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68 金蛇とワールドクエスト


 光が弾けた。

 大きな音を立てておろし金が着地する。

 四足歩行は変わっていない。

 相変わらず身体にくらべてほっそりした脚と、長い尻尾。


 全長は八mはあるだろう。

 全身を覆っていた鎧は更に鋭くなっていて、更に頑強になったに違いない。

 背中にはドラゴンの翼が生えているが、少し変わって見える。

 俺のイメージだと骨格があって、そこに膜みたいな皮が張ってある感じだ。


「キュルル!」


 だけどおろし金の翼に、その膜はない。

 その代わりなのか、薄く、鋭利な剣のようなものが何本もぶら下がっているように見える。

 そんな殺意に溢れた翼でもしっかり飛べるらしく、短く鳴くのに合わせて空中に浮かび上がり、制止している。


 砕かれた尻尾も綺麗に治っていた。

 それどころか尻尾の先三分の一くらいは完全に剣になっている。


「おお、おろし金が進化した!」

「なんて美しい」

「あれはまさしく、滅魔の力……」

「守護竜様が降臨なされた!」

「おろし金が守護竜だったのか?」

「うおー! おろし金ー!」


 周囲がざわついている。

 全体的に金属光沢があるしトゲトゲしてるし、それどころか剣が生えてるところまである。

 光ってるし神々しくもあるが全体的に物騒だ。

 目立つのも仕方ない。

 でも、その姿は立派に成長していた。


「なんだその姿は! その、力は! これはまるで滅魔の竜共の――!」

「ヴェルス! おろし金はトカゲでも、ドラゴンでもない。カナヘビだ――覚えとけ!」

「ギュルアッ!」

「調子に乗るなぁ!!」


 ヴェルスがおろし金へ殴りかかる。

 爆散した右腕もいつの間にか再生していたようだ。


「ぐ、ぐがあああああ!!」


 おろし金は拳を簡単に受け止めた。

 そしてそのまま握り潰してしまった。

 爪というか、指全てが鋭利な刃物になっているようにも見える。

 ヴェルスの拳が細かく刻まれててえぐい。


 ヴェルスが怯んだと同時に、おろし金の猛攻が始まった。

 周囲に剣が現れてはヴェルスに向かって飛んでいく。

 ヴェルスは魔法で迎撃しようとしているが、簡単に切り裂かれてしまってヴェルスの身体に突き刺さっていく。


 ハリネズミになりながらどうにか突っ込んでも、パワーですらおろし金が勝っているようだ。

 殴り返されて後ろに吹き飛ばされる。

 そしていくつもの剣が突き刺さる。

 一方的過ぎて楽しい。

 いいぞ、もっとやれ!


「何故だ! この俺様が、何故、力負けしているんだ!?」


 俺からしてみれば当たり前だ。

 元のヴェルスの強さはわからないが、強化はコイン一枚分。

 おろし金の方は≪滅魔神竜コンヴィーク≫だけじゃなく、タマの力も受け継いでいる。

 負ける訳がない。


「タマはさいきょー! だから、タマのペットもさいきょーだー!」


 ステータス画面に表示されている種族名は≪滅魔金蛇(カナヘビ)エボリュート≫。

 名前はおろし金。

 タマの最強のペットだ。


「クソがああああああ!!」


 ヴェルスが魔力を手の平に集中させている。

 頭上には詠唱バーが出現していることから、かなりの大技であることが分かる。

 さっきまでの攻撃じゃ出てなかったからな。


「おろし金、とどめだ!」

「キュルアッ!」


 俺の声に答えたおろし金は少し下がって後ろ足を地面につけた。

 次の瞬間にはヴェルスに向かって飛び掛かる。

 と同時に、空中で縦に一回転。

 長い尻尾の剣が輝いて、凄まじい勢いでヴェルスに叩きつけられた。


「ご……が……予定と、全然違う……」


 解き放つ寸前だった魔法もろとも左右に両断されたヴェルスは、空気に溶けるように消えていった。

 あ、MVPの表示がタマの上に出た。

 タマのペットだから?


 それにしてもすごい威力だった気がする。

 あの技を滅魔断罪剣とでも名付けよう。


 俺達を隔離していた黒いオーロラも消えていく。

 本当に厄介な壁だった。

 ここがゲームの世界である以上、システム的に隔離されたらどうしようもないからな。

 今回はどうにか出来たけど。


「ミゼルウウウゥウウゥウウゥゥゥゥウウウウウウウウウウゥゥ!!!」

「壁が消えたぞ!」

「ミゼル様!!」

「陛下はご無事か!」

「迅速に行動しろ! しかし慌てるんじゃないぞ!」


 パシオンが駆け出していった。

 兵士や騎士達も行動を開始している。

 俺達も何か手伝おう。


『神滅魔王ドレッドエンドが討伐された為、ワールドクエスト≪魔王ドレッドエンド討伐≫が達成されました!』

「ん?」

「えっ」

「なんだこりゃ」


 またしても見慣れないメッセージが出現した。 

 ミルキーやタケダも俺と同じような反応をしてるから、プレイヤー全員に送られている可能性が高い。

 ワールドクエストって世界規模のクエストのことだと思うけど、そんなの始まってたのか。


「ワールドクエストって何かあったんですか?」

「私は知りませんでした」

「俺も知らないぞ。モグラのやつなら知ってるかもしれねぇが」


 詳細は不明だ。

 他にクエストのことに詳しそうなプレイヤーは……。


「ナガマサさーん! 大丈夫っすか? 一体何があったんすか?」

「出汁巻、ちょうど良い所に」

「きゃっ!?」

「おう、良い筋肉してるじゃねぇか」


 詳しそうなプレイヤーこと、出汁巻玉子が駆け寄ってきた。

 トッププレイヤーである出汁巻ならきっとその辺りのことは詳しいはずだ。


 だが、聞く前に大事なことがある。

 今の出汁巻は全裸で、股間が光り輝いている。

 全裸の祭典(マッパダカーニバル)まっただ中だ。


 向こうにもオーロラは出現していたようだし、もしかしたら出汁巻もまた全力で現状を打破しようと頑張っていたのかもしれない。

 奥の手らしいしな。

 でも絵面がいけない。

 女の人だっているんだぞ。

 目に毒だ。


「まず服を着てください」



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