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72 勧誘と勘違い


「おいおい、そんな顔してちゃ何かあったって丸わかりだぞ」

「ナガマサさんやタマちゃんにまで伝わってたら相当だと思うよ。オレ達に話してみたら?」

「ええっと、そんなに大したことじゃないんですけど……」


 マッスル☆タケダとモグラの追撃でミルキーは話し出してくれた。

 ミルキーはまだ知り合いも少ないから、プレイヤー達が臨時パーティーを募集するのに使っている広場を利用して、何日か前に臨時パーティーを組んだらしい。


 その時に組んだ人とフレンドになったはいいものの、しつこく色々要求されるようになったそうだ。

 段々とエスカレートしていってフレンドを解除したら、今度はミルキーの良くない噂を流すようになったとか。

 それで臨時広場にも顔を出しづらくなって、困ってしまったらしい。


「それは酷いですね」

「ミルキーをいじめるやつはぶっとばしてやるー!」

「ほんとひでぇな」

「あー、そういうプレイヤーはどこにでもいるよねー」


 思った以上にひどかった。

 なんでそんなことが出来るんだろうか。

 モグラの言う通り、どこにでもいるんだな。

 昔やってたゲームでもたまにいた。


 ミルキーは悪い人じゃない。

 あのマナーの悪い狩り方をしてた†紅の牙†に対して、真っ向から間違ってると言えるくらい芯のある良い子だ。

 俺が大量のオオカナヘビを引き受けようとした時も、逃げずに隣にいてくれた。

 ……今度は俺が隣に立つ番だな。


「ミルキーさん!」

「は、はい」

「俺と固定パーティーを組みませんか!?」

「えっ、えっ」

「おお、そりゃいいな」

「うん、ナイスな提案だと思うよ。臨時広場なんて利用する必要なくなるし」

「モグラさんも利用したことあるんですか?」

「勿論あるよ。最初は知り合いもいないし、先のMAPに行こうと思ったら心細いからね。死んだら終わりなんだからそういう人は結構いるよ」


 なるほど。

 俺は運よくモグラと知り合って、教えてもらってる内にとんでもない成長の仕方をしたから、知らない人同士で組むっていう発想が無かった。

 最初皮肉みたいな名前のユニークスキルで色々封印された時はどうしようかと思ったけど、恵まれてたんだなぁ。


「知らない人同士で組むから今回みたいなトラブルも割とあるみたいだよ。合う合わないもあるし。俺はそこでタケダやゴロウちゃんに出会ったから、悪い事ばかりじゃないんだけどね」

「そうだな」


 モグラとタケダはその臨時広場で出会ったのか。

 あとゴロウも。

 そういういい出会いにも繋がるのか。

 巡り合わせなんだろうな。

 街を歩いてるだけで人殺しに狙われるようなやつもいるし。


「それで、どうですか?」

「えっと、ナガマサさんもタマちゃんもとっても強いですし、私なんかが一緒だとご迷惑じゃないですか?」

「俺は強いとか弱いとか、そんなこと気にしてません。俺はこの世界で第二の人生を送りたいだけなんです。ある程度稼げれば後は楽しく過ごせればそれでいいと思ってます。なのでミルキーさんさえ良ければ、これからは俺と一緒に居ませんか?」

「そ、そうなんですか? でも……」


 ミルキーはまだ迷っているようだ。

 もしかして迷惑だったんだろうか。

 嫌なら嫌でもいい。

 別に無理に頷いて欲しい訳じゃないんだ。

 オーケーしてくれるなら勿論嬉しいが、嫌なら他の方法でフォローをすればいい。


「俺はミルキーさんと一緒に居たいと思うから提案したんです。後はミルキーさんがどうしたいかだけで決めてください。勿論、嫌だったら断ってもらって大丈夫ですから」

「う……嫌なんかじゃ、えっと、その……私なんかで、本当にいいんですか?」

「ミルキーさんじゃなきゃダメなんです!」


 今困ってるのはミルキーだからな。

 誰でもいいから固定パーティーを組みたくて言ってるわけじゃない。

 臨時パーティーに頼らないといけないくらい知り合いが少ないのに、臨時パーティーが組みにくくなってるミルキーを助けたい。

 だからミルキーに提案したんだ。


「わ、私なんかで良ければ、その、……よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

「ミルキーこれからずっと一緒?」

「そうだな、いつまでかは分からないけど多分ずっと一緒だ」

「やったー!」


 なんとか受け入れてくれた。

 これでミルキーは変なプレイヤーがいるらしい臨時広場に行く必要もない。

 せっかくの新しい人生なんだから楽しまなきゃ損だ。

 そいつらとは関係ないところで楽しんでいこう。


 タマもミルキーと一緒にいられると知って大喜びだ。

 懐いてたしな。

 そうだ、せっかくだしモグラとタケダも誘ってみようか。

 って、あれ?

 なんだか空気がおかしい。


「いやー、こっちまで恥ずかしくなるような告白だったね」

「青春してていいじゃねぇか。ナガマサさんの熱い気持ちに、俺のマッスルも感動してるぜ」

「え?」


 どういうこと?

 どうしてミルキーは顔を真っ赤にして俯いてるんだ?


「ヒューヒュー! 熱いね!」

「いやぁこりゃめでてぇ! 酒持って来い!」

「お幸せにな!」

「え? え?」

「あー、ナガマサさん、ちょっといい?」


 モグラとタケダだけじゃない。

 何故か周囲の客まで謎のお祝いムードだ。

 一体何がどういうこと?


 俺が混乱してると、モグラが耳を貸せとジェスチャーしてきた。

 顔を寄せると小声でこっそり教えてくれた。


 さっきのやりとり、俺はミルキーを固定パーティーに誘っているだけのつもりだった。

 だけどどうやら途中から、ただの告白にしか聞こえなかったらしい。

 なんてこった。

 だからこんな空気なのか。

 ミルキーさんなんて周囲の野次でもっと顔を赤くしてるし。

 

 え、ということはミルキーさんも勘違いした上でオッケーしてくれたってこと?

 え、これは喜んでもいいんだろうか。

 うん、ミルキーさんのことは嫌いじゃない。

 むしろ性格も真面目で良い子だと思ってる。

 昨日のパーティーの時はすごい綺麗だと思ったし正直見惚れた。


 あれ、なんだこれ。

 棚から牡丹餅どころの話じゃないんだけど、このまま訂正しない方が幸せになれる?

 でもそれってミルキーさんにすごく失礼な話なんじゃ?

 え、ええっと、こういう時ってどうしたらいいんだ?



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