9 レベルアップと四つ目の封印スキル
「そろそろ夜になるし今日は一旦引き上げない?」
辺りは夕暮れ。時間は17時を過ぎたところだ。
モグラ曰く、フィールドの夜は出現するモンスターの傾向が変わるらしい。
大体は強くなるか厄介になる。
このエリアは初心者向けということもあって難易度自体はそんなに変わらないそうだけど、疲れてる状態で行くのはおすすめしないようだ。
俺が手出し無用って言ってるのも理由の一つだとは思うけど。
モグラとは、狩りの合間の休憩に雑談をするくらいには馴染んでいる。
そこで聞いた話ではモグラのレベルは26。
既に隣のエリアどころかもっと先で狩りをしてるらしい。
今の上がり方からすると低くも感じるが、10を越えた辺りから一気に上がらなくなるらしい。
俺も早くレベルを上げたいところだ。変なのに襲われるのも嫌だし。
夕方まで狩りを続けたおかげでレベルもいくつか上がっている。
その結果がこれだ。
名前:ナガマサ
種族:人
Lv:6(1↑)
Str:5
Vit:4
Agi:9(1↑)
Dex:20(2↑)
Int:7
Luc:2
基本レベルは1上がった。振り方は変わらない。
装備もそのままだから攻撃力はほとんど変わってないけど、狙ったところに攻撃を当てるのが簡単になった気がする。
急所に当てれば結果的に戦闘時間は短縮される。
攻撃のダメージを上げるのが分かりやすいけどね。
それでも攻撃力は全く増えてないってわけでもない。
どうやら最終的な数値には基本レベルも関係してるらしく、レベルが上がる度にダメージは少しずつ上がっていた。
多分他のステータスを振っていないパラメータも上がってるんだろう。
レベルを上げれば強くなるのは間違いないシステムらしい。
あとはタマ。レベルが上がってない筈なのに、タマの体当たりも若干ではあるが与えるダメージが増えている気がする。
もしかしたらプレイヤーのレベルの影響がこっちにも出ているのかもしれない。
そして職業レベル。
こっちは2上がっている。
基本レベルの分を合わせてパーソナルスキルが一つ、職業スキルが二つ増えている。
職業:ノービス
職業Lv:8(2↑)
スキル:
サバイバルの心構え Lv1(使用不能)
武器修練 Lv1(使用不能)
リラックス Lv1(使用不能)
魔法適正 Lv1(使用不能)
属性適正・無 Lv1(使用不能)
フルスイング Lv1(使用不能)(New)
目印 Lv1(使用不能)(New)
我が道を行く Lv5(2↑)
封印の左腕 Lv6(3↑)
封印の右腕 Lv2(1↑)
封印の左脚 Lv3(2↑)
封印の右脚 Lv1(New)
フルスイングは初のアクティブスキル。
文字通り全力で武器を振るって攻撃を叩き込む。封印状態。
目印もアクティブスキル。指定した対象に自分だけが見える魔法の印をつける。
それだけ。
ノービスのスキルだから短い時間で消えるし、マップとかに表示されるわけでもない。
魔法系の職業で上位互換のスキルも取れるらしい。しかも相変わらずの封印状態。
それでもとったのには理由がある。
封印スキルのレベルが上がっている。しかも、途中まで上がっていなかった右腕もだ。
スキルレベルが上がった時のメッセージがログに表示されないから小まめにスキルリストをチェックしていたんだけど、右腕のレベルは≪フルスイング≫をとって、どんな感じで使えないのかを試していたら上がった。
それは、俺の予想を裏付ける結果だった。
封印スキルは封印されているとレベルが上がっていく。
つまり、パッシブスキルを封印ならパッシブスキルを持っていなければ、アクティブスキルを封印ならアクティブスキルを持っていなければ封印されていないわけだからレベルは上がらない。
だから俺はアクティブスキルを二つもとった訳だ。
それもなるべく沢山使えそうなやつを。
機会が多ければきっとレベルが上がりやすくなる。そう思ってのことだ。
結果はご覧のとおり。これからもスキルをとっては使おうとしよう。
ちなみに使おうとすると僅かな抵抗を感じて実行出来ない。多分それが経験値の入る瞬間だ。
なので移動時は常に走ろうとして歩かされ、目印を手当たり次第にばらまこうとしてキャンセルされている。
SPは消費されないし効率は良さそうだ。
レベルが上がったからなんだって話ではあるんだけど。
≪封印の右脚≫の効果。格闘攻撃の威力を-80%。
簡単に言えば5分の1にするってことか。
通常攻撃もスキルも全てだ。
これは何故だろう。足から力を全身に伝えていく的なあれなのか?
格闘系のスキルは持ってないし取っても封印されるから、ユニークスキルで取らないとレベルも上がらないな。
もしくは延々と殴ったり蹴ったりするか。
上がったからなんだって話なんだけど。
「夜のモンスターも見てみたいんですがダメですか?」
「うーん、どうせならしっかり休んで、それからまた後で来よう。油断してると何が起きるか分からないからね」
そう言われると仕方がない。気にはなるけど、死んでもやりたい訳じゃない。
モグラの言う通り後でまた出かけてくればいいんだし。
それに、モグラもしっかり付いてきてくれるらしい。優しい人だ。
というわけで俺とモグラはストーレの街に帰還した。
夜が迫る街はまだまだ活気に溢れている。
仕事終わりの住人達を狙った食べ物系の屋台の店主達が、いそいそと仕込みをしている。
ほとんどの店は営業しつつ、稼ぎ時に備えているらしい。
その中には、ちらほらプレイヤーを示す緑色のマーカーも確認できる。
モグラが言うには商人や料理人に転職して商売に勤しむプレイヤーもそれなりにいるんだとか。
確かにそんなスキルもあったけど、せっかくのファンタジーな世界だし現実では絶対に実現出来そうにないことがやりたかった。
普通の仕事の時点で俺には無理だったんだけど。
モグラを先頭に冒険者ギルドへ向かう。
モンスターから得たアイテムは冒険者ギルドで買い取ってもらえるそうだ。
買い取り金額は大体決まっているから、価値のあるものに関しては店や個人に自分で売った方が高く売れる場合が多いらしい。
ただ俺が持ってるようなありふれた素材はギルドで売るのとそんなに変わらない。
手間のかからないギルドをおすすめされた。
賑やかな街並みを眺めながら歩いている内に冒険者ギルドへ到着した。
今日の戦果を確認しよう。