71 打ち上げと浮かない顔
『称号≪王国を救いし者≫、≪魔王討伐者≫を獲得しました』
「真に大義であった。何か困ったことがあればいつでも頼るがよい」
「うむ、いつでも来い」
「救世主様に向かって偉そうにするでない」
「私にとっては一人の友でしかありませんぞ、父上」
「ナガマサ様、お兄様が失礼を……」
「いえ、大丈夫ですよ。ほんとに」
パレードの後は王様と謁見して、色々お礼とかを改めて言われた。
俺とタマだけじゃなく、マッスル☆タケダとミルキーも一緒だ。
二人は何もしていないと断ろうとしていたけど、王家の威信に関わると聞いてもらえなかったようだ。
体面とかあるんだろう。
俺達は報酬として、経験値といくつかのアイテムをもらった。
その中には≪王家の紋章≫という通行手形みたいなものもあった。
王様達的にはおろし金を従えるタマの相棒の俺は救世主らしい。
実際倒したのはおろし金なんだけどと言っても、やっぱり聞いてもらえなかった。
出来れば出汁巻玉子みたいに騎士団に入って欲しいと言われたがそれは断った。
そういうのも確かにありだとは思う。
でもせっかくだから、色々冒険したりしながらものんびり楽しく生きて行きたいんだ。
騎士団に勤めるとパシオンにも忠誠を誓わないといけないのもなんかあれだしな。
あれは悪友くらいで丁度いい。
出汁巻はよく我慢出来るよなほんと。
出汁巻とは帰る前にフレンド登録をさせてもらった。
最終形態は完全に変態だけど、頼れる存在だからな。
何かあったら相談させてもらおう。
「お疲れ様です!」
「おつかれ」
「ミルキーさん、タケダさん、お疲れ様でした」
「おつかれー!」
ミルキーとタケダと一緒に城を出た。
城を出るまでミゼルとパシオンが見送ってくれたから労う暇がなかった。
街に戻ってから口々に労う。
時間は14時か。
色々あってご飯を食べそびれてしまったな。
「お腹空きませんか?」
「空きました……」
「そういやもうこんな時間か。何か食いに行くか?」
「食べるー!」
「タマもお腹空いたみたいなんで行きましょう」
「うし、んじゃ行こう。っとその前に、モグラも呼んでいいか?」
「いいですよ。ミルキーさんは?」
「もちろん私もいいですよ」
「みんなでご飯ー!」
モグラも合流して酒場へ。
ここは酒場だけど昼は定食屋みたいな感じらしい。
そこで、今回の話で盛り上がった。
モグラとミルキーがほとんど関わってなかった部分はタケダが語ってくれた。
パシオンがタケダに迫っていたところからだな。
森での出来事はタマが臨場感たっぷりに語って、俺がフォローを入れる形になった。
「出汁巻がガーンってやってズバーンって脱いで、しかもピカーって光って!」
「ええっと、出汁巻玉子っていうトッププレイヤーの人がいたんですけど、その人が一番前で将軍クワガタと戦って、脱げば脱ぐ程強くなるからってパンツ一丁で戦ってましたね。最終的には全裸になって股間だけ光ってました」
言葉にしてもほんとに酷い。
でも直接見た方があの酷さはよく伝わると思う。
言葉だけでは伝えきれない。
モグラはタケダからのメッセージを受けて、パシオンとミゼルについて調べてくれていた。
結果としては、王家の人間で、ミゼルはもうすぐ成人を迎える王女。
パシオンは重度のシスコンの王子。
王家では≪魔の者≫という存在に備えているというところまで調べがついていたらしい。
もしかしたら本来のクエスト攻略のヒントは、こうやって集めるものだったのかもしれない。
俺達が介入していなかったら儀式に参加するプレイヤーは出汁巻だけだっただろう。
もしそうなっていれば、あの感じでは王家が滅んでいてもおかしくなかった。
全滅してれば本人達に話は聞けないだろうし、調べて≪魔の者≫に辿り着いて追いかけて、やがて討伐みたいなシナリオが透けて見える。
元々がオンラインゲームだし、無理に進めずに好きなことしててもいいんだろうけど。
「オレも参加したかったなぁ。そういえば、ワールドクエストの報酬って何かあったの?」
モグラだけ参加出来なかったからなぁ。
俺達はもらった報酬を教えあう。
≪王家の紋章≫以外は全員バラバラだった。
タケダは生産系スキルの成功率に補正のかかるハンマー。
ミルキーは魔法の威力と詠唱に補正のかかる指輪。
俺は全ステータスUPの腕輪と、姿を隠すスキルが使えるようになるマントだった。
基準が分からないけど各自の職業に合わせたアイテムがもらえた気がする。
みんなも同じような意見だった。
そしてモグラは、次こそは大きなイベントは逃さないと張り切っていた。
あれ以上大きなクエストが残ってるといいんだけど。
それにしても、クエスト条件で女性をエスコートする必要があったから唐突に誘ったが、ミルキーとは結構久しぶりに会った気がする。
前回会ってから三日くらいしか空いてないけど、ここ数日がすごい濃かったからかな。
「そういえば、ここのところミルキーさんはどうされてたんですか?」
「あ、はい、お蔭様で元気にやってます!」
「んー?」
何気ない会話。
ミルキーは元気に返事をしてくれた。
だけど何か表情が暗い気がする。
正直そういうのに疎いと思うから、自信はないけど。
「ミルキー、何か元気ない?」
「そ、そんなことない、ですよ」
タマも同じように思ってたようだ。
どストレートをぶっこんでいく。
流石タマだ。
その無垢な瞳には嘘がつけなかったのか、ミルキーの返事は段々小さくなっていった。
勝手な考えだけど、何か悩んでるなら力になりたい。
まずは話を聞かないとだな。
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