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51 パシオンと魔の森


 マッスル☆タケダと何人もの兵士に見送られ、俺達は森へと向かった。

 今回は騎士団の人達の乗る馬車に同乗させてもらっている。

 

 城に来る時の、パシオンが乗っていた馬車に比べるとかなり貧相に見えるが文句はない。

 馬車なんて今まで乗ったこと無くて、これでも十分楽しいからだ。

 むしろあの豪華な馬車の方が落ち着かない。


 馬車の中には俺、タマ、出汁巻玉子、あと騎士が2人乗っている。


「出汁巻玉子さん」

「あ、出汁巻でいいっすよ」

「あ、はい」

「だしまき! だしーって鳴く?」

「鳴かないだしー!」

「鳴いた! 鳴いたよモジャモジャ!」

「モジャモジャじゃないっての!」

「うわー!」

「なんかすみません」

「いえいえ、子供は好きっすから」


 出汁巻は割と気さくな感じらしい。

 さっきは気付かなかった。

 真面目な作戦会議だったし上司もいたからかな。

 俺達以外ではここには部下だけで、出汁巻の上司に当たる人はいない。


「そういえば、出汁巻さんは副団長なんですよね? 団長は今日は参加しないんですか?」

「団長は重要な任務で城に残ってるっす」

「そうなんですか。指揮を任されるなんてすごいですね」


 重要な任務?

 お城の守りを任されてるとかかな?

 有り得る。

 あのお城にはパシオンの大好きな妹もいるわけだし。だしー。


「実際は団長がパシオン様に叱られて、罰でお城の掃除を命じられてるから繰り上がっただけっすけどね」

「えっ?」

「なんか女の子に剣を向けたらしいっす。パシオン様は妹ラブっすけど、女の子の扱いにも厳しいっすからね。団長、少し前は厳格だけど真面目な人だったのに……どうしてああなったんすかね」


 団長ってお前かジャルージ!

 精鋭とか言っておいて団長が罰で掃除とか!

 ぷふ、格好つかないったらないな!


「どうしたんすか?」

「んんっ、すみません、なんでもないです」


 少し笑いが堪えきれなかった。

 危ない危ない。

 人を馬鹿にするのはやめよう。

 いくらムカつく相手でも……失礼なことしてきた相手はいいか。

 つまりセーフ。


「オレは戦闘は得意なんすけど、指揮なんてからっきしっす。その辺りは多分パシオン様がするんじゃないっすかね」

「なるほど」


 出汁巻が指揮を執るってパシオンが言ってたのは、騎士団の顔を立てたのかな?

 パシオンが指揮をとることは最早気にしない。


 打ち合わせの時点で付いてくると知った時は、それなりにびっくりした。

 だけどミゼルに贈るプレゼントの素材を採りに行くのに、自らが出向くことの重要性を熱く語られた。

 それはもう語られた。

 うざいくらい語られた。

 だからもう突っ込んだりはしない。

 好きにすればいいさ。


「モジャー!」

「だしー!」

「モジャー!!」

「だしー!!」

「モジャモジャー!!」

「だしー!」

「うるせぇ!」

「「うわー!」」



 タマと出汁巻は相性が良いらしい。

 というか皆ノリが良い。

 だけどうるさい。

 騎士の人達も怒っていいと思う。

 でも皆我慢強いから、俺が怒った。


 そうこうしてる内に、馬車はストーレフィールドの南端へと到着した。


 馬車から降りた騎士達は綺麗に整列している。

 その正面には、向かい合うようにパシオン。

 その隣には出汁巻。

 俺とタマは何故かその横にいる。


「ここからは見張りを残して歩いていくぞ。準備は良いか!」

「「「はっ!」」」


 一応アドバイザーとしてパシオンの側に居てほしいということだった。

 何かあった時に判断するのはパシオンだし、重要人物だからそうなるのは分かる。

 分かるんだけど、人前は緊張するから居心地が悪すぎる。

 なんかすごい見られてる気がするし。


「では出発!」


 パシオンの号令で騎士達は森へと進んでいく。

 その数は出汁巻と馬車の見張りを除いて30名だそうだ。

 騎士団の中でも選りすぐりの精鋭と説明を受けている。


 構成はガチガチの前衛職が11名、斥候等の軽戦士職が3名、火力とサポート兼務の魔法職が8名、回復役等の支援職が8名。

 オンラインゲームっぽい編成だ。

 これは出汁巻の発案らしい。

 ボスモンスターに前衛職だけで突っ込んでも、勝つのは難しいと語っていた。


 ガチだ。

 ガチ勢だ。

 これは、安心して見ていられそうだな。


 出汁巻は他の前衛職の騎士達と同じような、頑丈そうな全身鎧に身を包んでいる。

 作りも一緒っぽいけど専用の鎧とかではないんだな。

 トッププレイヤーらしいし、もっと強力な装備でも持ってるのかと思ってた。


 剣と盾はなんか凄そうなのを持っている。 

 相棒の話はしなかったけど、あの剣か盾が相棒なんだろうか。


 ストーレの森01は正直ただの通り道だ。

 アクティブモンスターはヘビしかいない。寄って来ても瞬殺されている。

 ノンアクティブの足軽クワガタはほぼ無視だ。

 たまに通り道にいるのが斥候によって蹴散らされているらしい。


 このエリアに一体だけいる武者クワガタが要注意だが、不意の遭遇がないように斥候職がばらけて周囲を警戒している。

 武者クワガタとの戦闘も想定済だ。

 というかこの先のストーレの森04は武者クワガタも結構な数襲ってくる。

 一体に勝てないようじゃあこの先に進むのは、ただの自殺行為だ。


 俺は騎士達が突き進んで行く後ろからついていくだけだ。

 隣にはタマとパシオンまでいる。

 出汁巻は何人かと共に最後尾で警戒にあたっている。


「待っていろ将軍クワガタよ。貴様の甲殻は我が至高の妹の至高のドレスとなるのだ。光栄に思うが良い! ふははははははは!」

「ふはははははははー!」

「「はははははははは!」」


 パシオンは一人で最高にご機嫌だ。

 怖い。

 この人の近く嫌なんだけど。

 タマも真似し出したし。

 しかも一緒に笑い出した。

 変な影響を受けるんじゃない。



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