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49 出汁巻玉子と顔合わせ


 馬車に乗せられてやって来たのはお城だった。

 え、この街ってお城なんてあったのか。

 知らなかった。


 馬車を降りた俺とタマとマッスル☆タケダは大きな部屋に通された。

 立派な部屋だ。

 そもそもお城って時点で立派なのか?

 入ったことないからよく分からないな。


「すごーい! 広いー!」

「こらこら、こっちで座ってなさい」


 部屋を走り回ろうとするタマを捕まえて、ソファに座らせる。

 もし部屋の調度品とか壊して弁償になったら高そうだからな。

 ここは大人しくしとこう。


 俺とタケダもソファに腰を下ろす。

 パシオンもテーブルを挟んだ向かいに座った。


「さて、早速本題と行きたいところだがまずは紹介しておこう。入れ」

「失礼します」


 パシオンに促されて部屋に入ってきたのは、全身を騎士鎧で包んだ男だった。

 騎士なんだろうけど、金髪で片側にソリコミの入った、中々ファンキーな髪型だ。


 アイコンは緑。

 この男、プレイヤーだ。

 名前は≪出汁巻玉子≫と表示されている。

 ゲームとはいえ第二の人生だと俺は思ってたんだが、割とみんな名前自由だね。

 タケダは驚いてる感じだ。

 名前か?

 マッスル☆タケダも中々だと思うよ。


 出汁巻玉子はパシオンの隣まで来て止まった。

 一体どういうことなんだろうか。

 俺みたいに何かの依頼かな。


「この者は出汁巻玉子。一番の新人でありながら、我が騎士団の副団長に上り詰めた猛者だ。今回の討伐戦での指揮を執る。そなたらと同じく、≪プレイヤー≫と呼ばれる特別な力を持つ者の一人らしいな」

「どうも、出汁巻玉子っす。よろしくおなしゃす」


 まさかの就職してた。

 そういう選択肢もあるのか。

 確かに給料は良さそうだ。


 で、特別な力を持つ者か。

 相棒のことだよね。

 その力を持つ人を、プレイヤーって呼ぶ設定だったねそういえば。


「よろしくお願いします」 

「よろしくー!」

「よろしく」


 出汁巻玉子と握手を交わし、挨拶を済ませる。

 話の前に顔合わせがしたかったのか。

 馬車に乗せてくれば良かったんじゃないのかなと思うのは、野暮なんだろうか。


「さて、役者も揃ったことだし本題に入るとしよう」


 そうして打ち合わせが始まった。

 まず、パシオンが鎧を欲しがった理由から教えてくれた。


 パシオンの最愛の妹、ミゼルはもうすぐ16歳。

 この国では16歳の誕生日が成人の日となる。

 王女であるミゼルは、成人の日に伝統ある儀式を行うそうだ。


 そこでパシオンは、誕生日プレゼントとしてミゼルに相応しい衣装を贈ろうと思っていた矢先にタケダの力作であるタマの新装備、≪聖少女の鎧≫を目にしてしまったらしい。


 あれはタマの装備だということで納得したパシオンは、同じ素材で新しく作成することに決めた。

 素材の重要な部分は、この街から南に3エリア進んだストーレの森04に住む、将軍クワガタの甲殻。

 それを入手する為には当然、強力なモンスターである将軍クワガタを討伐する必要がある。


 自前の戦力だけでは確実とは言い難いということで、実績のある俺に依頼をしたというわけだ。

 俺の役目はあくまでも情報の提供で、討伐自体はパシオン達だけで達成したいと言われた。

 その辺りは騎士団のプライドの問題らしい。

 俺は全然構わないので、了承しておいた。


 そして素材を手に入れたら、次はタケダの番だ。

 ≪聖少女の鎧≫と同じものを作って欲しいと、改めて依頼されていた。


「あれはタマちゃんの為だけに作った鎧だ。あれと同じものを作ったところで、タマちゃんにしか着こなせないぞ」

「では依頼は受けてはもらえぬということか?」

「勘違いするなよ。素材と金さえ揃えてもらえるなら、俺の魂を込めて作ってやるさ。お前の妹の為だけの、お前の妹にしか着こなせない――最高の鎧ってやつをな!」

「マッスル☆タケダ――!」

「ふっ、任せとけ」


 なんていう熱いやりとりもあった。

 タケダもこの状況をしっかり楽しんでるらしい。

 せっかくのクエストだしな。

 レアな素材を扱えるならタケダにとって悪い話じゃないだろう。

 報酬もしっかり交渉してたし。


 出汁巻玉子とも話をした。

 主にはストーレの森04のMAPの構造とか、出現するモンスターの傾向とかだ。

 あそこは状態異常なんかの絡め手を使ってくるモンスターはいないっぽいが、単純にそこそこ強い。

 そして数も多い。

 一番厄介なのが、遠距離攻撃をしてくるモンスターがいることだ。

 後は高速で後衛に向かって飛んでくる、ソードビートルも性質が悪い。


 武者クワガタに手間取っていたら後衛から崩されて壊滅、なんて事態にもなりかねない。

 その辺りをしっかりと、出汁巻玉子に説明した。

 ゲームの経験は浅い上に、ステータスでごり押した俺の説明で上手く伝わったか自信はない。

 だけど、出汁巻玉子には上手く理解して対策を立ててくれるだろうという、不思議な安心感があった。


 話していて、モグラ並みにゲーム慣れしてる感じがした。


 そして打ち合わせの中で、タケダは出汁巻玉子の名前を知っていたと言い出した。

 このゲームのプレイヤーの中でも、トッププレイヤーの一人として語られているんだとか。

 聞いてみると、始めてから2か月程経っているとのことだった。

 2か月もみっちりゲーム出来たらどのくらい強くなるんだろう。

 これならパシオンの望む通り、騎士団だけで討伐が出来るかもしれない。


 打ち合わせが終了した。

 これで俺の仕事は半分が終わりだ。

 あとは実際について行って、万が一の事態があれば助太刀する約束になっている。

 タケダは城に残って他の材料を手配したりと、鎧作成の準備をするそうだ。

 さぁて、ワクワクしてきたぞ。


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