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悪役令嬢は真実を悟りました

 私の目の前には一冊の本。


 色々あって返しそびれた本。


 昨日あんな事言って返しに行くなんて出来ない。でも返却期限日は既に過ぎている。


 ああ! あの時咄嗟とはいえ借りなきゃよかった!

 せめて図書室の入り口に返却用ポストとかあればシュエット様と会わずに済むのに。


 どうやって返そうか考えているうちに昼休みになって、とりあえず本を持っていつものようにアズマの所へ行けば既にビオロ様とエイロン様もいて楽しそうに何か話していた。


 うう、何か眩しく感じる。


「あ、すみませんが今日は図書室に用があるのでこれで失礼します」


 ん?

 アズマは今から図書室に行くの? 人に頼むのもと思っていたけど、図書室に行くついでなら何の問題もないよね。


「アズマ、図書室へ行くのならこの本も一緒に返してもらえないかしら。返却日を過ぎてしまったのだけど私はちょっと図書室へは行けなくて……」

「エグレット様。ええ、構いませんよ」


 うーん、何も聞かずに快く引き受けてくれるなんて相変わらずアズマは優しい。今の私にはすごく身に染みる。


「……あの、エグレット様」

「何?」

「折角だから一緒に図書室へ行きませんか? 最近面白い本を見つけまして。きっとエグレット様も気にいると思います」


 …………。


「……アズマ、私は図書室に行けないから貴方に頼んだの」

「あっ! そ、そうでしたね」

「分かったら早く行ってきて!」

「は、はい! すみません!」

「……もうっ!」


 頼んどいて急かすのもアレだけど、これは仕方ない。うん。

 何だろう、アズマは成績優秀だし性格も真面目で優しいのにそこはかとなく感じるこの残念感は。


「あいつは相変わらずだな」


 走って行くアズマを眺めているとエイロン様がそう言ってビオロ様も苦笑いを浮かべていた。


 その様子をみて見ていたら私も何だか力が抜けたみたいで普通に笑えた。


「……元気そうで何よりです。もう大丈夫なのですか?」

「? ええ、何も変わりありませんし私は元気ですよ」


 ふとビオロ様に図書室はもういいのかと聞かれた。

 この人結構鋭いから昨日の事を知られていたりしないわよね?

 とりあえず大丈夫ですと答えたら何の追求もなくそうですかと頷かれて終わった。


 追求されてない時点でバレているんじゃないの、これ。


 ******


 ビオロ様にはああ答えたけど、流石に昨日の今日で元気にはなれないしあんまり大丈夫じゃない。


 でも一つだけいい事があった。


「エグレット様、次の授業一緒に行きませんか?」

「ええ、勿論」


 コルセイユさんと仲良くなれた事。

 そしてコルセイユさんもの凄くいい子!

 誰にも言わないでって頼んだら本当に誰にも言っていないし、その後を聞いてくる事もない。


 そういえば説明書にも主人公の性格は明るく誰にでも優しくて、困っている人は放っておけないってあったっけ。


 私のプレイがアレだったから主人公を警戒してたけど、ゲーム内の主人公はプレイヤーの分身。つまり、必要以上にエグレットを追いつめ破滅させていたのは主人公じゃなくて私!


 性格が悪くて捻くれているのは私だった!

 あ、だから私悪役令嬢に転生したのか! 納得しかないね、やったあ。


 実を言うとこの学校で仲が良いと言えるのはアズマとビオロ様とエイロン様の三人しかいなくて、同じ女の子はいなかったから寂しかったのよね。


 原因は普通に私の成績。

 ほぼ最下位だから幾ら身分が高くてもお近づきにはなりたくないみたいで遠巻きにされてるし、何ならちょっと笑いものにもされてる。


 公表はされていないのに何処からかこういうのって知られるのよね。

 前世の学校でもこういうのっていつの間にか知れ渡っていたし。


 まあいいわ、笑うのなら笑えばいい。

 少しずつだけど魔法技術は身についてきているもの。


 次の学力テストで見てろ!




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