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63 封印されたコイン


 色々あったパーティーは楽しく終わった。

 出汁巻が演武を始めた時はいつ脱ぐのかとヒヤヒヤしたが、それは余計な心配だった。


 ちなみに、パシオンの騎士団の名前は≪ミゼル親衛隊≫というらしい。

 パシオンの私設の騎士団なのにミゼル親衛隊。

 壊滅的な何かが覗える。


 パシオンの持つ武力はミゼルの為だけにあるのだと力説された。

 もはや気にすることじゃない。

 パシオンだし。


 パシオンの配慮で今日はそのまま城に泊まることになった。

 ミルキーとタマは別の部屋へ案内された。

 タマは相棒だしいつも気にせずに一緒に寝てたんだが、やっぱり女の子カウントされていたらしい。


 嫌がっても変な目で見られそうだし、そのまま見送ることにした。

 タマは不満そうだったけど俺はどっちでもいいしな。


 そして次の日。

 

「モジャマサー、起きろー!」

「お、タマ、おはよう。……ああ、お城に泊まったんだっけ」


 客室らしい部屋で目が覚めた。

 最近泊まってる宿と広さが違いすぎて、一瞬自分が何をしてたのか忘れてしまいそうになった。

 

 しばらくすると昨日お茶を淹れてくれたメイドさんが食事を運んできてくれた。

 タマと俺の二人分あったのは、タマの行動は筒抜けだったってことだな。

 流石お城で働くメイドさんだ。

 きっと有能なんだろう。

 仕事でも見知らぬ男と同じ空間に3時間くらいいるなんて、俺には出来そうにない。


 食事を終えるとパシオンがやって来た。

 もしかして今日もミゼルのところを追い出されたのかな。


「衣装を見た時の反応が見たくてずっとくっついて待ってたのだが、着替えるから出ていけと追い出されてしまった」


 やっぱりか。

 それくらいなんとか我慢出来なかったのか。


「粘ると怪しいからな。こっそり用意したせいで説明も弁解も出来ず、大人しく追い出されることしか出来なかったのだ」

「なるほど」


 きっとミゼルはパシオンのことをそれほど嫌ってない、と思う。

 一昨日も心配してたようだし。

 それでもあのテンションで張り付かれたら鬱陶しいだろう。


 口実があればさっさと追い出すに違いない。

 口実なんかなくても問答無用で切って捨てる人も世の中にはいるが、ミゼルは優しそうだからな。


「まぁ良い。あの鎧ならば、ミゼルもきっと喜んでくれるに違いない」

「そんなに良い出来でしたか?」

「出来栄えだけで言えば、タマのものより数段劣るだろう。しかし、あの鎧には熱意が、私のミゼルへの愛に相応しいほどの情熱が込められている! それだけで素晴らしい鎧だ」

「なるほど」

「タケダは出来るまっするだから!」

「うむ、まったくだな」


 パシオンの熱弁っぷりからすると満足してるようだ。

 ミゼルも喜んでくれてるといいんだけど。

 タマはよく分からない褒め方をしている。

 パシオンも同意してるけど、意味分かってるのか?


 そのタケダも城に泊まっているらしい。

 パーティーでは見掛けなかった。

 どうやら鎧の作成で結構無茶したらしく、爆睡していたとのことだった。

 一体どれだけ気合いを入れて作ったんだろうか。


「そうだ。貴様に良いものを見せてやろう」


 そう言われて俺とタマは謎の場所へと案内された。

 そこは隠し扉の向こう側、地下へ続く階段を降りた先にあった。

 部屋の中には古びた宝箱が一つだけ置いてある。

 意味深だ。


「ここに保管されているのは、我が王家に代々受け継がれている秘法だ。成人を迎える儀式の時にだけ持ち出される貴重なものである」

「おおー! すごーい!」


 自慢げに言いながらパシオンが宝箱から何かを取り出した。

 箱のサイズの割に小さい。

 よく目をこらしてみるとコインのように見える。

 タマが喜ぶようなものなのか?


≪封印されたコイン≫

イベントアイテム

魔力の封じられたコインに更に封印を施した物。

二重の封印を受けても尚、強力な力を感じる。


 説明はこれだけか。

 何なのかよく分からないな。

 イベントアイテムってことは何かには使うんだろうけど普通のアイテムとは違うみたいだ。


「これを儀式で使うんですか?」

「うむ。これにはかつて討ち滅ぼした≪魔の者≫の力が封じられているらしいのだ。故に敵の象徴として、このコインを勇猛に掲げながら誓いを捧げるのが習わしだ」

「なるほど」


 確かにこれは貴重なものらしい。

 普通に使えるようなものじゃなさそうだけど、これは強力なモンスターのコインみたいだな。

 何かイベントが起きて解放されたりするんだろうか。

 だけど、どうしてこれを見せてくれたんだ?


「でもどうしてこれを?」

「なに、本番の前にこれを掲げるミゼルの姿を思い描いて楽しむ権利を、貴様にもやろうと思ってな。光栄に思うが良い」

「いえ、そんな趣味はないんですが」

「何故だ!? これをミゼルが手にすると思っただけで興奮するだろう!?」

「しません」


 思った以上に下らない理由だった。

 発想が俺の常識の中に納まらない。

 ある意味では大物なんだろう。

 

「仕方がない、時間ギリギリまでミゼルの魅力を存分に語ってやろう。今日はしなやかで美しい指についてだ」

「いえ、結構です」

「遠慮するな」

「いりませんので」

「遠慮するな」


 何を言っても遠慮するなとしか返してこなくなった。

 もしかしてこれは昔からよくある、はい以外の選択肢を選んでも先に進まないあれなのか?

 こんな誰も得をしないところに突っ込んで来るなんて恐ろしい開発だ。


 こういうのってシナリオを強制的に進める為にあるんじゃないのか。

 間違っても、NPCの性癖を押し付ける為のシステムじゃない。


 どうしようか困っていたら、昨日からお世話になっているメイドさんがパシオンの背後に現れた。

 一閃。パシオンの首筋に神速の手刀を入れた。

 一撃で気絶したのか、パシオンは崩れ落ちた。

 どこかから現れた別のメイドがパシオンを運んでいく。


 もしかして、昨日のタマの対応っていつもの事だったんだろうか。

 パシオンの扱いはどこも同じらしい。 


 俺達はメイドさんの案内で部屋へ戻った。

 とりあえず儀式もセットで招待されているから準備しておかないと。

 タケダとミルキーは起きてるのかな。



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