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 眼が覚めた。

 そこは真っ暗な空間だった。

 でも不思議と自分の身体は認識できる。ゲームだしな。


 簡単に説明すると、俺は今とあるフルダイブ型VRゲームにログインしたところだ。

 視界には名前を入力する半透明のウインドウが浮かんでいる。

 何にしようか。別に本名じゃなくてもいいだろうし、仇名でいいかな。

 深くは考えない。


 よし、決めた。

 ナガマサ、っと。入力を終えると目の前に人型の何かが現れた。

 うっすら光るマネキンだ。


 『カスタムパートナーオンラインへようこそ。オレはサポート担当のモグラ。今からゲームの説明をするよ』


 どうやらNPCか何かっぽい。

 口が無いのに音声は聞こえてくる。不思議。

 え、というか俺が決めるのってこれだけ?

 キャラ作成とか無いの?


『カスタムパートナーオンライン、以後CPOと呼ぶけど、CPOではプレイヤーの皆には相棒パートナーを一つ決めてもらうんだ。それは剣なんかの武器から、猫や犬といった動物まで、幅広い種類が網羅されてる。その中でも、ナガマサさんと比較的相性の良い候補を用意してるよ。あと、この中心部に近いほど相性が良くなってるからね』


 俺とモグラを囲うように色んなものが出現する。

 それはもう色々だ。ごちゃごちゃしてて分からないくらい沢山あるし、どこまで続いているのかもよく分からない。

 ゴミの山の真ん中だけくり抜いたような場所に俺達がいる感じなんだろう。


『この中から好きなものを選んでね。んで、決まったら話しかけて』


 待ってみても続く言葉は無い。

 話しかけても無反応。

 どうやら相棒を決めるまで先に進まないらしい。


 この一見ガラクタの山から好みのものを探して相棒にするわけか。

 何がいいんだろう。

 武器とかが分かりやすいんだけど動物好きだからその辺りでもいいな。


 とりあえず近場から漁ってみるか。

 と思ったら、足元に不思議な物が転がっていた。


 それは、球体だ。バレーボールくらいの大きさはあると思う。

 艶々していてぼんやり光っている。

 拾い上げようとしてみると、ふわーっと浮き上がった。

 曲げかけていた腰を戻す。

 丁度目線の高さで止まった。


 これは一体何だろう。

 モグラは相性が良い物程この輪の中心に近いと言っていた。 

 それじゃあ、足元にあったこの球が一番相性が良いということだろうか。


 考えてみても分からない。

 モグラに聞いたら答えてくれるだろうか。

 相棒を決めてないと返事してくれない可能性もあるが、その時はその時だ。


「すみません」

『相棒が決まったみたいだね』

「ん?」


 声を掛けてみると、反応はあった。

 だけど予想と違う。

 決まった? どういうこと?


 光る球体は俺の隣にふよふよと浮いている。


『それじゃあCPOの世界へ転送するよ』

「もしかしてこれのこと? ちょっと待ってまだ決めて」

『グッドラック!』


 俺が言い終える間もなく視界が光に包まれていく。

 表情の無い筈のモグラの顔が、やたらいい笑顔に見えた気がした。


 次の瞬間に俺は、広い草原にいた。

 どことなく見覚えがあるが、草原なんてどこも同じだろう。


 流れる風と、踏みしめた大地の感触が気持ち良い。


 光る球体も俺の周りをふよふよ飛んでいる。

 相棒はこの謎の物体に決まってしまったっぽい。

 なんてこった。


 ……決まってしまったものは仕方ない。

 ここはゲームの世界だけど本当の意味ではゲームじゃない。

 やり直しなんて出来ないし、出来ないものは悩んでも時間の無駄でしかない。

 前向きに行こう。


 目の前に浮かんでいたウインドウを突いて、≪はい≫を選択する。

 チュートリアルをするかどうかの選択肢だ。

 この世界はゲームの世界で、HPが0になっても本当に死んだりはしない。

 だけどデスペナルティはゲームよりもかなり重たくなっているらしい。


 チュートリアルは大事だ。

 情報は大事。

 初めてのゲームでわざわざそんな縛りプレイをする必要もない。

 命を大事に、慎重に行こう。


 視界が歪んで、気付けば別の場所にいた。

 チュートリアルは、別MAPで行われる仕様らしい。

 まずはステータスとスキルの説明。


 その後は、また別の場所へ移動して相棒システムに関しての説明。


 途中で何度かレベルも上がる親切設計だった。

 戦闘せずに経験値がもらえるのは有難い。

 

 工程を終了して元の草原に帰って来る頃には、俺もタマも二つずつレベルが上がっていた。

 仕様もある程度把握出来たしチュートリアル様様だ。


 タマというのは、俺の相棒のことだ。

 チュートリアル中に名前をつけるように言われてつけた。

 球だからタマ。安直だけど分かりやすい。


「あれ?」


 草原に戻って来てすぐ、タマの姿を見失った。

 さっきまでは顔の周りをふよふよしてた筈なのに。

 キョロキョロと見まわしてから、視線を下に下げる。


 そこには女の子がいた。

 移動してきた時に居たんだろうか。気付かなかった。


 身長は150cmくらいで、長い黒髪を頭の横で一つに結っている。

 どことなく、妹に似てる気がする。


「この子を捜してるの?」

「えっと、うん、そうだよ」


 少し屈んで視線を合わせる。

 その女の子はタマを抱えていた。

 拾ってくれたのかもしれない。


 女の子は、タマを差し出してくれた。

 タマはふよふよと浮かび上がる。


 しかし、どうしてこんなところに女の子が?

 この子も実験の参加者だったりするのかな。


「ありがとう。一人?」

「うん!」

「そっか。お名前は?」

「タマ!」


 なんと、名前はタマというらしい。

 俺の相棒と同じ名前だ。すごい偶然だな。

 タマも驚いているのか喜んでいるのか、女の子の周りを緩やかに飛びはじめた。


「俺の名前はナガマサ。一人ならここは危ないかもしれないし、一緒に行く?」

「行く! よろしくモジャマサ!」

「ナガマサなんだけど……まぁいいか」


 丸いタマと元気なタマ。

 二人(?)のタマと一緒に歩き出す。

 目指すは、草原の先に見えている街。


 この先に何が待っているのか分からない。

 だけど、俺の目的は簡単だ。第二の人生を思い切り楽しむぞ!



本編はこれにて完結となります!

これからもきっと、のんびりしつつハチャメチャな第二の人生を楽しむことでしょう。

後は閑話と、不定期で番外編を書くかもしれません。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 本編完結お疲れ様でした。 主人公が史上最強のチートを使い仲間たちやたくさんの人を助けるという話は大好きなのでいつもワクワクしながら読んでいました。 これからも番外編なども投稿してくれたらすぐ…
[一言] タマさんこれ絶対覚えてるよな… 人の方のタマは妹 丸い方のタマは本当に新規のNPCというかパートナーなのかな? …ただでさえチートなタマが増えるのか…
[一言] 増えてる……!? 完結おめでとうございます!またみんなが揃った番外編で会おう!
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