女神の憂鬱
「はあ、まったく・・・」
どこかの執務室を思わせるような空間に、女性のボヤキが漂う。
彼女の名はユフィーナ。
いくつもの世界を統括する上級神である女神である。
「こいつは王権を握って女性を無理やり後宮に攫う、こいつは助けた村に莫大な金銭を要求して女性を辱める、まったくどいつもこいつも」
彼女の目下の悩みは勇者の行状についてである。
簡潔にいって彼らのほとんどはクズである。
魔王による被害に迫る被害を出すものが少なくない割合なのだ。
時には魔王を超えることさえあり、何のために勇者召喚をしたのかわからなくなる。
「仕方ない、私が出ないと駄目か」
そう呟いた次の瞬間、彼女の姿は消えていた。
俺の名前は吉川元治、勇者だ。
まあ勇者といっても元ボッチの捨てられ勇者だけどな。
今から半年前、俺とクラスメイト達の三十人はこの世界に召喚された。
理由はテンプレどおり、魔王討伐の為。
元の世界に帰るには魔王を倒さなければならない、などと言われたが嘘くさいことこの上なし。
さらにテンプレは続き、俺はろくな力が無いと追放された。
まあ隣国で勇者として支援をしてもらえることになったが、その際他の勇者のうわさを聞かされた。
二言でいえば、「お前のものは俺のもの、俺のものも俺のもの」
うん、はっきり言ってクズだね。
支援してもらう時に、
「向こうの奴等のような国の品位を貶めるようなことはしないように」
と言われたが、俺もそれはごめんだ。
まあそんなわけで俺は東奔西走して活躍していたのだが・・・
「ここどこだよ?」
俺は今、真っ白な空間にいた。
周りを見渡すと、結構な数の人影があった。
少し離れた所には見覚えのある人物たち。
「うげ、何なんだよここ・・・?」
向こうもこっちに気づいたようだが、いやな顔をするだけで無視された。
しばらくすると、女性の声が聞こえだした。
『あーあーテステス、皆さんこの声が聞こえているかしら?』
誰?
『私は女神ユフィーナ、上級神です。異世界の勇者たちをこの場に集めたのは私です』
え?神様っておじいさんのような方じゃなかったっけ?
『言っとくけどあなたたちを召喚したのはそれぞれの世界の管理神だから。私はノータッチよ』
違うんですかそうですか。
でもそれぞれってあちこちの世界の勇者も集めたのか?
『ま、あなたたちを呼んだのは他でもないわ。あんたたちの殆どがクズ過ぎるからよ』
とたん、あちこちから罵詈雑言が出てくる。
うん、俺は共感してしまった。
周りをよく見ると、一部の人たちはうなずいたりしている。
『あなたたちにわかるように言うなら、世界をひとつの店に例えると下級神は正社員の店員。中級神は正社員の店長。あなたたちは一時雇いのアルバイトみたいなものよ』
わかりやすいたとえ話ありがとうございます。
『ちなみに私のような上級神はエリアマネージャーね。後は役員とか。だから本来はあまり関係ないのだけれどどうしても関わらなくてはならなくなった。だからあなたたちを呼んだのよ』
「それは私たちを断罪するということですか?」
知らない声がしたが、おそらく呼び出された誰かだろうか?
『正確には雇用契約の見直しみたいなものね』
『元々あなたたちには死後従属神になるか聞く予定だったわ。あ、従属神は長期アルバイトの店員ね』
なるほど、そこからステップアップできるようになるのか。
『これからもそれは変わらないけど評価制度を追加します。簡単に言うならあまりにも馬鹿なことをしているなら地獄に堕ちる事もあるわ』
今度はあちこちから悲鳴が聞こえてきた。ザマミロ。
『あ、既に地獄逝き確定している人もいるから。それじゃ』
それを最後に、俺は白い空間から元の場所に戻ってきた。
「どしたのゲン?」
「気分でも悪いのか?」
周りにいる仲間たちは口々に俺のことを気遣って来る。
どうやら周りからは俺がぼーっとしているように見えていただけのようだ。
「あ、ああ。大丈夫だ」
そういいながら、俺はクラスメイトたちのことを思い出した。
あいつらこれから大丈夫かな、と。




