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43 タマの装備とシスコン

(祝)なんと本日分の閲覧が三万突破!!

評価も10件越えて累計ポイントも800pt突破しました!

困惑する伸びっぷりなので感想やレビューで読んでいただけている理由を教えてくださいお願いします!


 マッスル☆タケダの露店まで来ると、何かテンプレみたいな絡まれ方をしている場面に遭遇した。

 しかも絡まれているのはマッスル☆タケダ、その人だ。


「頼む、それをどうしても売って欲しいのだ」

「だから、これは頼まれて作ったもので売りものじゃないんだ。何と言われようが売らん」

「貴様、パシオン様になんという口の利き方だ!」

「無理なものは無理だ」

「おのれ!」

「止せ。しかし主人よ、これだけ頼んでも無理と申すのか? 望むだけの報酬を出すぞ」

「男に二言はない」


 絡んでいるのは身なりのいいイケメンと、鎧を着たお供っぽい人の二人。

 貴族か何かだろうか。

 アイコンは黄色だからNPCのようだ。

 これは他人のフリをして眺めてた方がいいのかな。


「それでは仕方ない。穏便に話を進めようと思っていたが、力づくでもその鎧を手に入れてみせよう」


 びしっ、とイケメンが指を刺したその先には、何か見覚えのある素材があしらわれた白を基調とした装備品があった。

 あれってもしかして、俺が頼んでた装備?

 もしそうなら完全に当事者だ。

 タケダを見捨てるわけにはいかない。


「御取込み中のところすみません……」

「おお、ナガマサさん。待ってたぞ。騒がしくてすまないな」

「今は取り込み中だ。下がっていてもらおうか」


 脇から顔を覗かせてタケダに挨拶をすると、お供の男が凄んできた。

 下がっておいて欲しいのはこっちなんだけど。


「いや、その鎧この子のなんで」

「タマのー!」

「何ぃ?」

「なんと、依頼主が来たか。それは丁度良かった、話が早い! この鎧を譲ってくれぬか? 報酬は何なりと払おう! さあ、言ってみるがよい」


 タマを指し示すと、タマは両手を上げてアピールする。

 お供の男はなんかすごい睨んでくる。

 パシオンとか呼ばれていたイケメンはすごく喜んでる。

 話が早いって言ってたけど、本気で思ってるのかな。


「嫌です」

「何故だ、何故断る!? 同じものならばまた作れば良いだろう!? 報酬ももらえてお前に損は無い筈だ」


 確かに装備自体はあの森に行けば素材は集まる。

 またタケダに作ってもらえばいいかもしれない。

 でも、そこにあるのはタマが楽しみにしていた装備だ。

 いくらお金を積まれようが、譲るなんて選択肢はない。


「同じものを作ればいいと言うなら、その言葉はそっくりそのままお返ししますね」

「私は今ここにあるその装備が欲しいのだ。同じ素材を使おうがそれと同じになるとは思えん」

「分かってるじゃないですか。その言葉をそのままお返しします」

「貴様ら、先程から聞いていればなんと失礼な! パシオン様に無礼が過ぎるぞ!」

「タケダさん、装備もらっていいですか? すみません、何か変なことになって」

「ああ、これだ」

「無視をするな!」


 無茶苦茶な言い分はばっさり切り捨ててしまおう。

 相手をするだけ無駄だ。

 タケダから装備を受け取ろうとするとお供の男がまた絡んできた。

 しかも剣を抜こうとしている。

 イケメンの方は何やらにやけている。

 どうやら止めるつもりはないらしい。


「この装備は俺がタマの為に依頼して、タケダさんがタマの為に作ってくれたものです。なんと言われようと、譲る気はありません」

「そこの男は剣の腕が立つ。冒険者如きでは歯が立たぬ程にな! 命が惜しければ大人しくその鎧を寄越すがいい」


 なんかむかつくNPCだ。

 これ突っぱね続けたらどうなるんだろうか。


 とりあえずタケダから装備を受け取る。

 注文通り白を基調としたインナーに、将軍クワガタの鈍い銀色の甲殻から作られた装甲を取り付ける形のようだ。

 着て見ないとイメージが掴みづらいな。


「タマ、試しに着てみるか?」

「わーい!」

「もう我慢ならん! 少し痛い目を見てもらおう!」


 とりあえずNPCは無視してタマに試着を促してみる。

 タマは元気いっぱいに返事をしてくれる。

 可愛いなぁ。 


 お供の男は短気なのか?

 ぶち切れてしまったみたいでついに剣を振り上げた。

 戦うのはいいんだけど、そこそこ人通りあるのに正気か?


「タマの装備はわたさないよ!」

「なにっ!?」


 割と呑気なことを考えてたらお供の人の剣をタマが受け止めていた。

 素手で。

 そのくらいきっと余裕だろうなぁ。


「何をやっているジャルージ!」


 パシオンが声を荒げる。

 護衛の剣が片手で止められたら慌てもするだろう。


「女児に剣を向けるな馬鹿者!」

「す、すみませんパシオン様! あ、あれ? 剣が……!」


 と思ったらベクトルが若干違う。

 え、そこなの?

 お供の男が剣を引こうとするも、出来ないようだ。

 タマが離さないんだな。


「さいきょーのタマに剣を向けたってことは、タマの敵だよね? 敵はみんなぶっとばすぞー!」


 タマの握ってる剣がミキミキと変な音を立てて震える。

 高らかな宣言と共に刀身の真ん中が砕け散って半分から先が落ちる。

 剣を握りつぶすとか握力強すぎませんか?  


「ひ、ひいっ」

「中々やるようだな。しかし、その装備が似合うのは我が妹であるミゼルを置いて、他にはいない!」

「妹さんにプレゼントなんですか?」


 なんかちょっと冷静になった。

 話くらいは聞いてもいいかなって気分にもなった。

 パシオンの突っ込みどころがおかしかったせいか、タマが剣をへし折ったからか。

 多分両方だな。


「その通りだ。我が妹ミゼルの気高さ、可憐さ、凛々しさ、そして美しさ! それに引けを取らずかつ引き上げる最高の鎧とも言える鎧が、その鎧なのだ!」

「常識的に考えて人から強奪した装備をもらって喜ぶと思えませんけど、その妹さんは常識ないんですか?」

「貴様っ!」

「女の子に剣を向けてしかもへし折られた人は黙ってろ!」

「うっ」


 なんかこのパシオンには親近感が沸いたというか、きつい言い方をしてもいい気がした。

 無茶苦茶な事言う奴に払う敬意なんかないしな。

 お供の男が食って掛かろうとしたのでつい突っ込んでしまった。

 効果はあったようで黙ってくれた。


「そうだジャルージ。女児に剣を向けた貴様はこの場では発言する権利を持たぬ。黙っていろ」

「……はっ」

「さて、我が妹の話だったな。ミゼルは勿論完全なる常識を備えているぞ」

「じゃああんな手に入れ方したものもらっても怒るんじゃないですか?」

「そんなことは……あるかもしれんな。いつも怒られている気までしてきた」


 否定するかと思ったら、少し間を置いて肯定された。

 この人バカなだけで悪い人じゃないのか?

 でもバカなのは間違いないと思う。



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