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77 人気装備とタッチの差


「毎度ありー」

「間に合ったか……!?」


 なんとかさっきの露店まで戻ってきた。

 露店がずらっと並んでて同じような景色に見えて迷いそうになるけど、あのおじさんには見覚えがある。

 間違いない。


 さっきぶつかった青年がいる。

 偶然ここでお買い物してたのかな。

 それよりもミニクラウンだ。


「おじさん、お金用意してきましたよ!」

「あー、わりぃな兄ちゃん。たった今売れたところだ」

「おお……」


 間に合わなかったらしい。

 ああ、くそう、素材は出来るだけ毎日売ってしまっておこう。

 たった今ってことは買ったのはこの人か。


「もしかして、貴方もこの≪ミニクラウン≫を狙って? す、すみません、でもこれはどうしても必要な物で、お譲りするわけには!」


 ちらっと見てしまったのが恨みがましそうに見えたんだろうか。

 少し慌てながらも、強く拒否されてしまった。


「ああ、大丈夫ですよ。こういうのは早い者勝ちだと思うので。気にしないでください」

「モジャー……」

「悪いなタマ、今度欲しいのがあったらちゃんと買うから」

「はーい」


 そこまで非常識なことをするつもりはない。

 タマには悪いけど、間に合わなかった俺が悪いんだ。


「あ、ありがとうございます。ああ、買えて良かったー」

「プレゼントですか?」

「はい!」

「これってそんなに人気なんですか?」


 店主のおじさんもそんなこと言ってた気がする。

 でもまさか、さっきの今で売れるとは思わなかった。


「≪牛丼食べたい≫の作品はどれも女性に大人気で、すぐに売り切れるんですよ。どこに入荷するかも事前にはほぼ情報が流れてこないもので」

「そんなにですか」

「はい。僕も家の者に露店を見張らせて、やっとこの露店で売られるという情報を掴んだので、飛んできました!」

「なるほど」

「それでは僕はこれで失礼しますね」

「はい」


 だからさっき急いでたんだな。

 家の者に見張らせるって、何者だ?

 なんか良さそうな服を着てるし貴族か何かかな。

 さて、残念だけど俺達も待ち合わせ場所に行かないと。


「ナガマサさん? おはようございます」

「あ、おはよう」

「おはよー!」

「タマちゃんもおはよう」


 ミルキーとの待ち合わせである門に向けて歩いていたら、後ろから話しかけられた。

 偶然見かけたらしい。

 まぁミルキーの宿は大通り沿いだし、そういうこともあるか。

 というか門で待ち合わせする必要すらなかったのかもしれない。

 狩りの待ち合わせだからと思って門にしたけど、次からはもうちょっと考えよう。


 せっかく出会ったんだからと、話でもしながら歩く。


「今日はどこに狩りに行きましょうか? 出来れば森以外に行ってみようと思うんですが」

「敬語、出ちゃってますよ」

「あ、ごめん。どこにしよう」

「うーん、森以外は全然良いんですけど、それなら南の門以外じゃないんですか?」

「あ」

「てっきり森に狩りに行くのかと思ってました」

「ついいつもの癖で……」


 待ち合わせの場所は南の門。

 そこを出て真っ直ぐ南に行けばストーレの森になる。

 そこ以外って思ってたのにおかしいだろ!

 うっかりし過ぎだな


「どこか行きたい狩場はある?」

「あまり詳しくないんですけど、山とかどうでしょうか?」


 山、山か。

 確か狼なんかがいて鉱山地帯まで行けばゴーレムもいるんだったっけ。

 気になってた場所だし異論はない。


「いいですね。行ってみましょうか」

「はい!」

「山ー! のぼるぞー!」


 タマも気合い充分だ。

 そうだ、保存食の類も買っておかないと。


 消耗品を買い足して街を北に出た。

 草や木が疎らに生えていて、草原というか平原って感じだ。

 すぐ向こうには山らしきものも見える。


 街の北側は城があるから普通は迂回して、壁の端にある出入り口から出なければいけないが、俺達は≪王家の紋章≫があるから真っ直ぐ城の中を突っ切った。

 城門まで開けてもらってなんだか申し訳ない。


 今度パシオンとミゼルにも挨拶しておいた方がいいな。

 結局ミゼルの誕生日プレゼントもまだ用意してないし、ちゃんと考えておこう。


 あ、プレゼントといえば、すっかり忘れてた。


「ミルキー、ちょっと渡したいものがあるんだけど」

「私に? 一体なんですか?」

「タマの鎧を作ってもらった時にタケダさんがおまけでくれたんだ。俺はこの小盾もあるし、良かったらミルキーにどうかなって」


 ストレージから≪将軍クワガタのアームガード≫を取り出してミルキーに差し出した。

 ミルキーにあげようと思ってたのに、色々あってすっかり忘れてたんだよな。

 思い出して良かった。


「性能が物凄いんですけど……こんなのいただいちゃっていいんですか?」

「大丈夫だよ。使わずに余らせてるより、誰かに使ってもらった方がいいだろうし」

「じゃあ使わせてもらいます。ありがとうございます」

「どういたしまして。何があるか分からないんだから強くなるにこしたことないよ」

「そうですね」


 ミルキーが受け取ったアームガードを装備した。

 皮手袋にアームガード、あと指輪。

 何気に俺がプレゼントした装備が多い。

 ちょっと照れる。


「そういえばナガマサさん、この指輪の効果見ましたか?」

「あっ、うん、見た見た。すっかり忘れてた」


 この指輪は一度は合成の失敗でほぼゴミになっていたのを、タマがゴロウにお願いしてもう一度合成をしたことで今の綺麗な状態になった。

 それで効果が増えてたんだけど、ちょっと変わった効果だった。

 Lucの補正と経験値の増加はそのままだから問題ない。


 気になるのは、『装備時、お互いのスキルを一つずつ共有することが出来る』という部分だ。

 どうやらミルキーも同じところが気になったらしい。


「これってパートナーリンクと同じような感じなのかな」

「そんな気はします。試してみますか?」

「じゃあそうしよう」


 このエリアも街のすぐ隣でアクティブモンスターはいないらしいから比較的安全だ。

 狩りを始める前に実験しておこう。



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