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74 やり直しと指輪


「いやー、めでたいめでたい」

「モグラさん、飲み過ぎですよ」

「いいんだよ、こういう時くらい。お代わり!」

「タマもおかわりー!」

「はいはい、タマちゃんはオレンジジュースね」


 マッスル☆タケダもモグラも、ものすごい勢いでお酒を飲んでいる。

 俺とミルキーは飲んでいない。

 からかわれすぎてそれどころじゃないし、冷静になったらかなり恥ずかしいことをしてたことに気付いたからだ。


 ゴロウは毛むくじゃらの猫に餌をあげていた。

 一体どこから連れてきたんだ。


「いやー、一回謝るって真面目だね、ナガマサさんは」

「そこがいいところなんだろう。指輪まで用意して、いいねぇ。青春だねぇ」

「この指輪ってどこかで買ったの?」


 顔が熱い。

 お酒は飲んでないから恥ずかしさのせいだ。

 青春って歳でもないんだけど。


 モグラの視線は俺とミルキーの薬指にはまっている指輪を交互に見ている。

 俺のは金属だけのシンプルなリング。

 ミルキーは赤っぽい石の嵌まっているリング。

 どちらもボロボロにくすんでしまって、綺麗とは言えない。


「実は、出来るだけ良いものを渡したくてゴロウさんに合成してもらったんですけど……」

「すみません、失敗しちゃったみたいで」

「いえ、ゴロウさんのせいじゃありません! 成功率がすごく低いのを分かってて俺がお願いしたんですから」

「そ、そうですよ。大丈夫です、私はこの指輪でも嬉しかったですから!」

「おお、熱々だねー」

「「うっ」」


 謝るゴロウに必死にフォローする。

 ミルキーも続いてくれたけど、モグラに拾われてしまった。

 くそう、今は何を言っても墓穴になってしまう気がする。


「成功率はいくらだったんだ?」

「0.2%です」

「ひっく! そんな低確率になるなんて、素材は何を使ったの?」


 タケダとモグラの質問に立て続けに答える。

 レアな素材を使うと成功率が下がるのは合成も他の生産も一緒らしい。

 モグラが素材に興味を持ってしまった。

 隠すようなことでもないし、正直に話す。

 

「ええっと、宝石もリングの部分もワールドクエストのボスのドロップ品です」

「「ええっ!?」」

「そんなに貴重なものを使ったのか。ナガマサさん、男だねー」

「モジャマサ、モジャモジャだねー」


 タケダとミルキーの驚きの声が重なる。

 そんなに驚かれるとは。

 モグラは何故か尊敬するような眼差しを向けてくる。

 恥ずかしいのでほんとやめてください。

 タマはもうそれ言いたいだけだろ!?


 モコモコの毛玉みたいな猫に餌をやっていたゴロウが、更に爆弾を投下する。


「レア度S+の装備品で、効果もとんでもない代物だったよ」

「ゴロウさん!?」


 ゴロウが効果を読み上げていく。

 モグラのニヤニヤ度は上がっていく。

 タケダは驚いた表情で固まっている。

 ミルキーは何故か青くなっていく。

 タマは猫と一緒になって床を転がっている。


「ナガマサさん!」

「はい!」

「どうしてそんな貴重なものを指輪なんかに使ったりするんですかー!」

「うわわわわわわ」


 ミルキーが俺の服を掴んでがっしがっし前後に揺する。

 困った、正論なだけに抵抗できない。

 でも世の中正論が全てじゃないはずだ。


「だってですね、どうしても気持ちを伝えるのに必要だと思ったので」

「どうしてそういう恥ずかしいことを言うんですかー!」

「わわわわわわ」

「ヒューヒュー!」

「いやー、ナガマサさんかっこいいよ」


 答えたのにまたがっくんがっくん揺すられた。

 答えが気に入らなかったんだろうか。

 モグラ達はもうそっとしておいてくれ。


「ナガマサさん!」

「はい!」

「これからは貴重なアイテムや素材をぽんぽん使ったら駄目ですからね! 特に、私の為にとかはやめてくださいね!」

「はい!」

「はっはっはっ、早速尻にしかれてるな」

「これくらいしっかりしてる奥さんの方がナガマサさんには合ってると思うよ」

「ちげぇねぇ」

「奥さんじゃありません!」


 ミルキーにたっぷり叱られてしまった。

 やっぱりボスドロップ二つで合成はやり過ぎたのか?

 でもこれが最高の素材だと思ったしな。


「ミルキー、モジャマサ、ちょっとそれ貸して!」

「え、この指輪?」

「うん!」

「いいけど、壊すなよ?」

「だいじょーぶ!」

「はい」

「ごろー、おねがい!」


 俺とミルキーが指輪を外して渡す。

 タマがそれを、ゴロウに渡す。

 え、どういうことだ。


「ほほう、なるほど。任せといて」

「たのんだ!」

「タマ、一体どういう」

「だいじょーぶ、タマはさいきょーだから!」


 詳しく聞こうとしても遮られてしまった。

 ミルキーも不安そうにしてるけど、俺に任せてくれるようだ。

 ここはタマを信じてみよう。


「――あ」

「ゴロウちゃん!?」

「どうなったんだ!?」


 ゴロウが声を上げた瞬間、モグラとタケダが食いついた。

 二人も心配してたらしい。

 お陰で俺が聞くタイミングを逃したぞ。


「はい、タマちゃん」

「ありがとごろー!」

「ナガマサさんとタマちゃんにはお世話になったから、これくらいお安い御用だよ」

「はい、モジャモジャ!」

「お、おう」


 タマがゴロウから受け取ったものを俺に差し出してきた。

 手の平を見せたら、その上に一組の指輪が転がった。

 さっきまでと違ってリングは白銀色。

 リングの片方に嵌った宝石は、太陽のようなオレンジ色に煌めいている。


「タマからのお祝い!」


 すっかり見違えた。

 多分、タマのコインを出してそれを合成してくれたんだろう。

 優しい子に育ったんだな。


「タマ、ありがとうな」

「うん!」



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