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放課後教室で

作者: 白雪ななか

 高校二年の夏。

 俺は恋をしていた。

 別に特別な何かをされたわけじゃない。

 特別優しくされたわけでもない、遊びに行ったわけでもない、勿論イベントで一緒だった事もない。

 クラスが同じなだけ。

 休み時間、友達といつも楽しそうに笑っている。

 物おじしない性格で初めて話す人とも普通に話しているのを見た覚えがある。

 たったそれだけしか見てないけど気づけば目で追っていた。


 そんなある日の放課後、科学部がある実験を行うという話が出た。

 教室から見える校庭でロケットを飛ばすっていう話。

 あまり興味はなかったが俺は友達に誘われたから教室に残っていた。


「あれ、〇〇君達も来てたの?」


 何度も見た笑顔で話しかけられた。


「うん、友達が見たいって言うからさ」

「私も友達が面白そうだからって、来月文化祭だから参考にするって! 本当に参考になるのかな」

「参考ってうちのクラス文化祭でロケット飛ばすの?」

「そんなクラス発表ってあり?」


 ケタケタと笑っている。

 手で口元を隠しているのに白い歯が見えて、それでいてどこか楽しそうで……。


「見ろよ! あれロケットだぜ」


 男子の誰かが言った。


 窓から覗くとそこには二リットルのペットボトルを飛ばしている科学部の姿が。


「ペットボトルロケットかよ!」

「小学生の頃にやったよ!」


 笑いながら何人かは興味を失って窓から離れる。

 ぼんやり窓の外を見ていると制服の半袖をくいくいと引っ張られた。

 いつの間にか彼女が隣にいた。


「ねえ〇〇君、あれ見て!」


 科学部が実験している校庭の向こう、狭い一つの窓枠を二人で共有しながら外を見た。。

 山肌に隠れようとしている夕日が校舎や校庭を茜色に染めていく。

 緩やかな風が吹き窓の端にあるカーテンをなびかせる。

 奥をちらっと見ると自分達以外にも窓の外を見ている生徒がいるのに気づく。

 どこか恥ずかしくて離れようと思ったけど、


「綺麗……」


 隣で彼女が目を細めながら小さく呟く。

 静かな時が流れた。

 ガタン……と後ろで友人が机にぶつかって倒す音が聞こえた。

 忘れていたように吹奏楽の音も急に聞こえてきた。

 騒がしくなった放課後の教室で、好きな人と並んで夕日が落ちるのを窓枠に寄りかかりながら見たのはあの日が最初で最後だったと思う。


 高校を卒業してから十年。

 すっかり俺は社会人となって忙しい日常を送っているが。

 あれ以来、音が聞こえなくなった時は一度もない。

短いお話ですけど読んで頂きありがとうございました。


少しでも気に入って貰えたなら幸いです。

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