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65 儀式開始と襲撃者


 怒り心頭のタマとおろし金をミルキー、タケダと一緒になだめてる内に儀式の時間が近づいていた。

 騎士達も貴族も整列をしている。

 この儀式の参加者は昨日とほぼ変わらない。

 親族と招待客がメインだ。


 違うところと言えば、参加者全員が武装していること。

 そして騎士や兵士が大勢並んでいることくらいか。

 モンスターに対する軍事的な意味合いも強いみたいだから、こうなってるんだそうだ。


 俺達は招待客ということで、真ん中の前の方に並んでいる。

 左の方にはミゼル親衛隊の姿も見える。

 先頭にはジャルージが立っていた。

 いたのか。

 流石に騎士団長を儀式の場に呼ばない訳にはいかなかったのか?


 少し離れた場所には、俺達に向かい合うように王様や臣下達が横に並んでいる。

 その中にはパシオンもいる。

 何故かヴェルスもいる。

 いくらパシオンが嫌っていても、立場とかそういうので仕方なくなんだろうか。

 他にも何人か貴族っぽいのが並んでるしな。


 王様達は壁を背にして並んでいる。

 壁の向こうは何かの建物が建っている。

 王様達の中心には出入り口らしきトンネルのような場所があるから、きっと建物へ続いてるんだろう。

 なんの建物かは分からないが、多分大事な場所なんだと思う。


 その出入り口の上の部分には、大きなドラゴンみたいな像が設置されている。

 昔協力してくれた竜に誓いを捧げる儀式と聞いてるから、そのドラゴンの像ならすごく大事なものに違いない。


「それではこれより、16歳を迎えられたミゼル殿下による≪滅魔の儀≫を執り行う!」


 臣下のおじさんの宣言が響く。

 トンネルのような場所からミゼルが姿を現した。


 ミゼルの鎧は、タマの鎧に似たデザインだが結構違っている。

 お腹は出ていないし、ショートパンツではなくロングのスカートになっていて、露出が控えめになった印象だ。

 それでもその美しさは変わらない。

 変更した部分も相まって、清楚なミゼルを更に引き立てている。

 会場の誰もが息を呑んで見惚れてしまっている。


 タマも騒がないように言い聞かせておいたからか静かだ。

 もう機嫌も直ったらしく、キラキラした眼でミゼルを見つめている。


 パシオンはやばい。

 あまりの美しさに叫び出しそうになっているのを、数人のメイドさん達に抑え込まれている。

 というか多分叫ぶだけじゃなくてミゼルに駆け寄りそうになってるだろあれ。

 見なかったことにしよう。


 ミゼルは竜の像の下で俺達にたっぷりその姿を見せつけた後、横に並んでいる王のところへと向かった。

 王の正面に立ったミゼルは王と向かい合っている。

 ミゼルは王に対し跪いた。


「ミゼルよ。そなたは今日で成人を迎える。この国の王族としての責務は理解しているか?」

「はい。民の生活を守る為に、最前線に立ち続ける事です」

「その覚悟は出来ているか?」

「勿論でございます」


 物騒な感じだけど、この国の王族はこういう考え方らしい。

 有事の際は王族が最前線で戦って、民を守る。

 城がこの街の端にあるのも、かつて山脈から降りてくる≪魔の者≫を迎え撃っていた名残なんだとか。


 勇猛果敢な王族なんだな。

 王様は漫画やアニメだと一番安全な場所に引きこもってたりするのに大違いだ。


 臣下が差し出した剣を王様が受け取る。

 そしてそれを、ミゼルへ差し出した。


「ならば祝いとしてこの剣を贈ろう。この剣を以て、守護竜となりこの街を守り続けてくださっている≪滅魔光竜リュミエーク≫様へ、その覚悟を示すのだ」

「有難く頂戴します」


 王様が差し出した剣をミゼルが受け取った。

 剣が誕生日プレゼントってすごい世界だ。

 正装が鎧なくらい雄々しい誕生日だし、そういうものなんだろうか。

 多分女の子らしいプレゼントもちゃんともらってるとは思うんだけど。

 今日には間に合わないだろうけど俺も何か用意した方が良いのかな。


 ミゼルは立ち上がり、受け取った剣を鞘ごとベルトの左側に差した。

 あの鎧は帯剣する為の機能もしっかり備えているようだ。


 臣下の一人が小箱を開いて差し出した。

 ミゼルがその中に入っている何かを手に取った。

 多分今日パシオンがこっそり見せてくれた≪封印されたコイン≫だろう。


 枠が付けられて、そこに短い鎖がつけられている。

 あんな感じのコインをネックレスにしたものが現実にもあったような気がする。


 左手にコインを持ったミゼルは竜の像の前へと戻った。

 そして竜の像へ向き直る。

 俺達に背を向けた状態だけど、この儀式はあくまでも竜へ捧げるものだから俺達観客のことは考慮されないそうだ。

 目的を考えると不思議ではない。


 ミゼルが左手に持った鎖を掲げる。

 先端についているコインを見せつけるような感じだ。

 そして、剣を抜こうとした時、動いた者がいた。


「なっ、止まれ!」


 俺達のいる方からミゼルに向かって駆け出して行ったのは、ジャルージだった。

 突然のことに追いかける人はいない。

 数拍遅れて出汁巻玉子が動き出すが、出汁巻は少し離れた位置にいた。

 腐っても騎士団長、中々速い。間に合いそうもない。

 ジャルージはもうミゼルのすぐ後ろに迫っている。


 ジャルージは剣の柄に手を掛けている。

 抜刀のままに切り付けるつもりだ。


 だけど俺とタマが動くことはない。

 間に合う奴がいるからだ。


 数名のメイド達がジャルージに突撃していった。

 流石騎士団長と言うべきか、メイドの攻撃は全て受け流された。

 メイド達は受け流された勢いのまま走り抜けて、攻撃範囲から離脱している。


「貴様、何のつもりだ!?」

「お退きください、パシオン様!!」


 メイドの攻撃が全て通じなくても、その攻防で稼いだ僅かな時間でパシオンがミゼルとの間に割って入っていた。

 ジャルージはパシオンに攻撃をするのは躊躇われるのか、足を止めてパシオンに謎のお願いをしている。

 本当に何がしたいんだ。


「ミゼル様、危険ですのでこちらへ!」

「何事なのですか……!?」


 その背後ではヴェルスがミゼルを庇うように動いていた。

 ミゼルに対しては優しいのか?

 絶対許さないけどな!



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