出かけている時、ふと足を止めた三秒後に暴走馬車が家族に突っ込み目の前で全員が死んでしまった。

この事故で家族だけでなく当時馬車に乗っていた客、御者、馬全てが亡くなっており唯一の生存者になった。その際周りから「運が良かった」だの「幸運だ」「ラッキボーイ」と言われ、家族全員が死んで何が「運が良い」のかと『幸運』といった類の言葉を嫌うようになる。


事故の被害は酷く、死体は全てぐちゃぐちゃになっており当時の技術では判別不可能だった為被害者は全員、目撃証言からこの事故の原因である御者すらもまとめて一つの墓に入れられた。

その際せめて名前だけでも家族と一緒にいたいと自分の名前も墓に入れ、それ以来ギーメイと名乗るようになった。


今では自分の名前や家名だけでなく、家族の顔と名前すらも完全に忘れてしまっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ