94 大当たりとゴロウへの依頼
本日二回目!
マッスル☆タケダの露店から移動した。
ここは大通り沿いにある酒場だ。
ミルキーとタマと一緒にやってきたが、夕食が目的じゃない。
さっき城でご馳走になってきたからな。
隅の方の席で話をしようとしているのは、とあるアイテムをどうしようかという件についてだ。
それは、MVP報酬でタマのストレージに放り込まれていたものである。
「ナガマサさんのものでいいと思います」
「うーん、それも何だかなぁ」
「じゃあとりあえず使ってみてくださいよ。私だと多分いいもの出ないですから」
「分かった。それから考えよう」
そのアイテムの名は≪古いコインケース≫。
開けると全てのコインからランダムで一枚手に入るという、運試しにぴったりのアイテムだ。
前回これから≪滅魔神竜コンヴィーク≫のコインが出てきたんだよな。
そのコインでおろし金を進化させて、変な魔王っぽいのを倒すことが出来た。
今回もいいのが出てほしいような、大人しめのやつがいいような。
複雑な気持ちだ。
まあそんなに続くものでもないだろう。
いざ開封!
コインケースを開けると光に包まれて、その光が収まると一枚のコインが残される。
コインの色は、金色。
まずい、これは前のと同じパターンだ。
≪コイン:神滅魔剣ドルメリオン≫
部位:武器
魔力の封じられたコイン
神滅魔剣ドルメリオンの姿が描かれている。
Atk+30%
全てのモンスターに与えるダメージ+50%
光属性モンスターに与えるダメージ+50%
物理攻撃時、一定確率で盲目状態にする。
武器に闇属性を付与する。
剣とつくカテゴリの武器にセットした場合、追加で
全てのモンスターに与えるダメージ+100%
うわぁ。
神滅ってついてるってことは、あの魔王と同じ≪魔の者≫ってことだよな。
かなりレアっぽいのぽんぽん引き当ててるけどどうなってるんだこれ。
そしてどうしようこれ。
ミルキーとの協議の結果、このコインはおろし金に食わせることとなった。
俺の武器にはもうタマのコインがセットしてあるし、ミルキーは魔法主体だから剣の恩恵は少なそう。売ろうと思っても納得出来る値段で買って貰えるかわからないし、ということでそうなった。
確かに自力でゲットして、持て余したら食べさせるとは思ってたけど、こんなに早いとは思わなかった。
時刻はもう20時。
ミルキーとはここで解散することにした。
ゆっくり休むのがいいだろう。
「今日は楽しかったです、ありがとうございました」
「それなら良かったよ。俺は明日もあの洞窟に行こうと思うけど、どうする?」
「是非ご一緒させてください」
「うん。待ち合わせは10時くらいに中央の噴水でいい?」
「分かりました」
「それじゃあまた明日。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
「ミルキーまたねー!」
「タマちゃんもまた明日」
ミルキーを宿まで送った後は、会いたい人がいた。
すでにメッセージを送って会う約束はしてある。
やって来たのは少し路地に入ったところ。
そこではゴロウが露店を出していた。
モグラもいるのは、丁度いい。
「こんばんは」
「やっほー!」
「おお、ナガマサさんにタマちゃん。おっすおっす」
「ばんはー」
「にゃあ」
ゴロウが被っているふかふかの帽子が鳴いた。
と思ったら猫だった。
この間ゴロウが酒場で餌をやっていた猫が、どうしてここに?
「その猫どうしたんですか?」
「ああ、これは俺の相棒のにゃーこだよ。びろーん」
「にゃあ」
ゴロウが猫の腋を持って差し出すように見せてくる。
大き目で毛の長い種類のようだ。
ノルウェジャン? とかいうのに似てる気がする。
足がぶらぶらしてるのに大人しいな。
けど名前が適当すぎないか?
犬にわんこってつけてるのと同じ意味だし。
「はいあげる。それで、今日はどうしたんですか?」
「わー! にゃーこさんだー!」
「にゃあ」
ゴロウがタマににゃーこを乗っけた。
毛に埋もれてるのに嬉しそうだ。
「ちょっとこれで作ってほしいものがありまして」
ストレージからスファレライトを取り出してゴロウに渡した。
これは今日ジュエルマン(黄)から拾ったドロップアイテムで、黄色い宝石だ。
ミゼルが綺麗な金髪だからそれに合わせようと思って確保した。
ある程度知り合ったんだから、成人のお祝いくらいはしておきたい。
誕生日プレゼントが鎧とか剣だけだったとしたら、女の子らしいものが一つくらいあってもいいだろうし。
「これは宝石? 初めて見たなー」
「俺も俺も。ナガマサさん、これはどこで?」
ゴロウとモグラはスファレライトに興味津々だ。
特にモグラががっつり喰いついた。
俺も色々聞きたかったし、丁度良い。
二人に今日のことを話した。
山脈でゴーレムやらと戦っていたら落ちて、辿り着いた輝きの大空洞のことも。
モグラは驚いていたが、納得したような顔もしていた。
「……なるほどね。あそこの山脈でたまに輝くゲソが蠢いてる、って噂を聞いたことがあるけど、まさか地下にそんなのがいたとは」
「そうなんですか」
「うん。ちなみに、そのゲソに捕まってどこかへ引きずり込まれたプレイヤーがいる、なんて話もあるよ」
恐ろしい。
普通のプレイヤーだったら、あの烏賊に突然襲われたらどうしようもないと思う。
あれは明らかに廃人レベルのプレイヤーが大勢で挑むものだ。
一人でとか、出来るかどうかは別にして俺もやりたくない。
「その大空洞は経験値的にはどうなの?」
「01のモンスターは確認してませんが、足はかなり経験値良かったと思いますよ。02は属性が入り乱れてるので複数の属性を用意するか、無属性の火力を用意した方が良いと思います」
「なるほどなるほど」
「足は魔法が効かないので物理火力が大事ですね。かなり難易度高いと思いますけど、今度行ってみますか?」
「いいの? じゃあ今度連れてって!」
「あ、俺もおなしゃす」
一撃で死にはしないだろうし、≪古代異界烏賊≫に出会わなければ大丈夫だろう。
そのうちみんなで宝石狩りに行こう。
脱線したのを戻して、ゴロウにアクセサリー作成の依頼を出すという目的を達成した。